2019年4月21日に行われたスーパーフォーミュラ2019開幕戦鈴鹿。今年は移籍、新規参入ドライバーが大半を占め、勢力図が読めない面白いシーズンとなります。さらに新しくなったスーパーフォーミュラマシン「SF19」のポテンシャルにも注目です。

新時代に突入したスーパーフォーミュラ

まず注目したいのはドライバーラインナップ。今年は新規参入のドライバーが8名とラインナップが去年までと一新されました。昨年全日本F3で歴代最多となるシーズン17勝を挙げた坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)が満を持してスーパーフォーミュラにステップアップ。F3での活躍がありプレッシャーがかかるデビュー戦でどのような走りを見せてくれるのかに注目です。

そしてヨーロッパから強力なドライバーたちも参戦します。マカオを連覇しF1にあと一歩に迫る新鋭ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN)、DTMのアウディーワークスで活躍しゲルハルト・ベルガーの甥でもあるルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)、空力の鬼才と呼ばれ長年F1で活躍するデザイナー、エイドリアン・ニューウェイの息子であるハリソン・ニューウェイ(B-Max Racing with motopark)とビッグネームが並びます。

さらに去年F2で日本人初めてのレース1で優勝した牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)に、牧野のチームメイトでF2では抜群の速さを見せつけたアーテム・マルケロフ(TEAM LEMANS)も参戦。牧野は日本に戻るかたちとなりましたが、スーパーフォーミュラで好成績を残し、再び世界の舞台を目指します。牧野のチームメイトとなるアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)は全日本F3で活躍しマカオでも好成績を残した実力者です。

新しくなったのはドライバーだけではありません。今年からマシンが新しくSF19に進化しました。SF14よりもさらに空力性能が増し、タイヤもワイドになったことからコーナリングがより速くなりました。F1と同じくドライバーの頭部を守るHALOも備わり外観がかなり変わりました。さらにオーバーテイクシステムは20秒間を5回から上限100秒以内であれば使用回数は任意というルールに変更され、レース中の戦略がさらに増すことになるでしょう。

画像: 新型SF19のポテンシャルはテストから発揮された twitter.com

新型SF19のポテンシャルはテストから発揮された

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古豪復活!21歳と22歳が見せたNAKAJIMA RACING劇場!

今年のノックアウト制で行われる予選はいきなり波乱の展開となりました。Q1開始早々にルーキーの坪井が1コーナーでクラッシュしいきなり赤旗中断となります。セッションが再開されるも次はデグナーの2つ目でマルケロフがクラッシュし再び赤旗に。2度の赤旗ののち再度予選が再開されるも、残し5分20秒でニューウェイがスプーンふたつめの外側の縁石に乗りスピン、コース上で体勢を整えようとした所に中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)が避けきれず追突し2台ともクラッシュしてしまいます。なんと1セッションの中で3回も赤旗が出され、残り5分20秒の時点で誰もタイムアタック出来ていない異例の事態となりました。各車一回のアタックだけとなったQ1はルーキーのパロウがトップ、2位には牧野とNAKAJIMA RACINGの2台が独占。Q1敗退となったのは大嶋和也(TEAM LEMANS)、石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、トリスタン・シャルパンティエ(REAL RACING)、ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN)、ニューウェイ、坪井、中嶋、マルケロフとなりました。

Q2でもNAKAJIMA RACINGの速さを際立ち迎えるQ3。各車コースに出てタイヤを温める中、チャンピオンの山本と福住はタイミングを遅らせてコースへ。各車タイムを更新していく中やはり最速タイムでコントロールラインを駆け抜けたのはQ1、Q2でトップタイムを出したパロウ!しかし後方からパロウを上回るタイムできたのがチームメイトの牧野。1:36.060を記録しデビュー戦でのポールポジションを獲得しました!チームにとっては実に9年ぶりとなるポールポジション獲得となりました。

画像: 見事な走りを見せたルーキー2人。9年ぶりのポールポジション獲得にご満悦の中嶋監督 twitter.com

見事な走りを見せたルーキー2人。9年ぶりのポールポジション獲得にご満悦の中嶋監督

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予選結果

1.牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)
2.アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)
3.山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
4.福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
5.関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
6.山下健太(KONDO RACING)
7.平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
8.小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)
9.国本雄資(KONDO RACING)
10.野尻智紀(TEAM MUGEN)
11.ルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)
12.ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)
13.大嶋和也(TEAM LEMANS)
14.石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
15.トリスタン・シャルパンティエ(REAL RACING)
16.ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN)
17.ハリソン・ニューウェイ(B-Max Racing with motopark)
18.坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
19.中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)
20.アーテム・マルケロフ(TEAM LEMANS)

12番手スタートから逆転優勝!ニック・キャシディが波乱のレースを制す!

