本場最高峰のAFT=全米プロダートトラック選手権は、750cc超の2気筒マシンでのトップカテゴリーと、450cc水冷単気筒マシンをベース車両とするサポートカテゴリー、洗練された2つのクラスで構成されますが、この車両規則はあくまでプロスポーツとしてのもの。様々な条件からここ日本でより親和性の高い、短距離オーバル = ショートトラックレーシングの現場がどのような構成なのかを知るには、普段目にする機会の少ない、全米各地のローカルイベントに注目する必要があります。というわけで本日は、本場アメリカンレースシーンでの "クラス分け" の妙についてご紹介しましょう!

乗り手のスキルレベルが先か、マシンスペック = "フォーミュラ" が先か。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。鳥が先か卵が先か、みたいな話、我が国の様々なカテゴリーのアマチュアレースシーンでは、参加者サイドからの要望によるところも多いようですが、 "ライダーの技術レベル = 速さ" を拠所としたクラス分けがわりと一般的です。対してこの種目の母国アメリカではどうなっているのでしょうか?

ヴィンテージ・モーターサイクルでのイベントに特化したレース団体、AHRMA = アメリカン・ヒストリック・レーシング・モーターサイクル・アソシエーションのルールブック (ダートトラックの項) を見ると、要求される仕様を事細かに列挙した厳密なクラス分けがなされています。当然ながら "ピリオドマッチング" = 時代考証として正しいかどうか、にも重きを置いていることがわかります。

さて、AHRMAはある種ガチの "ヴィンテージルール" ですが、続いては対極的お気楽アマチュアレースのご紹介。昨年この時期にも当コラムでサラっと取り上げた、ハーレーダビッドソン社のお膝元・ミルウォーキーで行われるインドア・ショートトラックレース "Flat Out Friday" のクラス分けです。コーラシロップを撒いたコンクリート路面のアリーナで競われる興味深いイベントで、今年は2月15日に開催されました。インビテーション (招待選手) によるプロクラスも組み込まれています。

画像: Flat Out Friday - X Games Replay | Harley-Davidson youtu.be

Flat Out Friday - X Games Replay | Harley-Davidson

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ハーレー本社が大きく影響力を持つこちらのイベントでは、近年アメリカ各地で流行の機運も高まる "フーリガン" カテゴリー・・・標準市販フレームをそのまま使ったストリートバイクのクラスも当然用意されます。一見 "なんでもあり" っぽい印象のこういった "お遊びクラス" でも、競技となったらしっかり約束事を明文化するのがなんとなく本場流。下のルールページも合わせてご覧ください。

市販状態で完成されたレーシングマシンが決して多くないダートトラックでは、工夫を凝らして大なり小なりマシンに手を加え競技車両を仕立て上げることが一般的です。そのため "ノーマル = ストック車両でのワンメイククラス" という普通なら気の利いた分類も、向いていない種目とも言えます。

画像1: 撮影: 中尾省吾

撮影: 中尾省吾

イコールコンディションを目指したノーマル = ワンメイク設定であっても、見えない部分でコッソリと (時にはルール違反の) アドバンテージを狙う輩は間違いなく一定数が現れます。それよりは下限の条件・・・ダートトラックらしいか否か (合致していればより安全で速い) を徹底させることの方が合理的でしょう。上のインドアレースでのルール "Full Framed" というのも同様の考え方です。

由緒正しきアメリカン・ローカルスタイルにならえばだいたい正しい?

前項で取り上げた大きく2つのクラス分けのスタンスは、前向きな意図のもと定められた、まさに厳密 vs お気楽とでもいうべき両極端ですが、どちらも定形 = フォーミュラを尊重していることは共通しています。ではより自然に、長い歴史の中で培われてきた、平均的なレギュレーションはどんな感じでしょう?

以下は全米各地のローカルイベントの中から、多くのエントラントが集う比較的大きなアマチュア・ダートトラックレースでのベーシックなクラス分けを、筆者主観で大まかに整理したものです。

まずは排気量ごとに
・マッドドッグ (狂犬) = 100 ~ 150cc程度のミニバイククラス
・150 ~ 230cc = 軽量なトレール車などをベースにした入門クラス
・250cc = 排気量以外は年式問わず (どこにいってもわりと扱いが雑)
・500cc = (レースによっては) リアモノショック不可、4バルブ不可、など
・アマチュアOPEN = 排気量制限なし "Run Whatcha Brung" ←いわゆるなんでもありクラス
・プロ/エキスパートクラス = 要プロライセンスの場合多し、賞金あり、近年なら450cc+

年代ごとのカテゴライズ (いわゆるヴィンテージカテゴリー)
・ダイナソー (恐竜) = 1951年以前、ブレーキレス
・クラシック250 = 1967年以前、ブレーキレス
・クラシック500~750sv = 1967年以前、サイドバルブ、ブレーキレス
・モダン250 = 1979年以前
・モダン500 = 1974年以前
・モダン750 = 1974年以前

