いにしえの1960年代まで前後輪ともに制動装置を装備せず、21世紀の現代でもブレーキシステムはリアのみ。そしてカウンタークロックワイズ = 半時計回りのオーバルトラックを疾走するダートトラックレーシングの基本フォーマットに比べ、"ツーリストトロフィー" とか "ステープルズチェイス" とも称される、いわゆる "TTレイアウト" は、"フラットなモトクロス" とか "ロードレースのダート版" 的なものとして語られることも多い、一風変わった代物です。近年我が国では小排気量車を用い、他種目のライダーがトレーニングに取り入れるなど、幾分か認知度が高まってきた "TT" ですが、競技の本場アメリカの本格的なレースとはどのようなものでしょうか?というわけで4月27日にアリゾナ州チャンドラーで開催された "AFT第4戦アリゾナ・スーパーTT" に注目してみましょう!

1981年ピオリアTT以来38年ぶり、ヤマハが全米ダートトラック選手権2気筒戦優勝!

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。本日ご紹介する "AFTアリゾナ・スーパーTT" 、チョーが付くだけあって?全く新規に造成されたダイナミックなレイアウトでの一戦でした。トップカテゴリー "AFTツインズ" では、ロードレースでも非凡な才能を発揮するナンバー95、ケンタッキー出身のJD・ビーチが2気筒クラスで初優勝。MT-07をベース車両として高度にチューニングされたマシンを駆り、ヤマハにとってはなんと38年ぶりとなる全米最高峰クラスでの勝利をもたらしました。

画像1: estensonracing.com
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前ブレーキ付きのTTカテゴリーは"オーバルより"タフなのか・スイートなのか。

画像: 2019 Arizona Super TT - AFT Singles Heat 4 youtu.be

2019 Arizona Super TT - AFT Singles Heat 4

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こちらは本日ご紹介できる唯一のレース映像、450ccシングルスの予選: ヒートレース4組目の模様です。後列左端からスタートするナンバー336は、以前ご紹介したMXレジェンド、ジェフ・ワード。

画像: 華奢な車体構成とロードレーサー並の少ないサスペンションストロークが特徴のダートトラッカー。フロント主体の着地はモトクロスマシンベースのDTXマシンであっても前輪車軸がヘシ折れる可能性があるため極力回避。 estensonracing.com

華奢な車体構成とロードレーサー並の少ないサスペンションストロークが特徴のダートトラッカー。フロント主体の着地はモトクロスマシンベースのDTXマシンであっても前輪車軸がヘシ折れる可能性があるため極力回避。

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長いストレートと高低差が生む複数のジャンプセクション、そして基本的に右手右足で操作するスロットルとリアブレーキの配置から、左ターンより身体的制限の多い右ターンの存在。ビッグトラックならではの速度域もさることながら、環境要素を限界まで削ぎ落とした中で競い合うオーバルレーシングに比べ、TTレイアウトでは "複雑系フィジカル" の要求される部分が大いにあるでしょう。

画像: スロットルやブレーキなど操作系が右側に集中し、実はモーターサイクルそのものが完全な左右対称のマシンではないため、必然的に左右のコーナーリングフォームは異なってくる。ホットシューの有無はあまり関係なく。 estensonracing.com

スロットルやブレーキなど操作系が右側に集中し、実はモーターサイクルそのものが完全な左右対称のマシンではないため、必然的に左右のコーナーリングフォームは異なってくる。ホットシューの有無はあまり関係なく。

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ライトスタッフが結集!ついにヤマハMT-07を勝利に導いたエステンソンレーシング。

画像: Dave Hoenig / FLAT TRAK FOTOS

Dave Hoenig / FLAT TRAK FOTOS

本戦で勝利したJD・ビーチの出身はケンタッキー州フィルポット・・・あのヘイデン・ブラザースを生んだオーウェンズボロの隣町であり、彼もまた幼い頃から兄弟の父アールの指導と援助のもと、プロレーサーへの道を歩み始めた "ケンタッキー・ラットパック" = 当地生え抜きのダートトラッカーグループの一員です。

1981年ピオリアTTでのスコット・ピアソン + XS650による優勝から、実に38年ぶりにヤマハに勝ち星をもたらしたエステンソンレーシングのライダーは、ツインズカテゴリーに本戦勝者のビーチ、3度のトップカテゴリーチャンピオン経験を持つジェイク・ジョンソン、2017年シングルス王者のコービー・カーライルの3人。シングルスカテゴリーには昨年ニッキー・ヘイデン・ホライゾンアワード (AMAアマチュア新人賞) を獲得した15歳のルーキー ダラス・ダニエルズ、2016年の単気筒クラスチャンピオンのライアン・ウェルズの2人。クルーチーフに元プロナンバー26のブランダン・バーゲン、チームの戦略的アドバイザーにはトミー・ヘイデンという正に "ライトスタッフ" と呼ぶべき顔ぶれが揃っています。

画像2: estensonracing.com
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画像: ビーチのツインズ初優勝を祝福するブラッド・ベイカーとブランダン・バーゲン。幼少期からのレース仲間。 Dave Hoenig / FLAT TRAK FOTOS

ビーチのツインズ初優勝を祝福するブラッド・ベイカーとブランダン・バーゲン。幼少期からのレース仲間。
Dave Hoenig / FLAT TRAK FOTOS

今期インディアンFTR750の独走を阻むのは彼らヤマハMT-07か、あるいはカワサキ650か、ハーレーダビッドソンXG750でしょうか?5月の全米ダートトラック選手権はハーフマイル + マイルと2戦続けてのカリフォルニア・ラウンド、そして伝統のスプリングフィールド・マイルが控えています。

といったところで今週はこの辺で。筆者主催のダートトラックレースシリーズFEVHOTSは、次週末5/12 (日) 長野県のオートパーククワ・1/13マイルトラックにて、当地での今後のレース開催を探るテストラウンドとしてノンタイトル・しかし2019シーズンの第ニ戦を行う予定です。

ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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