MT-25、MT-03、MT-07、MT-09、そしてMT-10と現在5モデルをラインナップしているヤマハのMTシリーズは、このMT-01から始まった。

大きな特徴は、同社のクルーザー、XV1700ロードスターに使われた空冷OHV4バルブVツインエンジンを使ってロードスポーツを作ったことにある。排気量は1670cc、1 気筒あたり835ccだと考えると、大きなエンジンが大部分を占める見た目の存在感だけでなく、そのトルクと走りに大いに興味がわくはずだ。

日本国内で最初にお目見えしたのは参考出品された1999年の東京モーターショーだった。このプロトタイプは、エンジン、リアサスペンションの仕組み、外装の細かいディテールなどは違えど、すでに大まかなスタイルは市販車に近いものになっていた。開発コンセプトは『鼓動』で、「大排気量Vツインエンジンの爆発で生まれる鼓動、パルス感、力強いトルク、それらかなるエモーショナルなものを追求した」と発表した。ロードスポーツとしての走行性能うんぬんという機械的な優劣よりも、ライダーの心に訴えかける心地よい世界を大切にした。その2年後の2001年秋の東京モーターショーには、新型VMAX誕生を匂わす「OTODAMA(音魂)」というV4エンジンを使ったオブジェを展示。ここでもヤマハは走りだけではなく、音や鼓動、デザインを含めた『人機官能』をテーマに掲げた。80年代、国内では空前の二輪ブームが沸き起こり、性能争いが激化しオートバイは急激に進化した。それが90年代に入ると、オートバイ単体よりライダー本位の価値観が強まっていく。その流れから物質的な魅力に加え感性、精神的な魅力を重要視する気運が高まった。

だから、MT-01に対して、「わざわざ大きく重いエンジンを使ってロードスポーツ作る意味があるのか」と思ったならば、この世界観を理解できないだろう。クルーザーに乗るライダーは、姿勢と巡航が楽ちんだから選んでいると思っているのと一緒だ。オートバイに乗って操る悦びは、いつでも速く走ることが中心ではない。どんなバイクにどう乗ってどう楽しみたいのか。乗っていてどんな時が気持ちいいのか。それを改めて考えると、今でも類まれなMT︲01の存在が飲み込めてくるだろう。

余談になるけれど、ヤマハにはこれの発売直前にもクルーザーのエンジンを使い誕生したロードスポーツがあったのをご存知だろうか。それはヤマハイタリア(旧ベルガルダヤマハ)が設計、開発、そして生産をしたBT1100ブルドッグだ。エンジンはドラッグスター1100の空冷2バルブ75度Vツイン1063ccをベースにしたもの。それをツインチューブタイプの鋼管バックボーンフレームに搭載したシャフトドライブ車。同じようにハーレーダビッドソンのクルーザーエンジンを使ったビューエルを連想させるようなスタイルだった。マルゾッキのホイールやパイオリのフロントフォークなど欧州サプライヤーのパーツを使っていたのも持ち味だった。こうなると、時代を遡り、XV1000ビラーゴと基本が同じエンジンで1981年に登場したTR1も、仲間に入れるべきかもしれない。

話をMT-01に戻す。エンジンに注目が集まる中で、ルックスのアクセントにもなっているフレームもかなり凝った作りだ。メインのツインスパー部分は、ヤマハ独自技術のCFアルミダイキャストで作られた左右の部材を、溶接せずにヘッド部とスイングアームピボット部でボルトを使い連結した
もの。スイングアームはそのピボットを挟むように取り付けている。

リアショックユニットは、エンジン後部下に寝かされて装着されている。かつてのRZV500Rを彷彿とさせるこのレイアウトは、MT-01もRZVも排気管の取り回しにより通常位置に配置できなかったため。後のVMAXでも見せた、吸気→爆発→排気の流れを強調したデザインのエキゾーストには排気デバイスEXUPも採用する。

