松竹ブロードウェイシネマ第2弾「ブロードウェイ版 ロミオとジュリエット」がただいま絶賛公開中。ロミオ役はあの「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどのオーランド・ブルームというのも話題。本作の演出家である奇才デヴィッド・ルヴォーのインタビューが届いた。

オーランドの特にすばらしいところは、彼が非常に良い人物だというところです

ルヴォーはトニー賞受賞の「NINE」の演出により、その才能を認められている現代演劇界の奇才。彼の演出により有名なシェイクスピアの古典が新しくなってステージに甦る。主演はこれがブロードウェイ・デビューとなるオーランド・ブルーム、ジュリエット役にコンドラ・ラシャド。

画像: インタビューに応えてくれたルヴォー

インタビューに応えてくれたルヴォー

この舞台を演出するにあたって、どういうビジョンをお持ちでしたか?

『今回の演出では、2回目ということもあり、劇の展開を速めるために多くの場面を削りました。そもそもシェイクスピアの時代には、人々の話す速度は現代に比べて明らかに速かったようです。「ロミオとジュリエット」のような劇では、特に映画やテレビの時代に育った観客は、もう少し早く情報を得たいのです。
今回最も気を配ったのは「劇を止めない」ということでした。登場人物の切迫感や焦りを伝えるためには、かなり多くの場面を削って劇を前に進めなければならないと分かっていて、そのことが、ある意味とてもエキサイティングな作業になったのです。
オーランドがバイクに乗って舞台に登場した瞬間から、観客は何か無謀な世界に足を踏み入れたということが分かります。私が「そうだ、バイク好きのロミオにしよう」と思ってこの設定を決めたのですが、舞台でバイクに乗ることをオーランドに提案した理由の1つは、オーランドがバイク好きだと知っていたからです。彼がリラックスできる状況を作りたいと思いました。他の俳優を真似ることはなく、自分らしさを出してほしかったのです。シェイクスピアの劇でもオーランドには彼らしく演じてほしかったからです。彼もそのことに非常に満足していましたし、正解だったと思います。オーランドと観客との自然な結び付きが可能になったからです』

画像1: ©Carol Rosegg

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この「ロミオとジュリエット」の監督をしたいと思った理由について教えてください。

『以前、私は英国で1度「ロミオとジュリエット」の監督を務めたことがありますが、その時は現代的な“若い”劇としての表現ができなかったように感じていました。今回新しい演出で製作する機会を得ました。そこへオーランドが関心を示してくれたので、「いいぞ。ブロードウェイでこういうタイプの話を上演できるめったにない機会がやってきた」と思ったのです。この物語は本当のところ、素晴らしい若者の物語ですよね。主題はとても新鮮です。だから現代のブロードウェイの観客向けに新しい解釈でシェイクスピアを作り直すことができるなんて、まさに心躍るようなチャンスと思ったんです』

画像2: ©Carol Rosegg

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今回演出する上で最も難しかったことは何でしたか?

『それは、ほとんどの人が結末を知っていることだと思います。2人は死ぬと分かっています。だからそこに驚きはありません。ではどうやって観客の心をつかむのか? 私が思うのは、2人があまりに鮮やかに生きようとしているので、死ぬと分かっていても観客はショックを受けるということです。生き生きと人生を謳歌しているように見えたのに、次の瞬間に突然死ぬということに心を揺さぶられるのです。だから最大の苦労を挙げるとしたら、「この劇には膨大な量の“生”の表現が必要」ということですね。今回はとても強力な若手のメンバーが集まって、戦うシーンも愛し合うシーンもすべてを楽しんで演じてくれたので、恵まれていました』

画像3: ©Carol Rosegg

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今作の基本的なコンセプトは何ですか? 特に衣装や舞台装置を現代劇のように設定した理由は?

『まず私が興味を持ったのが、ヴェローナに愛のメッセージを残す壁が今でも存在するという話です。今でもそこに行ってメッセージをしたためた手紙を壁に貼り付けたり、壁にメッセージを書いたりすることができます。そこで「大昔の古代の壁が今では現代的な落書きの場になっている。このイメージを切り取って使ったら面白いに違いない」とひらめきました。もともと私は、過去と現在が手を取り合うような場所を探していたのです。
これが基本的なコンセプトで、それから“壁”というのがまた面白いと思いました。ジュリエットの家の壁は人々が恋愛やその他に関するメッセージを残す場所になりましたが、依然として“壁”であることに変わりありません。「ロミオとジュリエット」でも、2人の若者が、壁を倒し、壊し、そして作り…。人々の間に存在する壁は極めて敵対的なものの象徴です。これを表現するために、落書きで埋め尽くされた壁の一部をシンプルにイメージ化して使いました。この壁はかつてはとても美しいものの象徴でしたが、時とともにかなり破壊されたとも言えます。私はこれを現代的な美と置き換えます。
他にやりたかったのは可能な限り空気感を大切にすること。つまり、パーティーのシーンで風船など空中に浮くもののイメージを入れることによって、逃げているのではなく重力に逆らって浮いているという感覚を常に感じることができると…私はこの感覚が特にジュリエットに近いと思っていました。彼女はその場にとどまらずに逃げるすべを見つけます。それらの様々なイメージが重なります』

画像: オーランド・ブルーム主演 ブロードウェイ版「ロミオとジュリエット」 www.youtube.com

オーランド・ブルーム主演 ブロードウェイ版「ロミオとジュリエット」

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オーランド・ブルームを通して表現したいと思ったロミオ像はどんなものでしょう?

