1970年代は「タワーリング・インフェルノ」に代表されるパニック映画が大流行したり、映画史を塗り替える「スター・ウォーズ」の第1作目が登場したりと、現在にも語り継がれる名作が続々誕生した。そんな革新だらけの1970年代に製作された作品がキングレコードから3作品リリースされる。国内初ブルーレイ化となる「ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖」「パニック・イン・スタジアム」含め、幻の日本版を収めた「カプリコン・1《特別版》」といずれも曲者……もといカルト的な名作揃い。SCREEN ONLINEでは毎週1作品ずつじっくりご紹介していきます。

最終回は、有人火星宇宙船を巡るサスペンス「カプリコン・1」

最終回は、日本で1978年の正月映画として公開され、約8億円の大ヒットを記録した「カプリコン・1」を紹介。このたび初ソフト化となる“幻の日本公開版本編”を特典ディスクに収めた《特別版》ブルーレイが初リリースされる! (文=久保田明)

意識不明になった科学者の脳手術を“内側から”行なうため、ミクロ化された潜水艇と医療チームが体内に送り込まれる1968年製作のSF「ミクロの決死圏」のように、映画界にはワン・アンド・オンリーのアイディア作品が存在する。そこですべてが語られているので、そのあと何をしても模倣になってしまう傑作群。長年多くのファンから愛されてきた「カプリコン・1」も、そんな唯一無二のジャンルを切り開いた快作だといえる。

CAPRICORN ONE MEMO 01
時代をも味方につけた!奇想に満ちたストーリー展開

すでにご覧になっている方も多いだろうし、ソフト紹介なので内容に踏み込むけれど、この「カプリコン・1」(1977年)はアメリカが威信をかけて行なった史上初の有人火星探査飛行が、実は作り物(フェイク)だったという奇想に満ちたサスペンス・アクションだ。

画像1: CAPRICORN ONE MEMO 01 時代をも味方につけた!奇想に満ちたストーリー展開

いまでこそアポロ11号の月面着陸はねつ造だった。しかも着陸シーンを極秘撮影したのはスタンリー・キューブリック監督!? というようなトンデモ寄りの都市伝説が流布されているけれど、当時は「カプリコン・1」のような着想の作品はなかった。しかも単なる隠謀論ではなく、そのような事態を招くことになるストーリー展開に説得力があるのだ。

演出、脚本はドキュメンタリー畑出身で、1973年にイジケ刑事コンビのオフビート・アクション「破壊!」でデビューしていたピーター・ハイアムズ。映画業界入り前にCBS傘下のTV局で働いていた彼は、ベトナム戦争の番組取材で3カ月ほどその地に赴任していた。正義の戦いという掛け声は勇ましいが、前線の兵士はみな疲れ果て混乱している。政府の発表と現実の落差に憤りを覚えた彼は1972年に、国家事業がまやかしだったら、という筋書きの「カプリコン・1」の第一稿を書いた。いくつかの製作プロダクションに企画を持ち込んだが、色よい返事は返ってこない。政府が推進する宇宙計画がフェイクというストーリーに信憑性がないと受け取られたのだ。

画像2: CAPRICORN ONE MEMO 01 時代をも味方につけた!奇想に満ちたストーリー展開

ところが1972~74年に民主党本部への盗聴事件が発端になり、共和党のニクソン大統領の辞任にまで行き着いた大政治スキャンダル“ウォーターゲート事件”が起こり(そのとば口までを描くスピルバーグの「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」、事件後の執念の報道を追う「大統領の隠謀」が共に名画)、アメリカ国民の権力に対する信頼は大きく揺らいだ。「カプリコン・1」の着想に注目が集まったのだ。1976年にはバイキング1号、2号によるNASAの火星探査計画成功のニュースが伝えられ、火星からの画像も届いた。そんな話題もあり、新人ピーター・ハイアムズ監督の意欲作「カプリコン・1」は1977年1月から撮影に入った。

CAPRICORN ONE MEMO 02
クセ者揃いのキャスティング!

