去る1月20日、スバルの今後10年間の技術指針を明らかにする「SUBARU技術ミーティング」が開催された。CASEの時代にあってこれからの10年、“SUBARUらしさ”をどのように表現していくのか。そこで明かされたロードマップから、近未来のスバル車を占ってみよう。(タイトル写真は1月20日に世界初公開となったスバルEVのコンセプトモデル)

電動化が加速するもスバルらしさは不変

スバルが新中期経営ビジョン「STEP」を発表したのは2018年7月のこと。2025年の「ありたい姿」を定めた同計画では、「モノを作る会社から笑顔を作る会社へ」の脱皮を宣言した。

それを受けた今回の技術説明会では、同中計実施期間に盛り込まれる次世代技術群、さらにその先にある目標がより具体的に明らかにされた。冒頭、中村知美社長は「2030年には(スバル車が関係する)死亡事故ゼロを目指す」、「2030年までに全世界販売台数の40%以上を電気自動車(BEV)とハイブリッド車にする」、「2030年代前半には生産・販売するすべてのスバル車に電動技術を搭載する」ことを宣言した。一方では「電動でもスバルらしい商品=車両を提供し続ける」ことも強調。ユーザーの期待に応えるクルマを作り続けることがスバルの存在価値と位置づけていた。

まずは下図をご覧いただきたい。これは「STEP」発表時に発表された、将来商品計画のイメージ図である。まったくの新型車は2025年前後に投入予定の「グローバル戦略SUV」と2022〜23年と予想されるBEVの2台。一方、既存車種についてはフルモデルチェンジを間断なく行うとしており、すでに北米市場向けの新型レガシィとアウトバックを発売(2019年:どちらも現段階では日本導入は未定)。

次に控えているのが、国内では2年ぶりのニューモデルとなる新型レヴォーグだ(2020年夏に国内発売)。おそらくこの後に続くのは新型WRX、そしてインプレッサ、XV、フォレスター・・・、ほぼ1年間隔でモデルチェンジを実施すると見られる。これら既存車種にもフルモデルチェンジ、もしくは年次改良のタイミングでこれから説明する新たな技術が投入されていくことは間違いない。では、今後どんな技術がどのタイミングで投入されていくのか、順を追って説明していく。

画像: 2018年7月に発表された新中期経営ビジョン「STEP」より抜粋。今回の説明会ではこの計画が下敷きになっている。

2018年7月に発表された新中期経営ビジョン「STEP」より抜粋。今回の説明会ではこの計画が下敷きになっている。

新設計1.8Lリーンターボエンジン

今夏国内発売される新型レヴォーグから搭載が始まる、リーン=希薄燃焼を採用した新設計の直噴ターボエンジン。「STEP」発表以前の中期経営ビジョンでは1.8Lのほかに1.5Lのラインアップも検討されていたが、今回の発表になかったことを考えると(1.5Lの)開発計画自体が見直された可能性が高い。ともあれ、この新型1.8Lエンジンは、今後のスバル・エンジンの主役として、既存のFB、FA型の代替として新型レヴォーグ以降、徐々に搭載車種を増やしていく。

<主な搭載車種(予想)>
・新型レヴォーグ(2020年)ほか

画像: 今夏、国内発売が開始される新型レヴォーグ(写真はプロトタイプ)。このクルマを皮切りにスバルの次世代技術が続々と投入されていく。

今夏、国内発売が開始される新型レヴォーグ(写真はプロトタイプ)。このクルマを皮切りにスバルの次世代技術が続々と投入されていく。

画像: 希薄燃焼方式を採用した新開発の1.8Lリーンターボエンジン。これからのスバル車の機関ユニットとなる。まずは新型レヴォーグから。

希薄燃焼方式を採用した新開発の1.8Lリーンターボエンジン。これからのスバル車の機関ユニットとなる。まずは新型レヴォーグから。

ストロングハイブリッドのラインアップ

今回初めて明らかにされたのがストロングハイブリッドの存在だ。スバル2012年に初めて当時のXVに完全自社開発のマイルドハイブリッド搭載車を設定。2018年11月には同システムを改良して「e-BOXER」と名付け、フォレスターに搭載している。さらに同年にはトヨタTHSの技術を採用したプラグインハイブリッドシステムを開発し、北米向けにクロストレック(≒XV)に搭載している。

新設計のストロングハイブリッドは、このPHVユニットをリファインした2モーター式。しかも、組み合わせるエンジンはハイブリッドシステムの効率を最大化するために専用開発された水平対向4気筒だ(前述の1.5Lターボエンジン開発は、途中でこのハイブリッド専用エンジンの開発に切り替わった可能性が高い)。

シンメトリカルAWDのメリットを活かし、前後ホイールをカップリング機構を挟んだ直結方式とすることでハンドリングと回生エネルギーの回収効率を大幅にアップしているのもスバルならでは。凍結路ではFFに比べ約30%のエネルギー回収を達成すると同時に4輪に回生制動力を分散させることで、ハンドリング/安全性能はもちろん、走り味の動的質感も高めることができるとのこと。ちなみにスバルは、マイルドハイブリッド(e-BOXER)、ストロングハイブリッドを当面電動化の柱として搭載車種を増やし、2030年には(BEVも加えて)、全世界販売台数の40%以上を電動車とするのが目標だ。

<主な搭載車種(予想)>
・新型XV(2022年)ほか

画像: クロストレック(日本名XV)のPHVに採用された2モーター式ハイブリッドシステム(TH2A)。トヨタTHSを縦置きにアレンジして開発されている。新たに投入されるストロングハイブリッドはこのシステムがベースとなるはず。