『オーランドの特にすばらしいところは、彼が非常に良い人物だというところです。そういう性質はごまかせません。彼のこの性質は、セクシーであったり二枚目俳優であったりといったロミオの素質を持っていることよりも重要なことだと気づきました。ロミオ役について人がまず気にするのは外見的なことですが、実際には、俳優が真面目な善人であると観客に伝わることこそが重要です。私はオーランドに言いました。「君は既に二枚目俳優だから、そこは心配しなくてもいい。カッコよく見せることに労力を使う必要はない。それよりも、とにかく愛すること、ひたすら愛することだ。愛に集中してほしい」と』

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彼と一緒に仕事をした時の彼の印象は?

『真の努力家です。オーランドはギルドホール演劇学校で勉強した経歴の持ち主で、ずっと舞台俳優になりたかったらしいです。でも後にご存じのとおり映画の仕事も入るようになって一躍有名になりました。それでも心の奥では演劇の練習をしていた頃に戻りたいとずっと思っていたのです。彼は「ライブの劇場作品に再び関わることができてとても嬉しい」と毎日言っていました。そして非常に頑張って努力していました。台本の熟読から体力づくりに至るまで、準備にも膨大な時間を費やしていました。1週間に8公演、舞台の上で飛び回ったり、バルコニーに登ったり飛び降りたり…、「しっかりと体力をつけなければ」とも言っていました。彼のひたむきで真面目な姿勢には私も非常に感心しました』

ブロードウェイ版「ロミオとジュリエット」を見る日本の観客にはどのような反応を期待しますか?

『私は何年も日本で舞台作りに携わっていますが、日本の観客は大好きです。非常に思慮深い人々だと思います。確かに、日本の観客は声に出してはっきりと自分の考えを表さないという人もいますが、それは日本の観客がよく考え、感じているからなのです。日本の観客は非常に深いところまで読み取ります。上辺だけのリアクションを見せるのとは違います。だから今回のブロードウェイ版にもいくらかの楽しみと魅力を感じてほしいです』

画像5: ©Carol Rosegg

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ブロードウェイ版「ロミオとジュリエット」を通して日本の観客に伝いたいことを教えてください。

『日本でも言葉がとても大切だと思うので、私は言葉についてよく考えます。私の印象では、日本語は変化の速度がとても速い言語です。現代の若者が話す日本語は、20~30年前に私が初めて日本に来た頃から随分変わりました。女性も昔とは違う日本語を話します。言葉がとても大切だと思うのは、それがアイデンティティーの表現だからです。忘れてはならないのが、シェイクスピアは物語を書きながら様々な意味で英国人のアイデンティティーも創出していたということです。シェイクスピアが登場するまでは詩といえばイタリア語かフランス語で書かれており、英語で書かれた詩はありませんでした。だから私はシェイクスピア作品で繰り広げられる言葉の祝祭が大好きなんです。
私が興味を持っている作家で、最高に魅力的でありながら様々な意味で矛盾に満ちた日本人作家だと思うのは、三島由紀夫です。三島はシェイクスピアや18世紀ヨーロッパ文学に造詣が深く、彼が育った時代の後、つまり戦後、復興を遂げつつあるこの国にとっての言葉の重要性を認識していました。私は特に「ロミオとジュリエット」は別の意味で、若者に言葉を返す手段だと思っています。「言葉を使ってこんなこともできるんだよ。言葉の可能性はすごいでしょう」と伝えたいです』

松竹ブロードウェイシネマ
『ブロードウェイ版 ロミオとジュリエット』
7月12日(金)より東劇(東京・3週間限定公開)・なんばパークスシネマ(大阪・限定公開)・ミッドランドスクエア シネマ(名古屋・限定公開)ほか全国順次ロードショー
配給:松竹  (©BroadwayHD/松竹) 
〈米国/2013/16:9/135分/5.1ch〉 日本語字幕スーパー版
©Carol Rosegg 
イタリアのヴェローナ地方を舞台に展開される、愛し合う事を禁じられた恋人達の物語。キャピュレット家とモンタギュー家は代々敵同士の険悪な仲。そんな中、モンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットが出会い、許されない恋に落ちる。2人の悲恋の結末は……

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