『Playback』(12)や『THE COCKPIT』(14)、そして昨年公開された『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督が、YCAM (ワイカム/山口情報芸術センター)の研究開発チーム・YCAMインターラボと協働し作り上げた『ワイルドツアー』。
山口県山口市を舞台に、採取した植物のDNAを解析し植物図鑑を作るという実際にYCAMでおこなっているワークショップを物語の出発点として製作。そこで出会った10代の若者たちが、山や海へ“新しい種”を求めて探索しながら自然と共に成長していく物語。
ほぼ演技経験の無い10代の中高生たちが役者として参加し、三宅監督と出演者で共に脚本や演出を考えながら撮影を重ねたという。
フィクション作品でありながら、時に彼らのナマの成長の記録も映し出された、どこにもない珠玉の青春映画となっている。
フレッシュな10代の若者と一緒に仕事をした感想や撮影を通して気付いたこと、更に好きな映画監督やハリウッドスターについて語った三宅監督のインタビューをお届けします。

【ストーリー】

舞台は山口県山口市にあるアートセンター。大学1年生の中園うめ(伊藤帆乃花)は、“山口のDNA図鑑”というワークショップにファシリテーター(進行役)として参加している。自分が暮らす街の様々な場所を参加者達が歩きまわり、どんな植物が生えているのかを調べて図鑑を作るというのがこのワークショップの課題。ウメは中学3年生のタケ(安光隆太郎)とシュン(栗林大輔)を連れ、“新しい種”を求めて近くの森を探索するが…。

画像: 【ストーリー】

映画作りを通して役者やスタッフと一緒に面白いことを発見していきたい

ーーYCAM(ワイカム)で実際に行われているワークショップを基にしたという今作ですが、物語の内容はどのようにして作っていかれたのでしょうか?

「まず僕自身がYCAMの色んなプログラムに参加してみたんですけど、その中のひとつにDNA図鑑を作ろうというバイオアートのプロジェクトがあったんです。DNAといえば『ジュラシック・パーク』を思い出すわけで、そんなヤバいことできちゃうの?と(笑)。それで気になって参加してみたんですけど、近くの森で植物を採取して、カッコイイ科学道具を使って採取したものをすりつぶすみたいな、東京にいたらできなかったようなことを経験できて。それでこの経験をモチーフのひとつにして脚本を書いていきました。

あと、昔はDNAを調べるのにウン千万と莫大なお金がかかっていたのが、最近は凄く安価でできるようになったらしく、それって映画と一緒だと思ったことに気持ちを動かされたところもあります。僕が最初に映画を作ったのは中学生の時で、放送部のビデオカメラを使って撮ったんですけど、もし僕が100年前に生まれていたらそれは無理だった。そんな風にDNAの話と映画作りが僕の中でリンクしちゃったんですよね」

ーーまさかDNAと映画作りがリンクするとは思いませんでした(笑)。ワークショップにはどんな方が参加されていたのでしょうか?

「地元の小学生から60代ぐらいまでの幅広い層が来ていて、中でも学生達はみんなワクワクした良い顔をしていました。色んなことを知らない人同士で発見する喜びを共有できたことが凄く刺激になって。そういうことも含めて面白い発見でした」

画像1: 映画作りを通して役者やスタッフと一緒に面白いことを発見していきたい
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ーーちなみに先ほどおっしゃっていた“カッコイイ科学道具”というのが凄く気になるのですが(笑)。

「YCAMには3Dプリンターで作ったオリジナルの道具とか、採取したDNAを解析するための様々な機材があったんですけど、そういうのに心がくすぐられました。『ミッション:インポッシブル』シリーズや『007』シリーズでスパイ道具のようなガジェットが登場するとめちゃくちゃテンションあがりませんか? 僕そういうの大好きなんです(笑)」

ーーわかります(笑)! そういうワクワクに加えて甘酸っぱい恋愛も展開されているので、青春映画としても楽しめました。

「念願のティーンエイジャーラブコメになりました。彼らと接していると、当時自分がその年齢だった時にはわからなかったけれど、毎日をめちゃくちゃ真剣に生きていて、すごいかっこよくて。受験や学校での人間関係で悩んでいたり、初めてちゃんと人を好きになったり。苦しいことも楽しいこともいっぱいあって。そういえば撮影中に“好きなコいるの?”と彼らに聞いても絶対に教えてくれなかったです(笑)。名前を聞いたとしてもそのコのこと僕は知らないのに!」

ーー好きなコがいても教えてくれないって言うのは凄くリアルですね(笑)。恋してるコたちがみんな可愛かったです。
「あの年齢だとお互いの距離が1㎝とか5㎝近づくだけでビビットに反応できるんですよね。もっと幼いと逆にべたべた触ったりして動物に近いというか。中高生は動物と人間の間ぐらいの感じがして、荒々しい部分もあるし、めちゃくちゃ繊細な部分もある。その姿を見て“ワイルドだな”と思ったんです」

ーータイトルの“ワイルド”はそこからきていたんですね。ちなみにドキュメンタリーじゃなくフィクションにしたのは何故ですか?

「お芝居じゃないと出てこない人間の側面というのが絶対にあって、それこそ“恋に落ちる瞬間”はドキュメンタリーじゃ撮れないと思うんです。お芝居とかドキュメンタリーの手法とかいろんな方法を駆使して、日々成長して顔つきも変わっていく彼らを記録するのが青春映画の役割だし、この映画の目指すところでした」

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ーー彼らのお芝居をご覧になってどんなことを感じましたか?

