2005年、次々と拡充されていく997型ポルシェ911のバリエーションのひとつとして、カブリオレモデルが日本に上陸した。「911はクーペに限る」というファンが多い一方で、カブリオレモデルも根強い人気を誇っているが、997型のカブリオレはどうだったか。日本での試乗を通して、その魅力を探ってみたい。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年8月号より)

911本来の走りを実現するためソフトトップを採用

オープンカーとしての適性を備える一方で、ルーフを閉じてしまえばフィクスドクーペとしての耐候性や防盗性をも確保できる。そんな理由からか、このところのオープンモデルはいわゆる「クーペカブリオレ」方式のボディが世界で大人気。

このタイプのボディを世に広めた立役者であるメルセデス・ベンツSLKは2代目モデルとなってルーフの機能性をさらに大幅向上。高価なモデルにだけでなくプジョー206やダイハツ・コペンなど、コンパクトカーまでもが、こぞってこうしたルーフシステムに食指を伸ばしているのが最近目立つ傾向だ。

しかし、そうした状況にあって、911カブリオレが今回も頑なにソフトトップ方式の採用に拘ったのは、もちろんそれなりの理由が考えられる。「確かに、開発の過程でクーペカブリオレ式のルーフをまったく考えなかったと言えばそれはウソになる。が、我々が新しい911のオープントップをソフトトップ方式と決定したのは、開発の極めて早期の段階」とポルシェでは述べている。

「スポーツカーである911のオープンモデルにとって軽量で低重心であることは最優先事項。実際、ホワイトボディ状態の比較で言えば、カブリオレのそれはクーペに対してわずかに7kgの増加しか示していない」とポルシェの開発陣は胸を張る。

というわけで、スペイン・セビリアで開催された国際試乗会からおよそ4カ月。今度は箱根での再会となった911カブリオレは、相変わらず魅力的なルックスの持ち主だった。

もちろん、 猫背スタイルのクーペのプロポーションも、911という歴史あるモデルならではのビューポイントではある。「911はクーペに限る」という意見の人がいてもそれも当然だろう。が、そうしてクーペというイメージの強いモデルでもあるだけに、逆にルーフを下ろした姿がちょっと新鮮で意外性も漂うというのは事実。いずれにしても「こちらにはこちらなりのカッコ良さがある」というのがぼくの印象。もちろん、フロント周りの造形はクーペのカレラ/カレラSと同様で、もはや「ボクスターと見間違う」という心配もないだろう。

画像: ルーフを下ろした姿も新鮮。ソフトトップの開閉時間は20秒。空力性能も煮詰められているので高速走行時でも静か。

ルーフを下ろした姿も新鮮。ソフトトップの開閉時間は20秒。空力性能も煮詰められているので高速走行時でも静か。

911のパフォーマンスに加え爽快感も手に入れた

再会したカブリオレはカレラSのティプトロニック仕様だった。ステアリングは残念ながらスペインで出会った左側仕様のまま。現代のポルシェのモデルは、ボクスターからカイエンまでいずれも右ハンドル仕様があり、ドライビングポジション上のハンディキャップはまったくナシ。それだけになおさら、わざわざ「不便なモノ」に対して大枚をはたくという理由がぼくには理解できないのだが。

トップの開閉動作はコンソール上の小さなスイッチ操作ひとつでOK。20秒という動作時間は信号待ちの間にすべてを完了させるにはちょっと長過ぎの印象。だが、実はそんなシーンでの使い勝手を決定的に高めてくれるのが「50km/hまでのスピードなら継続動作が可能」というロジック。スイッチを押し続ける不便さはあるが、これで長めの動作時間のマイナスは概ね解消が可能だ。

こうして、ルーフのイージーオペレーションが実現すると、必然的に「オープンで走ろうか」という機会も増えるもの。そして、オープン走行の機会が増せばそのインテリアが外部の視線にさらされる時間が長くなるのもまた当然だ。こうなると、このクルマの場合ちょっと残念に思えるのが、標準装備のウインドディフレクターの不細工さ。リアシートのショルダー部分左右にべース部分を差し込んで使用するこのアイテムは、残念なことに決してスマートなデザインとは言い難いのである。

実は4シーターのオープンカーの場合、この風の整流は難しい課題。サイドのウインドウを立ち上げてリアにディフレクターを加え、擬似的なキャビンを作り出せれば、走行中の後方からの不快な風の巻き込みは防ぐことができるもの。が、その際のリアウインドウ位置が余り後方になってしまうと、キャビン効果は薄れてしまう。かと言って、こうしてフロントシート直後に何らかの衝”立“を作るとなる、今度どうしてもルックスにマイナスの影響を及ぼすことになるわけなのだ。

クーペモデルに対しての剛性感の低下が最小限のボディは、相変わらず好ましいフットワークのテイストを味わわせてくれる原動力。優れた接地性を生みつつ19インチのタイヤを履くことが俄かには信じられないほどのコンフォート性を両立させているのは「立派」のひとことだ。

ブレーキの効き味が絶品であるのも相変わらずで、走り出し直後の低速域から最高速域に至るまで直接足の裏でブレーキローターを抑え込むかごとき減速感を味わわせてくれるのは、フラット6ユニットが生み出す加速フィール同様に911というモデルの誇るべき美点と言える。

ただし、ポルシェが先鞭をつけたシーケンシャルモード付きのティプトロニックは、最近のように様々な最新2ペダル式トランスミッションが現れて来ると正直なところ「ちょっと古くさい」という感否めず。通常発進は2速で行うため常用されるギアは4つのみなのが残念。相変わらずステアリングスイッチの形状は秀逸でマニュアル操作時のレスポンスも優れてはいるが、常に滑りを意識させられてしまう普通のATならではのそのフィーリングは、例えばフォルクスワーゲン/アウディが誇る2ペダル式のデュアルクラッチトランスミッションなどを知ってしまうと、明らかに旧世代感が漂うものと言わざるを得ない。

それにしても、911本来の走りのクオリティの高さに加えてオープンエアモータリングの爽快感も手に入れたのが新しい911カブリオレ。ボクスターとは一線を画す、ちょっと重厚感をも加えた走りのテイストも、このクルマの大きな魅力だ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2005年8月号より)

画像: エアロダイナミクス性能も大幅にアップ。オープン走行時に、サイドウインドウを上げ、リアのウインドディフレクターを装着すれば、乗員はほとんど風を受けることがない。

エアロダイナミクス性能も大幅にアップ。オープン走行時に、サイドウインドウを上げ、リアのウインドディフレクターを装着すれば、乗員はほとんど風を受けることがない。

ヒットの法則のバックナンバー

ポルシェ911 カレラSカブリオレ(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4427×1808×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3525cc
●最高出力:355ps/6600rpm
●最大トルク:400Nm/4600rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:RR
●0→100km/h加速:5.4秒
●最高速: 285km/h
●車両価格:1476万円(2005年当時)
※6速MTも設定、6速MTの0→100km/h加速は4.9秒、最高速は293km/h、車両価格は1413万円。

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