2005年前半、プジョー407、シトロエンC4、ルノー・メガーヌR.S.5ドアなど、魅力的なフランス車が続々と日本に上陸した。そこでMotor Magazine誌は「最新フランス車の個性と実力」に注目。マニアのためだけのものではなく、アンチドイツ派が真剣にチェックするフランス車の魅力を探っている。当時のクルマ事情も含めて振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年9月号より)

個性的な外観の3モデル、お洒落は自分自身の満足のため

最近、良いなと感じるクルマにフランス車の占める割合が多くなっている気がする。ストレートに言うと、どうやらフランス車に魅了されてしまったようなのだ。でも一体なぜだろう?

フランス車は、これみよがしに個性を主張しない。あんなに見た目にこだわっていて? と思われるかもしれないが、フランス車がお洒落なのは、人に「見て見て」と主張するためではなく、きっと自分自身の満足のためだ。

そう、それは皆が思い描くフランス人のお洒落と、あり方は一緒である。となれば、やはりフランス車に魅了されるのは僕だけではないはずだ。ルイ・ヴィトンやシャネルに列を為し、シャンゼリゼを大股で闊歩し、パリにパティシエ留学に出掛けるほどフランス好きな日本で、フランス車はもっと愛されてもいいのではないだろうか。

もちろん、マニアではない人にも薦められる。惚れ込むに値する個性と実力を備えたニューモデルが続々登場したからでもある。今回集めたのは、まさにその筆頭と言うべき3銘柄の3台だ。

まずはざっと概要を紹介しておこう。すでに日本でも多くのファンを持つフレンチブランドの雄が送り出した最新のミドルサイズセダンがプジョー407である。406の端正なスタイリングから一変、実に目を惹く姿となって登場した戦略モデルだ。今回連れ出したのはセダンのスポーツ3.0。パワートレーンは従来も搭載されていたV型6気筒3Lだが、ATは6速へと進化を果たし、新開発のサスペンションにはさらに電子制御式減衰力可変ダンパーが採用されている。

C4セダン1.6も、今年デビューしたばかりの新顔だ。今回のチョイスであるセダン1.6は言わばベースグレード。4速ATを採用する。

そして進境著しいルノーからは、メガーヌ・ルノースポール(R.S.)に追加された5ドアモデルにお出まし願った。最高出力224psを発生する2Lターボエンジンに6速MTを組み合わせるパワートレーンや、専用設計のシャシなど、ルノースポールが手掛けた基本部分は3ドアと共通だ。

画像: 欧州で2004年にデビュー、日本は2005年5月に発表されたシトロエンC4。「サルーン」と呼ばれる5ドアハッチバックと、「クーペ」と呼ばれる3ドアの2つのボディを持つ。

欧州で2004年にデビュー、日本は2005年5月に発表されたシトロエンC4。「サルーン」と呼ばれる5ドアハッチバックと、「クーペ」と呼ばれる3ドアの2つのボディを持つ。

心地よく過ごせるクルマを目指した結果として得た独創性

この3銘柄3モデル、まずいずれにも共通して言えるのが、きわめて個性的な、人によっては奇抜とすら受け取るかもしれないスタイリングだ。その姿は、いずれもブランドごとのアイデンティティをハッキリと映し出している。

思えば3台とも先代モデル、つまり406にクサラ、そして先代メガーヌは、その点で必ずしもうまくやっていたとは言えない。嫌われもしないかわりに積極的に好かれることもなかったというのが現実だ。だからこの変化はポジティブなものと言えるだろう。そう、真にグローバルな存在となるためには、逆にローカルな個性をしっかり持つことが必要なのだ。

外観だけでなく、インテリアも見所は多い。ここでも特にC4の注目度は抜群だ。透過式液晶パネルを用いたセンターメーターは昼夜問わず視認性に優れ、またリム部分だけが回転するステアリングは、固定式センターパッド上のスイッチの位置が変わらないので扱いやすいし、何より慣性マスの低減によって絶妙なステアリングフィールを得られるという具合で、どれもがデザイン性だけでなく機能性を高めることに繋がっている。

