日本酒の世界で活躍する女性たちをとらえたドキュメンタリー「カンパイ!日本酒に恋した女たち」(2019年4月27日公開)の小西未来監督に完成までの道のりなどを聞いてみた。

「カンパイ! 世界が恋した日本酒」に続く第2弾

2016年に公開された日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」の続編で、今度は日本酒の世界で活躍する3人の女性にスポットを当てた「カンパイ!日本酒に恋した女たち」が2019年4月27日より公開される。ハリウッドで活躍する映画ジャーナリストであり、本作の監督である小西未来監督がインタビューに応えてくれた。

「カンパイ!日本酒に恋した女たち」解説

画像: 「カンパイ!日本酒に恋した女たち」の今田美穂(今田酒造本店代表取締役)

「カンパイ!日本酒に恋した女たち」の今田美穂(今田酒造本店代表取締役)

 長らく『女人禁制』と言われてきた日本酒の世界。だが、現在新たな世代の女性たちがこの伝統的な世界に身を投じて、これまでになかった輝きを放っている。彼女たちの姿を描きながら、日本酒の持つ魅力の再発見と新発見を観客に与えてくれるドキュメンタリー・ドラマ。
 監督は前作「カンパイ! 世界が恋した日本酒」に続いてハリウッド映画業界で活躍するジャーナリストでフィルムメーカーでもある小西未来。日本酒の未来を切り拓く三人の女性は、伝統と革新を両立させた日本酒造りを行なっている杜氏、今田美穂、食と日本酒のペアリングを提案する日本酒バー店長、千葉麻里絵、ニュージーランド出身で日本酒の魅力を国内外に伝えるコンサルタント、レベッカ・ウィルソンライ。(シンカ配給)

映画ジャーナリストとして活躍しながら映画製作の夢を忘れなかった

──前作(「カンパイ!世界が恋した日本酒」)の反響はいかがでしたか。また続編の製作にあたって挑戦したことは?

『前作は自分にとって初めての長編映画だったのですが、好意的なご意見が多くて率直にうれしかったです。以前から自分にとってのアイドルは映画の作り手だったんですが、ジャンルは違ってもクラフツマン(職人)ということでは日本酒の世界も同じように尊敬できる方が多くて、そういう方たちと共有する時間の記録を撮ろうと考えたんです。

でも自分はその時ぜんぜん日本酒について素人だったし、取材対象が三人もいて、場所もあちこち移り変わって、震災の話も盛り込んで、正直どう受け止められるかわかりませんでした。個人的には長編を作りきったことがうれしかったですね。観客を飽きさせずに情熱を込めて作り続けるのがこんなに大変なことなのかと気づくうちにも喜びがあって、これはぜひ続けなくてはと思ったんです。前作の三人の周りにも面白い方がたくさんいらっしゃって、本当は前作でももっと多くの方を入れたかったんですが。もし1作目が好評だったら、第2弾は違う人を対象にしたかったんです』

──記者として活躍される以前、最初は南カリフォルニア大学で映画を学んでいらしたんですよね。専攻はドキュメンタリー?

『いえ、劇映画でした。短編などは作っていたんですが、だんだん映画記者の仕事が忙しくなってきて。フリーだと取材競争が激しいんですが、2011年にハリウッド外国人記者協会に入れたことで落ち着いたおかげで、映画製作の夢に戻るなら今だ、と思ったんです。理詰めで考えて他力本願でなく出来るのはドキュメンタリーしかないと思い、その頃「二郎は鮨の夢を見る」がハリウッドでヒットして、フード・ドキュメンタリーが盛り上がったのでこれで行こうと(笑)。

さらにその頃偶然知りあったのが、前作に登場した蔵元の久慈(浩介)さんで、自分の知らない世界を追求したいという気持ちで作り始めたんですが、他のお二人(フィリップ・ハーパー氏、ジョン・ゴントナー氏)も含め、この世界ではアウトサイダーといえる方たち。自分もハリウッドではアウトサイダーという気持ちが今も消えないので、そのあたりにも共感ができたと思います。今回の女性三人もいわばアウトサイダーですしね』

画像: インタビューに応えてくれた小西監督

インタビューに応えてくれた小西監督

日本酒に惚れ込んだ女性たちはみんな生き生きしていた

──日本酒の世界ではアウトサイダー的な女性たちが苦労するという話も盛り込まれていると思いましたが、みなさんがすごく生き生き日本酒の世界に没頭していて、悩みのかけらも見せないような描写が意外でした。

『ドラマ作りではそういうシーンがあった方が良かったかもしれないですね(笑)。前作でいろいろと悩んで、結局震災の話を入れることにしたんですが、明るいトーンがそこで一気に暗くなってもそれによって映画の芯ができたと思えたんです。続編でも芯が必要と思って、彼女たちにも女性ならではの苦労があると思い、結構突っ込んで伺ったんですが、出てこない(笑)。仕方ないので、今回は彼女たちの生き生きキラキラしたところを前面に出すことにしました。ただ別個に撮影していて完成形が見えていなかったんですが、三人それぞれが日本酒と出会う前の若い時点でぶつかった壁のような話を編集でつなげた時に、映画の流れができたような気がします』

画像: 日本酒バー店長の千葉麻里絵

日本酒バー店長の千葉麻里絵

──前作よりも撮影は順調でしたか?

『そうですね、前作の時は撮影に行っても誰も僕のことを知らなかったのですが、今度はあの映画の監督だと知られていて、いろいろと素材やアイデアを提供していただいたんです。でも逆に多すぎて使わなかったものも膨大なんです。全部入れたら4時間くらいになっちゃう(笑)。また前作では酒の作り方を知らなかったせいで、ワンテンポ遅れてみすみす大事なところを撮りそこなうこともあったんです。もう一回やってとも言えないし(笑)。今度はやることが分かっているので、撮影が僕一人でも必要なカットは撮れたし、インタビュアーも兼ねることもありました』

画像: 日本酒コンサルタントのレベッカ・ウィルソンライ

日本酒コンサルタントのレベッカ・ウィルソンライ

──日本酒はいま世界でブームが来ているんでしょうか?

『ブームとまでは行きませんが、徐々にその良さを理解してくれる外国の方は増えていると思います。ニューヨークの一風堂ではウェイティングのコーナーのバーで日本酒を提供していますよ。海外の映画祭に招かれた時も、上映後に日本酒をふるまったりすると好評です。またジョン(ゴントナー)さんや本作のレベッカ(ウィルソンライ)さんのようなきちんとした知識を持った方が、酒の魅力を知らない人たちにその素晴らしさを普及してくれていますし。

日本酒全体の消費量は下がっているという現実もありますが、今田(美穂)さんのように手をかけた付加価値のあるクラフトものは伸びているんです。ただ熱燗で飲めばいいというような時代ではなく、千葉(麻里絵)さんの提案するペアリングのように新たな楽しみ方がこれまで日本酒を知らなかった世代に響いていくのではないでしょうか』

──題材も豊富ですし、第3弾もありそうですね。

『もちろんアイデアはあるんですが、この2作目を作ったおかげでいま大貧乏になっちゃったんですよ(笑)。家族もあるので、また機会を見てですかね(笑)』
(インタビュー/SCREEN編集部)

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