モーターサイクルとそれを操るライダーの間には、一般的には両手・両脚・臀部(お尻)という五つの接点しかありませんが、スポーツする上でそれらをどのように動かし・機能させるべきか、腰を据えてじっくり考えてみるのも良いかもしれません。運転免許取得のために通う自動車教習所では、 "左右の太腿でしっかりタンクをはさんで人馬一体になるべし" と教わったような?遠い記憶が蘇りますが、可能な限り高速で周回したいスポーツライディング、特に旋回方向が反時計周りのみで四肢の動作を単純に切り分けやすいダートトラック走法においては、どのようなボディアクションを意識するべきでしょうか?というわけで本日は "ソレっぽく乗るための下半身ネタ" を考えてみましょう!

定石のボトムホールド。しっぱなしはまるっきり全然しないのとホボ同じ?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。走って曲がり、加速・減速・止まるというまったくの基本運転操作を考えるうえで、まずはマシンと仲良く = 一体感を得ることこそが重要、なのは間違いありません。教習所や基礎的なライディング TIPSで言われる "ニーグリップ" は、ある意味とても理解のしやすい指針のひとつですが・・・。

滑るマシンの向いている方向・総体としてのトラック上での運動方向・ライダーの体勢、それぞれの軸すべてを意図的に "ズラした" 状態で巧みにバランスを取り、グイグイと前進していくダートトラックライディングでは、例えば片側フットペグを踏み込んで行う "入力" のためには、それと対になる "抜力 = 文字通り力を抜くこと" が極めて重要な動作です。

自転車の左右ペダルを交互に踏んで前進する様子を想像してみてください。力はいったん抜かなければ加えられません。

以前ご紹介した、ダートトラックのターン動作を4つの段階に切り分ける、"コーナーリングダイアグラム" の考え方。"入力と抜力" というキーワードから、もう一度分析してみるのも一興でしょう。

"more than enough is too much" < 過ぎたるは及ばざるが如し。

左右への入力量の調整 = 加重配分を誤れば、よりスムーズで、結果としてアグレッシブなライディングを実現するまでの道のりはさらに遠のきます。ガチガチに、一点集中的に力を入れ過ぎても、適切な抜力→改めての入力までにはタイムラグが生じるでしょう。スプリント種目たるショートトラックでのソレの蓄積は・・・自ずとライダーのレースリザルトに影を落とすに決まっています。

ことダートトラックライディングに関して、十分な加速からしかターンでの減速モーションは生み出せません。進入で出した足を立ち上がりで仕舞うのも、入れた力を抜くのも、考え方は共通です。

単なる周回動作としてオーバル全体を見れば、これほど単調で退屈な種目もないかもしれませんが、200mトラックでのわずか10数秒足らずの1周の中でさえ、2度のターン進入→脱出モーションと、そのための4回の加重移動 (右→左→右→左!!!!) があり、実際休む間などありません。ひとつひとつの動作の針穴を通すような正確性ももちろん重要です。さらにその上で他車と競り合い勝たねばなりません。実際は極めて複雑で刺激的なカテゴリーなのです。

ロードレースで流行の内足ブラブラや外足外しもおおよそ同じ理屈のはず。

ではまずライダーが進入していく姿を観察してみましょう。マシンがバンクを始めると、自然な体勢として鉄スリッパーを履いた左足を、膝を曲げ高い位置に保持したまま接地させます。ハンドルバーへと伸びる両腕はカウンターステア量とフロントエンド寄りのバンク角調整のために繊細に働いています。つまりこのとき車体全体のバランスは、残された右下半身と臀部によって保持されています。

画像1: DW Media / Dave Walters

DW Media / Dave Walters

どうしたって左右の下半身の仕事を入れ替えることは・・・できませんね。外足加重というと、太腿でのフューエルタンクへの押さえ込みやら、くるぶしでのホールドやらがしばしば取り上げられますが、腰から爪先までの右下肢全体をしなやかに使ってコントロールするイメージです。必ずしもガッチリ車体を抑え込む必要はありません。

続いてターン脱出からの加速シーンをチェックしましょう。フロントタイヤはほぼ進行方向を向いた状態、パワーを持て余したリアタイヤが外に向けて横滑りを始めています。起き上がろうとするマシンをいなしながら前に進めるため、臀部を大きく車体左側にずらしてバランスを取り (セオリーに反してステップにはおそらく足を上げていませんが) 左下肢全体で "車体を正立状態に押し立てて" います。これこそまさに上級者のスタンダードなライディングフォームです。

画像2: DW Media / Dave Walters

DW Media / Dave Walters

このとき右側ステップには、さして力は加わっていないはずです。コラム冒頭の写真はハイサイド寸前のギリギリを狙った超ハイレベルなバランス状態ですが、右足はこのように離れていても、しっかりと車体を保持していることは感じ取っていただけるのではないでしょうか。

立ち上がりでは車体左側に全体重を移しておかなければ、リアタイヤのグリップレベルが不用意に回復してしまう可能性があること、車体を起こしていくにはターン進入のような押さえ込み動作がほぼ不要なことがその主な理由だと言えます。

いかがだったでしょうか?すでに様々なスキルレベルでダートトラックライディングに親しんでおられる方も、興味があって写真や動画を眺めることがお好きな方も、ターン進入と脱出それぞれのシークエンスで大きなボディアクションが必要とされる、このスポーツの激しいパフォーマンスと、入力 ⇄ 抜力のしなやかな関係にもフォーカスしていただければ、これからさらに新たなステージへと歩を進めていただけるのではないかと思っています。

次回2/8(金)をもって、毎週1回更新の当コラムはなんと連続50回、ホボ1年を迎えることとなるようです。日頃よりの多くのファンの皆様のご愛顧とご指導ご鞭撻に感謝。節目の回のトピックはまだ未定ですが、引き続きご高覧いただければ幸いです。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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