単に他と違うのではなく、自らの信じる方法で人間がもっとも心地よく過ごせるクルマを目指した結果として得た独創性は、まさにシトロエンの伝統を忠実になぞるものだ。

407では、HDDナビを埋め込んだ日本仕様専用のセンターパネルが目を惹く。ナビへの対応という部分は輸入車、特に非ドイツ車にとって最大の弱点と言えるわけだが、407はそこで手を抜かずしっかり仕事をしてきたという印象。インテリア全体のクオリティも、もはやドイツ車と比較しても遜色なく映る。

メガーヌ・ルノースポールのインテリアは、スポーツシート、ステアリング、シフトノブなどを豪勢なレザー張りとして、しかもそこにオレンジ色のステッチを入れることで上々の雰囲気を醸し出している。

ほんの少し前まで、フランス車のインテリアはクオリティの点で決して満足できるものではなかった。プラスチック感丸出しの部品は合わせ目の精度も低く、使い勝手にも特に見るべきところはなかったのが現実だ。あるいはこの「見た目品質」という部分こそが、フランス車にとって一番の問題だったかもしれない。

けれどこの3台を見る限り、その問題は解消されたと言っていい。それも、単に上質になったというだけでなく、オールドファンをもニヤリとさせるフランス車らしいひねりまで、より高度に用いられているのだから、なおのこと嬉しくなる。

画像: フランスの交通環境は日本と近く、そういう意味でも日本市場で受け入れられる可能性は高い。

フランスの交通環境は日本と近く、そういう意味でも日本市場で受け入れられる可能性は高い。

フランス車の独特のテイストは復活しつつある

走りっぷりに関しては、変化は少し前から訪れていた。しかし、それは必ずしも歓迎できるものばかりではなかったのも確かだ。一時期のフランス車は、どれも姿勢変化をできる限り抑える、簡単に言えばドイツ車的な方向に走って、深くロールするけれど、タイヤは路面を決して離さないというあの味は、薄まってしまっていた。

けれど、その独特のテイストはここに来て戻ってきつつある。407の乗り心地は、誰もがフランス車に、プジョーに抱くあのふんわりとしたタッチそのものだ。とは言え、それだけなら406も悪くなかった。407が目を見張るのは、その乗り味を現代レベルの操縦安定性と見事に両立させているところ。しかもクルマだけが勝手に走っていくような感覚とは無縁で、ステアリングやシート、ペダルなどを通して、クルマが今どんな状態なのかがしっかり伝わってくる。この躾の良さは、まに見事としか言いようがない。

味付けの巧さではC4も際立っている。シャシの基本骨格はプジョー307と共通ながら性格はやや異なり、低速ではやや硬めの一方、速度を上げるにつれてフラット感が俄然高まっていく。ステアリングの反応も307ほど鮮烈ではないが、そのかわり直進時の落ち着き感は上回るという具合。より高速型の、つまりはシトロエンらしい味がしっかり演出されているのである。

しかし何より驚かされるのは、メガーヌR.S.の走りっぷりだ。サスペンションはさすがに硬めだが、セッティングの妙か、ガツンッと突き上げることはなく、あらゆる衝撃はマイルドにいなされる。それでいて鞭を入れた時のコントロール性の高さはまさに絶品。4輪をしっかりストロークさせて高い接地性を確保し、アンダーにもオーバーにも、ドライバーの意思通りに姿勢を作り出すことができる。主役はあくまでドライバーなのだ。

また、これまでは無頓着と言えたパワートレーン、特にATの洗練度にも、ようやく手が入り始めている。407は3Lモデルに6速ATを採用。アイシンAW製のそれはシフトのメリハリ感こそ乏しいものの、低速トルクがやや細めの3Lエンジンとは上々のマッチングを見せる。一方、C4の4速ATはあのAL4のままのはずだが、こちらもイヤな変速ショックや低いギアを保持し続ける癖が明らかに薄らぎ、大きな不満は感じなくなった。