快晴に恵まれた決勝日は多くの観客が見守る中レースがスタートしました。ポールポジションを獲得した牧野が好スタートを決め、2位スタートのパロウを山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が1コーナーアウトからパスし2位に浮上します。後方ではインパルの2台が順位を上げ、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が4位、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が5位につけます。

スタート直後に山本にパスされたパロウは2周目のホームストレートでOTSを使い山本をパスし再び2位に順位を上げます。ミディアムタイヤでスタートした山本は3周目の130Rの入り口で関口にもパスされ4位にポジションダウン。

5周目には先頭の牧野にチームメイトのパロウが迫りますが、パロウにはスタート手順違反のドライブスルーペナルティが課せられてしまいました。

6周目終了時、ミディアムスタート組で最初にピット義務を消化したのがニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)。ソフトに履き替えコースに復帰します。そんな中130Rでトリスタン・シャルパンティエ(REAL RACING)がタイヤバリアに突き刺さるクラッシュが発生。同じ130Rには平川も止まっており、SCが入ることになりました。

これで各車一斉にピットストップを敢行。ミディアムタイヤスタートのマシンはソフトに履き替え、断然有利な状況となりました。

SC中にペースが良かった関口がスローダウン。コースインの時からギアがなくなっていたという関口は無念のリタイヤとなってしまいました。

1位には小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)、2位に国本雄資(KONDO RACING)、3位にドライブスルーを消化したパロウがつけ、上位3人はまだピットストップを行なっていません。

11周にレースは再開され、キャシディがミディアムタイヤに履き替えた牧野を簡単に攻略、さらにシケインで山本も牧野をパスし順位を上げます。今回はソフトとミディアムの性能差が大きく、ソフトタイヤでスタートしたマシンにとって辛いレース展開となりました。

15周目のデグナーでニューウェイと中嶋が絡み両者リタイヤとなります。予選でも絡んでしまったこの2台。中嶋は二日続けてルーキーに巻き込まれてしまいました。

このクラッシュで再びSCが入ります。ソフトでスタートし、ミディアムに履き替えペースが上がらない石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)がSC中に再びソフトタイヤに履き替え挽回を試みます。しかしピットでスタートがきれずなんとリタイヤとなってしまいました。

まだピットに入らない小林とパロウを先頭に18周目で再度リスタート。1コーナーでパロウは小林に襲いかかるも小林がブロック。勢いに乗るパロウでしたが続くS字でいきなりスローダウン!ダンロップコーナーのイン側にマシンと止めてしまいました。パロウのマシン撤去のため3度目のSCが入ります。

22周目にリスタートするも今度はミディアムで検討していた牧野が27周目のスプーン2つ目で右リアタイヤが外れクラッシュ!まさかの4度目のSC出動となりました。予選で他を圧倒したNAKAJIMA RACINGでしたが、決勝は辛い結果となってしまいました。

レースは32周目にリスタート。リードを稼がなければいけないにも関わらず、度重なるSCでリードを奪えない小林。勝利の権利はなくなったものの、2位のキャシディに対し11秒の差をつける圧巻の走りでファイナルラップ直前にピットイン。2位につけていたキャシディがそのまま順位を守りきり、12番手スタートから見事優勝。2位には鈴鹿マイスターの山本、3位に山下健太(KONDO RACING)が食い込みました。ミディアムタイヤで奮闘した野尻智紀(TEAM MUGEN)が4位、予選でいきなりSFの洗礼を浴びたルーキーの坪井はサバイバルレースを生き残り5位でレースを終えました。

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決勝結果

1.ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)
2.山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
3.山下健太(KONDO RACING)
4.野尻智紀(TEAM MUGEN)
5.坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
6.国本雄資(KONDO RACING)
7.ルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)
8.ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN)
9.小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)
10.アーテム・マルケロフ(TEAM LEMANS)
11.福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
12.大嶋和也(TEAM LEMANS)
13.牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)
14.アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)
15.石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
16.中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)
17.ハリソン・ニューウェイ(B-Max Racing with motopark)
18.関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
19.平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
20.トリスタン・シャルパンティエ(REAL RACING)

大波乱のレースで8台がリタイヤ、完走12台のサバイバルレースとなった開幕戦鈴鹿。キャシディの走りは素晴らしかったですが、SCで勝機を失いながらも見事な走りをみせた小林や、関口、牧野、パロウとリタイヤながらも印象的な走りが多くありました。いったい全員何もなく生き残っていればどんな結果になっていたのでしょうか。今シーズンはこれまでにない大激戦が予想されます。1戦も見逃せない今シーズン、最後に笑うのは誰なのでしょうか?

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