ライダーの年齢・性別など
・ユース 50, 60, 80 = それぞれ排気量ごとの"キッズクラス"
・Vet 35yrs+ = 35歳以上
・シニアVet 50yrs+ = 50歳以上
・スーパーシニア 60yrs+ = 60歳以上
・プレミアシニア 70yrs+ = 70歳以上
・パウダーパフ (白粉はたき) = 女性限定のクラス

これら大きく3要素の掛け合わせで細かな分類がなされるのが一般的です。また人数の多少によっては、エキスパート/アマチュア/ノービスなど、スキルクラス制を採用する場合ももちろんあります。

画像2: 撮影: 中尾省吾

撮影: 中尾省吾

さてそのころ、日出ずる国ニッポンの我々 = FEVHOTSでは?

それぞれのクラス = カテゴリーごと、熱心な愛好家が相当数見込める本場アメリカのローカルスタイルとは、やはり長い年月の中で育まれた、層の厚いレースカルチャーがあってこそ成立するものです。恥じる必要もありませんが、正直言って日本は数十年遅れを取っているのが現実と言えます。

筆者が東日本を中心に主宰する我が国ダートトラックレース団体のひとつ "FEVHOTS" で、発足から7年目の今シーズン、我々が開催を見込んでいる・・・2台以上の希望があれば新たなクラスの追加はいつでも検討しますけどね・・・基本カテゴリーは、本場の流儀と日本の現状との間での熟慮の結果、以下のような7クラスでの展開となっています。

ユース / ビジネス / ホリゾンタルDT クラス
・様々な排気量のいわゆるキッズ = 若年層クラス
・スーパーカブその他 = ビジネスバイクでのダートトラック
・ホリゾンタル = 横型エンジンのマシン

マッドドッグLIGHTSクラス
・単気筒軽量級
・4ストローク174cc以下 / 2ストローク80cc以下 ※いずれもメイカー出荷時の排気量
・タイヤサイズ規定あり
※昨シーズンまでの "ライトウェイトクラス" から改称

スポーツマン250
・単気筒中量級
・空冷/水冷4ストローク公道市販車175~250cc
・水冷4ストロークレーサー150cc以下
・2ストローク単気筒レーサー100cc以下 など
・タイヤサイズ規定あり
※昨シーズンまでの "ミドルウェイトクラス" から改称

FEVHOTSプレミアシングルス
・単気筒マシンでの当シリーズ "トップカテゴリー"
・メイカー出荷時245cc以上
・タイヤサイズ規定あり
※昨シーズンまでの "オープンクラス" から改称

ノービス500 (新クラス)
・競技参加経験2年以下のライダーのための "入門クラス"
・最大排気量500cc以下

ヴィンテージツイン (新クラス)
・本場のダイナソークラス/500~750サイドバルブクラスに該当するもの
・HDスポーツスターなど750cc超の2気筒マシン

スーパーモトDT
・17インチスーパーモトスタイルのフルサイズ車両

画像1: 撮影: FEVHOTS

撮影: FEVHOTS

裾野の拡大に良さげな "ビギナークラス" を安全に成立させる難しさ。

FEVHOTSでは昨シーズン終盤に、新たな参加者からの希望に応え、入門クラス "ノービス500" を初めて設置しました。それまでの5年間は、新しい参加者はいきなり各排気量クラスでレースに出るしかなく、最初は各トップランカーたちに周回遅れにされるところからスタートするのが通例でした。

速い遅いはともかく、技術の未熟なライダー "だけ" で走るビギナークラスの設置より、トップとの差を知り最後尾からレース参加を始めて着実に進化する方がより安全とも言えますし、上級者との圧倒的な力量の差に意気消沈しつつ、具体的な目標とすることで成長を促す効果も狙う事も可能です。

画像2: 撮影: FEVHOTS

撮影: FEVHOTS

転ぶかもしれないライダーと、避けられないかもしれないライダーを、早い段階から一人でも減らすため、FEVHOTSでは毎週火曜日の練習走行日 "オープンプラクティス" にて様々な取り組みを行っています。特にここ最近の熱心な参加者は、新人なれどレース志向のメンバーが多く、毎回模擬レースと実践的トレーニングを繰り返す日々。7年目のシーズンインに向け、徐々にこのスポーツが我々の周りで進化と深化を遂げていることを実感できる、とても嬉しいひと時です。

正解はありません。長期的視点でよりよい方式を常に探るだけです。

いかがでしたか?我々の意図と工夫が功を奏したこともあってか?なくてか?ここ数年は参加者の意識と技術的なレベルも一段と高まりはじめ、我が国により安全で親しみやすいダートトラック・レースシーンを根付かせるための状況は、さらに一歩前に進んだような確かな実感を得ています。このスポーツに多少なりともご興味おありの方、軽〜く足を突っ込むのなら、今がまさに旬ですよ!多分。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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