つまりフランス車の欠点として挙げられていた部分には、ここに来て急速に手が入れられているのだ。もちろん現状で大満足とは言わないが、少なくともATの出来が購入を躊躇させるような問題ではなくなったのは間違いない。

画像: 2004昨年11月に日本で発表されたメガーヌ・ルノースポール。この時は3ドアモデルのみだったが、2005年5月に待望の5ドアモデルが登場した。

2004昨年11月に日本で発表されたメガーヌ・ルノースポール。この時は3ドアモデルのみだったが、2005年5月に待望の5ドアモデルが登場した。

人が主でクルマはあくまで従、それこそが魅力の本質

内外装のデザインもクオリティも、そして走りや機械としての完成度も、飛躍的な洗練を見せているこの3車だが、特筆すべきはその結果としてドイツ車テイストになるのではなく、逆にフランス車らしい味わいが濃密になって戻ってきたということだ。

では、そのフランス車らしさとは何か。もちろんデザインや乗り心地に表れているのがそれなのだが、その根底を貫いているのは冒頭に記したように、乗り手に対してクルマの側から流儀を押しつけてこないということではないだろうか。

たとえば、クルマが意思を持ったように真っ直ぐ走っていくなんていうのは、要するにクルマが主で人が従だということだ。もちろんドイツ車などでは、そんな風にクルマの示す流儀に自分を当てはめることが快感なのも事実だが、フランス車はあくまで人間主体。勝手に真っ直ぐ走るクルマのステアリングをただ押さえておくだけでなく、こちらの意思でクルマの行き先を決めるという部分が強いように感じる。

こうした違いは、もちろん交通環境の違いに拠るところも大きいのだろう。フランスの高速道路は基本的に130km/h制限。都市部はパリのそれが有名なように渋滞が酷く、シャンゼリゼのように石畳の道もある。また、そこから少し離れればすぐに山間になるから、より積極的にステアリングを切り、アクセルとブレーキを踏みわけて運転にコミットしなければいけない。となれば、クルマに求められる条件も、また変わってくるのが道理だ。

と、ここで気付くのは、このフランスの交通環境が、日本とはドイツのそれよりむしろ近いということである。フランス車はそういう意味でも日本の道には合っているはずなのだ。それが今まで少数派に甘んじてきたのは、ブランド性云々という話もあるが、やりそのインテリアのクオリティだとか、ATの制御の拙さなどが邪魔をしてきたという部分は小さくないのだろう。

今回集めた3台に代表される最新のフランス車は、そうしたマイナス面を払拭してきた。しかも単に欠点を潰したというだけでなく、フランス車でしか持ち得ない個性を、それぞれの流儀で濃厚に打ち出しているのがまた良い。

冒頭に記したように、近頃フランス好きな日本。そこから届けられるのは、周囲にその威光を見せつけるプレミアム性とは正反対に、自分のための贅沢とこだわりが光る、かくも個性的なクルマ達である。生活にゆとりと潤いをもたらし、気持ちを豊かにしてくれるクルマが欲しい。そんなニーズに応えてくれる選択は、こちらにあるのかもしれないということは、そろそろ意識の隅に入れておいても良いだろう。

個性際立ち、完成度も高い3台のフランス車を見る限り、これからそのポピュラリティーは、もっと高まっていくことになりそうな予感、濃厚である。(文:島下泰久/Motor Magazine 2005年9月号より)

ヒットの法則のバックナンバー

プジョー407 スポーツ 3.0(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4685×1840×1460mm
●ホイールベース:2725mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2946cc
●最高出力:210ps/6000rpm
●最大トルク:290Nm/3750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:430万円(2005年当時)

シトロエンC4サルーン1.6(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4260×1775×1480mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1330kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1587cc
●最高出力:110ps/5800rpm
●最大トルク:147Nm/4000rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:239万5000円(2005年当時)

ルノー メガーヌ R.S. 5ドア(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4230×1775×1450mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1998cc
●最高出力:224ps/5500rpm
●最大トルク:300Nm/3000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:378万円(2005年当時)

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.