なぜ、復活した?
昨年12月に劇的とも言える復活を果たしたカワサキW800。
これぞまさしく王道。
金属の質感高いパーツたちと、フロント19インチホイールのスタイルが蘇ったことは素直に嬉しいことだと思っています。
それに、たった1インチとはいえ、フロントホイールが大きくなることでバイクにずいぶんと『貫禄』が出るんですよ。
実際にも全長で55mm大きくなっているけど、それだけじゃない迫力がある。
ただし、個人的にはすこし思うところもあるんです……
W800 STREETとCAFEのこと
それは先行して発売されていたW800 STREETとCAFEのこと。
この2台はフロント18インチ化という大きな決断をして、歴代の『W』には到達できなかった世界を見せてくれました。
新しい時代へ向き合う姿勢と、過去最高の走り。
それはもう文句のつけようがない、素晴らしい完成度です。
なのに!?
まさかフロント19インチが復活するとは、寝耳に水でした。
変わらない『W800』
W800 STREETとCAFEの2台は走りを重視した前後18インチホイール化を中心に、エンジンがブラックアウトされるなど、『大きく変わった』ことを感じさせてくれましたよね。
でも新しいW800は違いました。
新しいW800は、伝統的な19インチのフロントホイールにシルバーのエンジン、前後のメッキフェンダーなど先代までと『変わっていない』ことを感じさせるんです。
とはいえ、W800 STREET/CAFEと同じく、味わい深さが圧倒的に進化したバーチカルツインエンジンを搭載していますし、フレームだって同じ新設計。サスペンションの味付けもこれまでより硬めでスポーティにセッティングされていますから、その走りは大きく進化しています。
だけど、その走りもW800 STREET/CAFEとは、ちょっと毛色が違うように思えたんです。
ワインディングで走らせて
だからちゃんと走行性能を確かめてみようと、最初はワインディングを走りました。
W800 STREETやCAFEにも感じられる、後輪一輪に乗るようなヴィンテージ感のある走りがさらに強まっている。
その中でも、車体はしっかりしていて、フロントに荷重をかけて追い込んでも応えてきます。
確実に走りの性能は進化してる。
そこに頼りなさを感じることは一切ありません。
だけど、走りはじめから、そして走り終わるまで違和感がありました。
いやこれ多分、こうじゃないよな……って。
W800とW800 STREET、そしてW800 CAFE。
同じ伝統のバーチカルツインエンジンを核として搭載しながらも、W800には独特の世界がある。
感覚的な話ですけど、明らかな『違い』として、それを感じるんです。
W800は何が違う?
W800の違いって何だろう?
考えてみると、その理由は『峠まで至る道のり』の中にありました。
朝に街から走り出して、ワインディングへ向かうために高速道路に乗って……
その道程の中で感じていたのは『あぁ~今日も平和だなぁ』っていう穏やかな気持ちでした。
360度クランクのエンジンは3000回転強まで鼓動感でライダーを楽しませて、4000回転を超えるあたりからスウッと振動が収まっていく。
味わいの速度域ではバイクで走ることそのものの悦びを感じ、快適さの速度域では風の音しか聞こえない。
これはW800シリーズに共通の特性なんですけど、フロント19インチホイールの鷹揚さもあるのか、W800はそれを堪能しやすいように思えました。
難しいことなんて何も考えない。
それは、ライダーとして悟りを開くような時間だったわけです。