「RS」シリーズの中で日本におけるその最新モデルがRS 4アバント。その真髄は超高性能と快適性の両立にあった。(Motor Magazine2019年4月号より)

日常を犠牲にしない圧倒的なパフォーマンスという思想

昨年7月、私はアウディミュージアムが所蔵する“アバント RS 2”に試乗する幸運に恵まれた。

1994年にデビューしたRS は、80アバントがベースの高性能モデル。現在に続くアウディRS(ドイツ語のRenn Sport[レンシュポルト]、英語のRacing Sport[レーシングスポーツ]を意味する)シリーズの初代モデルにあたるが、その開発にはポルシェ社が深く関わっていた。それを証明するかのように、ボディのいたるところにポルシェのロゴが刻まれ、エンジンやブレーキのフィールはまさにポルシェ車そのもの。ベースとなった80とは別物の、圧倒的なクォリティ感を味わえた。

それとともに印象に残ったのが快適性が高く、運転しやすいこと。同時代の80に比べて2倍から3倍の高出力エンジンを積んでいることが信じられないほど乗り心地はソフトで、エンジンはボトムエンドから力強いトルクを生み出してくれるのだ。

「RS」と名乗るからにはサスペンションの設定はサーキット走行も視野に入れていたはずだし、0→100km/h加速は4.8秒と当時としてはかなりの俊足。それと日常的な使い勝手を両立させた点こそがRS2の真髄に違いないとこのとき確信した。

もうひとつRS 2で特筆すべきことは、アウディのトレードマークともいうべきフルタイム4WDシステム“クワトロ”を装備するとともに、ハイパフォーマンスモデルでありながらワゴンボディの“アバント”を採用した点である。ここにもライバルメーカーのハイパフォーマンスモデルには見られない、アウディ独自の方向性が明確に表れている気がした。

画像: 基本デザインやレイアウトはベースとするA4シリーズに共通。フェンダーのふくらみがRSモデルであることを示している。

基本デザインやレイアウトはベースとするA4シリーズに共通。フェンダーのふくらみがRSモデルであることを示している。

高級サルーンかと錯覚する乗り心地と安定感の高さ

それから四半世紀の歳月を超えて誕生したのが、最新型アウディRS 4アバントである。

そのベースとなっているのはA4アバントで、RS 4アバントのボディサイズは大きく変わらないものの、タイヤサイズはA4 45 クワトロスポーツの225/50R17から275/30R20へと大幅に拡大。前後トレッドも30〜40mm拡幅し、超高性能化に対応している。

RS 4アバントが搭載するエンジンは、2.9L V6ツインターボで、その最高出力は450ps、最大トルクは900Nmを誇る。これは、A4のベーシックモデルのおよそ3倍に相当する。本国発表データによれば、0→100km/h加速は4.1秒。本国仕様の標準モデルはリミッターによって最高速度250km/hに制限されるものの、オプションのRSダイナミックパッケージを選択するとこれを280km/hに引き上げることが可能(日本仕様のカタログにはトップスピード280km/hと表記)。まさにスーパースポーツカーなみのパフォーマンスだ。

ところが最新のRS 4アバントもまた、これほどの高性能ぶりが信じられないほどの快適性をもたらしてくれるのである。

路面からのショックを優しくサスペンションが受け止めてくれることは、走り始めた直後から実感できる。その、スムーズさの中にしっとりとしたダンパーの働きを感じさせる足まわりの動き方は、ハイパフォーマンスカーというよりはラグジュアリーサルーンに近い。ロードノイズやエンジンノイズが極端に低く抑えられていることも、高級サルーンに乗っているような錯覚を抱かせる一因だ。

アウディドライブセレクトでコンフォートモードを選んでいる限り、この快適性は車速を上げても変わらない。私は、スポーティさの度合いでいえばRSモデルよりは穏やかなSモデルの優れた乗り心地を高く評価してきたが、新しいRS4アバントは既存のSモデルに匹敵する良質で心地いい乗り味を実現していると思う。