乗ってみると、車体は決して軽くはないけれど、それを後から蹴飛ばすように押し出す力強いトルクと鼓動が平凡でないことを主張。見た目だけでなく、乗り味も個性的である。強烈な印象を残した始祖のDNAを受け継ぐように、後に誕生した新たなMTシリーズもトルク感にこだわった。他にない、人と違うオートバイが欲しいならばこのMT-01はうってつけの一台だ。

YAMAHA MT-01 (2007)
●エンジン種類:空冷4 ストロークV 型2 気筒OHV4 バルブ
●総排気量(内径×行程):1670cc(97.0 × 113.0mm)
●最高出力:90PS/4750rpm
●最大トルク:15.3kg-m/3750rpm
●圧縮比:8.36
●変速機:5 段リターン
●全長×全幅×全高:2185 × 790 × 1160mm
●軸距離:1525mm
●乾燥重量:240kg
●燃料タンク容量:15L
●タイヤ前・後:120/70ZR17 58W・190/50ZR17 73W
●車体色:ブルイッシュホワイトカクテル1、ダークレッドメタリックK、ブラックメタリックX
●発売当時価格:輸出車
●発売年:2007 年

写真 松川 忍 文 濱矢文夫 車両協力 レッドバロン
Mr.バイクBG『新・絶版車希少車黙示録』より

画像: YAMAHA MT-01『鼓動』(1999) 1999 年の東京モーターショーに参考出品されたプロトタイプがMT-01 の初お目見え。リアサスペンションのショックがエンジン下部ではなく横にレイアウトされている。同じように見えるフレームもダイヤモンドタイプだ。エンジンも造形が違う。しかし市販版のデザインはこれを踏襲したことが分かる。

YAMAHA MT-01『鼓動』(1999)
1999 年の東京モーターショーに参考出品されたプロトタイプがMT-01 の初お目見え。リアサスペンションのショックがエンジン下部ではなく横にレイアウトされている。同じように見えるフレームもダイヤモンドタイプだ。エンジンも造形が違う。しかし市販版のデザインはこれを踏襲したことが分かる。

画像: YAMAHA MT-01(2005) 初期型タイプはブレーキキャリパーが6ポッドではなく、YZF-R1 などにも使われたモノブロックタイプの4ポッドを装着している。カラーバリエーションは2種類で、このベリーダークバイオレットメタリック1 とシルバー3だった。マイナーチェンジをしたのは2007 年モデルから。

YAMAHA MT-01(2005)
初期型タイプはブレーキキャリパーが6ポッドではなく、YZF-R1 などにも使われたモノブロックタイプの4ポッドを装着している。カラーバリエーションは2種類で、このベリーダークバイオレットメタリック1 とシルバー3だった。マイナーチェンジをしたのは2007 年モデルから。

画像: YAMAHA MT-0S(2007) 第40 回東京モーターショーに展示。MT-01 をベースにハーフフェアリングを装着し、エキゾーストレイアウト、スイングアームなどショーモデルらしいスタイル。テールエンドはリアシートで終わりマフラーの方が突き出している。海外ではこのファリングに似せた外装キットを社外部品メーカーが販売した。

YAMAHA MT-0S(2007)
第40 回東京モーターショーに展示。MT-01 をベースにハーフフェアリングを装着し、エキゾーストレイアウト、スイングアームなどショーモデルらしいスタイル。テールエンドはリアシートで終わりマフラーの方が突き出している。海外ではこのファリングに似せた外装キットを社外部品メーカーが販売した。

画像: YAMAHA MT-01S(2009) 残念ながらMT-0S は登場しなかったが、前後にオーリンズサスペンションを装着した上位機種のMT-01S が発売された。外装は赤ラインが入るスペシャルカラー。キャリパーブラケット部分は無色アルマイト。前後のタイヤはPIRELLI DIABLOROSSO を標準装備。プレストの参考価格は193 万3200 円。

YAMAHA MT-01S(2009)
残念ながらMT-0S は登場しなかったが、前後にオーリンズサスペンションを装着した上位機種のMT-01S が発売された。外装は赤ラインが入るスペシャルカラー。キャリパーブラケット部分は無色アルマイト。前後のタイヤはPIRELLI DIABLOROSSO を標準装備。プレストの参考価格は193 万3200 円。

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