2005年8月30日の日本でのレクサス開業に先立って、Motor Magazine誌はその年の6月にレクサスISのプロトタイプに試乗している。すでに開発は最終段階ではあったが、まだ最後の味付けに盛り込める要素もあるという微妙な時期での試乗。それは、正式デビューに先駆け、より完璧な仕上がりへ持って行くために、少しでも多くの意見を聞きたいというメーカーの意欲の現れとも言えた。デビューを間近に控えたレクサスISプロトタイプはどんなモデルだったのか。今回はそんな貴重な試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年8月号より)

3.5Lのニューエンジンのパワーフィールは抜群

BMW3シリーズと直接のライバルとなるDセグメントのプレミアムスポーツセダンであるレクサスISには2種類のエンジンが用意される。

ひとつはすでにクラウンにも搭載されている2.5LのD-4。プロトタイプということで、今回スペックなどの発表はほとんどなかったのだが、トヨタブランドと同じく215psと見られる。トランスミッションは左ダウン/右アップのステアリングパドル付き6速ATだ。

レクサスISはボディサイズが手頃なこともあって、2.5Lでも動力性能に特に不満はない。アクセル開度ばかりが大きくなって車速が思ったほど伸びないようなベースグレード的なもどかしさはまったくなく、むしろパワフルささえ感じた。必要以上の差別感を持たせないのもレクサス・ホスピタリティなのかも知れない。

しかし、スポーツセダンとして考えると、魅力的なのはやはりブランニューの3.5Lである。レクサスGSにも搭載されるこのエンジンは、同じガソリン直噴だがD4-Sと呼ばれる。キモとなるのはポート噴射用標準圧と、筒内噴射用の高圧の2種類のインジェクターを備える点で、その代わりに吸気系にはスロットルバタフライ以外、空気経路で気流を阻害するようなバルブを一切持たせていない。

そして、回転状況に応じて、この2つのインジェクターの噴射を組み合わせて使う。高圧インジェクターでプラグ周辺に濃い混合気を作るとともに、燃料冷却で充填効率を上げながら、周辺部もポート噴射で完全燃焼しやすい環境を作るようなこともやってのけるのだ。

ストイキ運転中心のパワー指向のガソリン直噴で、それゆえ「S」の称号が与えられるのである。このパワーフィールが抜群だった。低回転から十分に力強い上に、4000ppm付近ではグイグイと湧き上がって来る厚みのあるトルク感が気持ちいい。アクセルレスポンスもシャープで、吹け上がりも6600rpmのレブリミットまで一気だ。

同じくパドルシフトの6速ATとのコンビネーションも見事。ともかくスムーズで速いのである。ちなみにこのエンジン。パワースペックは未発表だが315psは出ているというもっぱらの噂。(※編集部注:のちに最高出力318psと発表されている)直噴化を進める欧州勢のV6に較べても頭ひとつパワフルさで抜け出た感が強く、しかもフィール面も極上と来ているから、当面のレクサスの大きな武器となりそうだ。

画像: 日本ではトヨタ・アルテッツァの後継とされたレクサスISだが、プレミアムスポーツとして格段に進化していた。試乗は北海道の士別テストコースで行われた。

日本ではトヨタ・アルテッツァの後継とされたレクサスISだが、プレミアムスポーツとして格段に進化していた。試乗は北海道の士別テストコースで行われた。

シャシ性能はどうか。これだけのパワーを後輪に伝えながら、トラクション抜けなどの荒さが感じられないのは見事だ。もちろんウエット路ではその保証の限りではないが、そういった場面ではVDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management=統合車両姿勢安定制御システム)が即座に働くはずだから心配はいらない。

ハンドリング路で多少振り回して見ても、リアが急激にブレークするようなことはなかった。つまりスタビリティにも合格点を与えて良い。それにブレーキも良く効いた。

ただし、シャシの全体の味付けはちょっと子供っぽい。まず電動パワーステアリングの操舵感にイナーシャというか、引きずり感が残っているのが残念。またブレーキング時のノーズダイブは大きめで、旋回を始めたとき、ロールにも唐突感がある。

キビキビさせたいのはわかるのだが、操作に対する反応の現れ方が強めで連続感に乏しいのだ。したがって姿勢変化が大きめでフラットさに欠ける。メルセデス・ベンツCクラスや新しいBMW 3シリーズはこの辺がしなやかで、それが走りの質感を大いに高めていることを考えると、市販化までによりいっそうの熟成を期待したいところだ。

レクサスISは単なるスポーツセダンではなく頭にプレミアムが付くのだから、狙うはさらなるエレガントな身のこなしだと思う。これ以外では、インテリアの質感はかなり高いし、スタイリングも凝縮感があってなかなか魅力的。乗り心地や騒音・振動もテストコースを走る限りではプレミアムにふさわしい内容と感じた。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2005年8月号より)

画像: DセグメントのスポーツセダンらしくタイトでよくまとまったISのインテリア。大型のパドルはステアリングと一緒に回転するタイプ。

DセグメントのスポーツセダンらしくタイトでよくまとまったISのインテリア。大型のパドルはステアリングと一緒に回転するタイプ。

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