続いてダイナミックモードを選択し、ワインディングロードを走行する。すると大きくうねるような路面でもボディの上下動はぐっと抑えられ、安定感の強いフォームを保ったままコーナーに進入。4輪は執拗に路面を捉え続けるので神経質な挙動は示さず、舵角一定のままきれいな軌跡を描いてコーナーをクリアしてくれる。

その洗練されたコーナリングマナーは、ドライバーに強い安心感をもたらしてくれるはずだ。

画像: スポーティかつ上質な仕上がり。各部のディテールがRSモデルならではのこだわりを表現する。

スポーティかつ上質な仕上がり。各部のディテールがRSモデルならではのこだわりを表現する。

目を見張るダイナミクス、時代の先頭を走るクワトロ

エンジンの反応も現代的で洗練されている。低回転域でアクセルペダルを素早く踏み込むと、回転数が上昇するよりも早くトルクが立ち上がるターボエンジンらしいキャラクターながら好レスポンス。ターボラグもほぼ感じない。

しかも、ボトムエンドから中回転域までは完璧なフラットトルクで扱いやすい。一方で4000rpmを越えると、パワー感がぐっと上向きになり、選択したギア次第では暴力的な加速を披露する。

穏やかに走っている時のジェントルな振る舞いからは想像もできない、RSモデルらしい過激な一面が浮き彫りになる瞬間である。

つまり、日常的な領域ではA4を凌ぐ快適性を味わえるとともにスポーツドライビング時は目を見張るようなスピードを味わえる。

この二面性こそ、初代RS2から受け継がれてきたRSモデルの遺伝子。RS4アバントはスペースユーティリティも極めて高く、フルタイム4WDだから、たとえばスキーエクスプレスにもうってつけだ。この万能性も、RSモデルならではの伝統だろう。

アウディがオンロード走行を主眼に置いた世界初のフルタイム4WDモデル“クワトロ”を発表したのは1980年のこと。以来、連綿と開発を続けるとともに採用モデル数を増やしていった結果、全販売台数に占めるクワトロ比率は50%に迫るとされる。

とりわけ注目されるのが、ハイパフォーマンスモデルにおけるフルタイム4WDの有用性だ。最高出力が500psに迫ると、たとえ滑りやすい路面でなくとも後輪駆動のみではトラクション不足が目立つようになる。メルセデスAMGやBMWに4WD仕様が増えているのはこのためだが、それを思えば時代がクワトロに追いついてきた、と言えるかもしれない。

いや、歴史と伝統の上にあぐらをかいているだけがアウディRSモデルの現状ではない。RS4アバントと同様、近年にデビューしたRS Q3、RS3、TT RS、RS5などは、いずれも快適性が劇的に向上している。何度も繰り返すが、その乗り心地の良さは時として標準モデルをしのぐほど。

ネッカーズルムに本社を置き、RSモデルとR8の企画/開発を担うアウディスポーツ社は、そのブレイクスルーを見つけ出したようだ。今後も、続々と登場するであろうRSモデルに注目したい。(文:大谷達也)

画像: 先代モデルの4.2L V8エンジンから新型は2.9L V6ツインターボエンジンに一新。バンク間にターボが2基納まる。最高出力331kW(450ps)、最大トルク600Nm。

先代モデルの4.2L V8エンジンから新型は2.9L V6ツインターボエンジンに一新。バンク間にターボが2基納まる。最高出力331kW(450ps)、最大トルク600Nm。

画像: アバントならではの高いユーティリティ性も大きな魅力。ラゲッジルーム容量は標準状態で505L。

アバントならではの高いユーティリティ性も大きな魅力。ラゲッジルーム容量は標準状態で505L。

アウディRS 4 アバント 主要諸元

●全長×全幅×全高=4780×1865×1435mm
●ホイールベース=2825mm
●車両重量=1840kg
●エンジン=V6DOHCツインターボ
●排気量=2893cc
●最高出力=450ps/5700-6700rpm
●最大トルク=600Nm/1900-5000rpm
●トランスミッション=8速AT
●駆動方式=4WD
●車両価格=1196万円

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