隠謀に巻き込まれる宇宙飛行士のひとりにSF「ウエストワールド」のジェームズ・ブローリン。事件を追う記者に「M★A★S★H」のエリオット・グールドと「ファイブ・イージー・ピーセス」のカレン・ブラック。飄々とした飛行機パイロット役で「戦略大作戦」のテリー・サヴァラスも顔を出す。いずれも当時のニューシネマの人気俳優、アウトサイダーの気配を漂わせるクセ者ばかりだった。それが1970年代の快作エンターテインメントの風を呼ぶ。

画像: 宇宙飛行士役のジェームズ・ブローリン(右)は「アベンジャーズ/エンドゲーム」のサノスなどで知られるジョシュ・ブローリンの父親

宇宙飛行士役のジェームズ・ブローリン(右)は「アベンジャーズ/エンドゲーム」のサノスなどで知られるジョシュ・ブローリンの父親

CAPRICORN ONE MEMO 03
ハイアムズ監督のセンス爆発!日本公開版のみの収録シーン

そして大注目! 今回の「カプリコン・1《特別版》」最大の話題は、これまで現存しないと思われていた129分日本初公開ヴァージョンが世界で初めてブルーレイ・ソフト化されたことだ。「カプリコン・1」の日本公開は1977年の12月17日。アメリカ公開は翌1978年の6月2日。理由は判然としないけれど、日本が世界でいちばん早かった。本国での正式公開を前に作成されたワークプリント(試写などに使われ、観客の反応を見る)だったのかもしれない。収録時間は、これまでソフト化されたものがすべて123分版だったのに対し、今回はそれよりも長い実測128分32秒版。

配給会社の東宝東和が国立映画アーカイブに寄贈していた35ミリの上映用プリント、その元素材になるデュープネガ、2chの音ネガが発見され、デュープネガを2Kスキャンして色補正。モノーラル音声トラックも整音されて完成した幻の日本公開版なのだ。

いちばんの違いは123分版からは削られていた、カプリコン・1号の(スタジオで撮影された)ニセのドッキング・シークエンスが復活していることだろう(チャプター4、25分12秒~30分31秒)。メモパッドと鉛筆がテグス糸で吊り下げられている無重力偽装シーンを40年ぶりに見て感動した。ああ、そういえば「2001年宇宙の旅」のパロディみたいなこの場面あったなあ、と。

画像: 日本公開版のみに収録されている司令船と着陸船のドッキング・シークエンス

日本公開版のみに収録されている司令船と着陸船のドッキング・シークエンス

画像: 筆者が感動した無重力偽装シーン

筆者が感動した無重力偽装シーン

画質も悪くなく、復刻版としては満点だ。しかもいまも変わらずメチャ面白い! カメラを車体下部ギリギリに取り付けた車の暴走シーンも、農薬散布の複葉機とヘリコプター2台の大チェイスも。いまと違いCGIの使用はゼロ。すべてが実物を使った(スリリングすぎる)実写!後期作品では撮影を兼任することも多かったハイアムズ監督の映像センスと才気が爆発している。

画像: 実物を使ったスリリングな大チェイスシーン

実物を使ったスリリングな大チェイスシーン

画像1: 【短期連載】70'sカルト映画を味わい尽くす!Vol.3「カプリコン・1《特別版》」

これが気に入った若いファンは、ほかのハイアムズ映画、SF「アウトランド」や「2010年」、暴走列車ものの快作「カナディアン・エクスプレス」、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演のパニック・アクション「サドン・デス」なども観てみよう。みんな面白いよ!

STORY
ヒューストンにあるNASA(米航空宇宙局)では、人類史上初の有人火星宇宙船の打ち上げが行われようとしていた。3人の宇宙飛行士はカプリコン・1号に乗り込み、秒読みが開始された。しかし発射5分前、3人は船内から連れ出され、砂漠の真ん中にある古い基地へ連行された。3人はそこで計画の責任者から生命維持システムの故障で有人飛行が不可能になったことを告げられ、政治的な理由から計画の中止ができないため、火星に行ったという事実の捏造を命じられる。拒否した3人だったが、家族の安全を人質にとられ、やむなく受け入れ、捏造の大芝居が始まるが……

画像2: 【短期連載】70'sカルト映画を味わい尽くす!Vol.3「カプリコン・1《特別版》」

「カプリコン・1」≪特別版≫ CAPRICORN ONE
2019年12月18日(水)発売
ブルーレイ6,800円+税|DISC①特典:予告編、DISC②特典:日本公開版本編|約129分|※DISC①は現行商品KIXF4303と同じです

発売・販売元:キングレコード
©Capricorn One Associates 1978.

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