「彼らは頭の回転が異常に早いので、1日か2日も一緒にいるとすぐに追いつかれて追い抜かされるような感じでした。シナリオを読んで“これだったらこう言ったほうが面白いんじゃないですか?”と色んなアイデアを出してくれましたし、どうやったら感情がちゃんとカメラに映るかを考えて、自分達でお芝居のやり方を微妙に変えてくるんですよ。お芝居と同時に演出もできてしまう。監督のクレジットに彼ら全員の名前を載せたいぐらいです(笑)」

ーー彼らと話した中で印象に残っていることがあれば教えて頂けますか。

「“どんな大人になりたいの?”と聞いたら“だらしなくない大人”って答えたのが印象的でした(笑)。それを聞いて僕ら大人は全員間違っていると思われてるのかなと。それはつまり今の世の中が間違ってるんだと言われている気がして、強烈な社会批判にも聞こえました」

画像4: 映画作りを通して役者やスタッフと一緒に面白いことを発見していきたい

ーー彼らに風刺的な映画とか撮って欲しいですね。

「ぜひ撮って欲しい! 彼らには攻めた作品を撮って貰いたいです(笑)」

ーー今作を撮ったことで新たにやりたいことができたのではありませんか?

「やっぱり僕にとっての映画の面白さは共同作業にあるなあと改めて感じました。バンドみたいな。俳優やスタッフと一緒に色んなことを考えながら、映画作りを通して面白いことを発見していきたいですね。あとやりたいことと言えば、僕はプロムが出てくるアメリカ映画に対抗して、日本流の新しい“最強のキラキラムービー”を作りたい。単純に10代と仕事するのは楽しいですし。『ワイルドツアー』はその一歩目です」

ハリウッド映画の楽しそうなメイキング映像に騙されて
この仕事に就いたようなところあります(笑)

ーー今までに大きな影響を受けた監督や、好きな海外俳優を教えて頂けますか。

「デンゼル・ワシントンが妙に好きで、出演作はほぼ全部観てると思います。中でもトニー・スコット監督と仕事した『マイ・ボディガード』『デジャブ』『アンストッパブル』の3本が特に好きです。彼は僕にとってのヒーロー。あと、年々リチャード・リンクレイター監督の映画が好きになってきてて、『6才のボクが、大人になるまで。』や『エブリヴァディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』なんか最高でした。リンクレイターの作品を観ると、どれも俳優やスタッフ達と一緒に映画作りを楽しんでるのが伝わってくるんです。

アメリカ映画に憧れてしまうのはまさにそこで、例えばスティーヴン・スピルバーグ監督の『宇宙戦争』のメイキングを見ると、爆発シーンの撮影でトム・クルーズが危険な場所を走り抜けてカットがかかったら“イエーイ!”なんてスタッフ達が楽しそうにしていて。それを見て “なんて楽しそうなんだ!”と(笑)。正直な話、ハリウッド映画の楽しそうなメイキング映像に騙されてこの仕事に就いたようなところありますから(笑)」

ーー三宅監督オススメの“メイキングが面白い映画”を教えて頂けますか。

「パッと思い浮かぶのは、ジャド・アパトー監督作の『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』です。あの作品って『カポーティ』や『フォックスキャッチャー』を撮ったベネット・ミラーが監督補を務めてるんですよ。メイキングをみると、例えばジャド監督が自分の妻でもあるレスリー・マンさんを演出したあとに、ベネット監督がレスリーさんに近づいて“さっきの演出は違うから無視したほうがいい”みたいなことを言ってて、レスリーさんがめっちゃ微妙な顔をしてるのが写っていて。

それを最初に見たときは“こんなの見せていいの?”とビックリして。そのうちジャド監督とベネット監督がケンカし始めるんですけど、よく見たら凄いロングショットなのに声が超綺麗に録れてるんです(笑)。“なんだよ! 嘘じゃん!”って騙されましたね。全部フェイクのメイキングだったんです(笑)。本編を作るだけでも大変なのにメイキングにまで気合いが入っちゃってる。頭おかしいなと思いましたけど(笑)。しかもその二人、本当はめちゃくちゃ仲良しらしくて。そういうのも含めて映画作りって面白いなと思います」

ーー是非、三宅監督にも今後ありえないぐらい気合いの入ったメイキングを作って頂きたいです(笑)。

「いつか全部やらせのメイキングを作ってみたいですね(笑)。ちなみに『きみの鳥はうたえる』のメイキングは、通常のメイキングならカメラが入らない様なところも色々撮っていて、これまた一味違う面白いものになってると思います。僕も、自分では覚えてなかったんですが、いろいろおかしな行動を取ってました(笑)」

ーー『きみの鳥はうたえる』は凄く好きな映画なので、メイキングもチェックしてみますね! では最後の質問になりますが、キラキラムービーの他にチャレンジしたいジャンルはありますか?

「大人のラブコメとか、SFにもいつか挑戦したいです。僕らはいま『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で描かれていた未来よりも先に来ていて、そろそろ次の未来を描いたSFが必要なんじゃないかなと思うんです。ZOZOTOWNの前澤社長に宇宙に連れて行ってもらって、宇宙でラブコメ作るってどうですかね(笑)。いや、冗談じゃなく真面目に!」

画像: ハリウッド映画の楽しそうなメイキング映像に騙されて この仕事に就いたようなところあります(笑)

(インタビュアー・文/奥村百恵)

『ワイルドツアー』
監督・脚本・撮影・編集:三宅唱
キャスト:伊藤帆乃花、安光隆太郎、栗林大輔 ほか
音楽:Hi’Spec
宣 伝・配給:岩井秀世
製作:山口情報芸術センター[YCAM]
3月30日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー
© Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

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