クロストレック(日本名XV)のPHVに採用された2モーター式ハイブリッドシステム(TH2A)。トヨタTHSを縦置きにアレンジして開発されている。新たに投入されるストロングハイブリッドはこのシステムがベースとなるはず。

SGP(スバル グローバル プラットフォーム)の進化

クルマの土台となるプラットフォームも日々進化していく。すでにスバル車のほとんどに採用されているスバル グローバル プラットフォーム(SGP)だが、新型レヴォーグもようやくSGPに移行する。このタイミングでSGPもVer.1.5とでも呼ぶべき進化を果たす。

まずはレーンチェンジなどでの応答遅れ改善と正確性向上をめざし、ステアリングシステムの摩擦低減、ボルト締結部の剛性最適化、車体ヒステリシス解析による接合方法の最適化が行われる。さらに車体とサスペンションの取り付け点の精度向上によってもハンドリングの正確性向上が図られるとともに、動的質感の向上も期待出来そうだ。

<主な搭載車種(予想)>
・新型レヴォーグ(2020年)ほか

画像: SGPは新型レヴォーグからVer.1.5とでも呼ぶべき進化が始まる。

SGPは新型レヴォーグからVer.1.5とでも呼ぶべき進化が始まる。

画像: レヴォーグに続き2021年中には発売されると思われる新型WRX(写真はコンセプトモデル)。

レヴォーグに続き2021年中には発売されると思われる新型WRX(写真はコンセプトモデル)。

AWD技術の進化〜旋回性能を大幅にアップ

前述のストロングハイブリッド投入と同じタイミングでの登場が期待出来るのが、新たなAWD制御技術だ。直結AWDながら安定性を保証しながら、コーナリング時には前後の駆動力配分をリニアに可変する。たとえば減速時にはフロント>リアで安定、コーナリング時にはフロント<リアでFR車的な旋回を味わわせ、コーナー出口ではフロント=リアとすることで、だれでもクルマを操る愉しさを堪能できるという。

<主な搭載車種(予想)>
・新型XV(2022年)ほか

画像: 安定性と旋回性能を両立する新たなAWD技術もスタンバイ。新型XVから採用されると予想する。

安定性と旋回性能を両立する新たなAWD技術もスタンバイ。新型XVから採用されると予想する。

2.74kmに及ぶ実走風洞実験の導入

スバルが目指す「安心で愉しい走り」をさらに向上させAWDのもつ直進性をさらに伸ばすべく、2022年より実走風洞実験を行うことが発表された。通常の風洞実験施設は車体を台上に固定して走行風をあてることで計測されている。一方、2022年から稼働予定の実走風洞は英国CARF(Catesby Aero Reserch Facility)によって開発された直線部2.74kmにも及ぶトンネル状の施設で、実走により温度や自然風などの影響を受けることなく、より精度の高い計測が可能な画期的な施設だ。スバルではこの施設を活用することで、足回りのジオメトリー最適化とボディの空力特性向上により、さらなる直進性向上を目指している。

<主な適用車種(予想)>
・新型フォレスター(2024年)ほか

画像: 2.74kmにも及ぶトンネル状の実走風洞実験施設も2022年より活用。さらなる直進性の向上が期待出来る。

2.74kmにも及ぶトンネル状の実走風洞実験施設も2022年より活用。さらなる直進性の向上が期待出来る。

さらに進化する新世代アイサイト

運転支援技術はステレオカメラによる「アイサイト」を核として進化していく。直近に実現しそうなのが「交差点・市街地事故への対応強化」である。巻き込み事故、右直事故、出会い頭の事故、さらに自動ステア回避技術などが盛り込まれそうだ。その実現のため、ステレオカメラを刷新して視野を拡大、データ処理能力のアップ、さらに車体の四隅に配されたレーダーによる全周囲センシングとの統合制御により認知・判断能力を大幅に向上させる。また、車線変更支援、カーブ予測減速、渋滞ハンズオフ機能なども実用間近なほか、DMS(ドライバーモニタリングシステム)とアイサイトを連携させることで、ドライバーの見守り機能も強化。さらにその先、2020年代後半には、ステレオカメラとAIを組み合わせて、あらゆる道路・状況での安全性を高める技術も実用化されそうだ。

これらの技術は、新型レヴォーグから順次採用範囲が拡大されていく。

<主な適用車種(予想)>
・新型レヴォーグ(2020年)ほか

画像: ステレオカメラを核とした次世代アイサイトは次期レヴォーグから順次採用されるとともに毎年バージョンアップされるはずだ。

ステレオカメラを核とした次世代アイサイトは次期レヴォーグから順次採用されるとともに毎年バージョンアップされるはずだ。

今回の技術説明会では、ほかにもすでに北米では一部実用化されているコネクト技術「STARLINK」の国内展開も発表されたほか、2020年代後半の導入を目指す、自転車にも対応範囲を拡大した次世代外部エアバッグなど、さまざまな技術のアウトラインも明らかされた。またトヨタとの共同開発となるEVのコンセプトカーが初めて公開されるなど、2020年代(とくに前半)にスバルがやろうとしていることが(網羅的ではあったが)一望できる機会であった。CASEの時代にスバル車がそれをどのように咀嚼し、スバルらしさを際立たせていくのか。今回発表されたロードマップはスバリストの期待に十分応えるものだったと言える。

画像: STARLINKのその先にあるのは事故自動通報(AACN)の採用だ。まずは日本市場から投入が検討されている。

STARLINKのその先にあるのは事故自動通報(AACN)の採用だ。まずは日本市場から投入が検討されている。

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