アウディブランド初の電気自動車となるeトロンが、いよいよ街を走り始める。もちろん日本導入も予定されている。今回は、それに先駆けてこの先進的なモデルに試することができた。そこにアウディらしさはあるのだろうか。そして他の電気自動車とはどのような差別化がなされているのか。(文:千葉知充/写真:アウディ TEXT Tomomitsu Chiba MM PHOTOS Audi JAPAN)
画像: 走行時に最大13,300rpmで回転するローターは電磁銅板と軽量かつ高純度アルミニウムから構成される。それを冷却するためシャフト内部にクーラント液が流れ温度が180℃を超えないよう管理されている。

走行時に最大13,300rpmで回転するローターは電磁銅板と軽量かつ高純度アルミニウムから構成される。それを冷却するためシャフト内部にクーラント液が流れ温度が180℃を超えないよう管理されている。

いよいよアウディの電動化モデルが本格的に始動した

アウディの電動化戦略が明らかになってきた。まずはSUVのeトロンを皮切りに2019年にeトロンスポーツバック、2020年には電気自動車のコンパクトモデル、そして2020年以降にトロンGTを生産する。そして2025年までにラインナップすべてに電動化モデルを用意し、その比率を全体の1/3にすることを目標にしている。それが実現すれば、約80万台の電動化モデルを販売することになる。さらに年までに全工場のCO2ニュートラル化を目指すとも表明した。

画像: アダプティブエアサスペンション装着車は車高を76mmの幅で調整することが可能である。オフロード走行時に最低地上高は172mmを確保している。

アダプティブエアサスペンション装着車は車高を76mmの幅で調整することが可能である。オフロード走行時に最低地上高は172mmを確保している。

さてそんなアウディの本格的な電動化は、eトロンから始まる。この電気自動車SUVは、WLTPドライビングサイクルで400km以上の航続距離を持ち、19年よりプラグ&チャージ機能で充電ステーションに駐めるだけで自動的に認証されて充電器が起動することにより、1回の充電で約の航続距離を延長できるという。

画像: バーチャルコックピットに加え8.6インチと10.1インチのMMIタッチ式ディスプレイ、さらにヘッドアップディスプレイも標準装備。またamazonの音声アシスタンスサービス「alexa」にも対応する。

バーチャルコックピットに加え8.6インチと10.1インチのMMIタッチ式ディスプレイ、さらにヘッドアップディスプレイも標準装備。またamazonの音声アシスタンスサービス「alexa」にも対応する。

あえて特別感を出すことなく普通のSUVにしか見えない

外観を見てもアウディの電気自動車が主張する差別化は、八角形のプラチナグレーのシングルフレームグリルぐらいだ。ただしそれも含めて“電気”を主張するようなデザインではなく、どこからみても“普通のSUV”である。

画像: eトロンの安全運転支援機能の核となるのはzFAS。最大5基のレーダーセンサー、6台のカメラ、12個の超音波センサー、1基のレーザースキャナーから情報を取得し、車両周囲の正確な状況を計算し続けている。

eトロンの安全運転支援機能の核となるのはzFAS。最大5基のレーダーセンサー、6台のカメラ、12個の超音波センサー、1基のレーザースキャナーから情報を取得し、車両周囲の正確な状況を計算し続けている。

実はアウディの狙いもそこにあるようで、こうしたデザインにあえてしているということだ。たしかにこれから電動化モデルが増えるそのたびにデザインで“電気”を主張してもアウディブランドとしてまとまりがなくなるような気がする。これは正解だ。ただブレーキキャリパーやロゴにはオレンジが使われていて、これがeトロンのキーカラーとなっている。

普通のSUVに見える外観だが、オプションのバーチャルエクステリアミラーはその中でも特別感がある。これはアウディの市販車として世界初採用で、1280×1080ピクセルの解像度を持つ小型カメラが捉えた左右後方の画像を有機ELで映し出す。

バッテリーを床下に敷き詰めることで前後重量配分は50:50となったが、車両重量は、約700kgのバッテリーの分だけ重く2490kgとなる。ちなみにそのサイズは長さ2.28m×幅1.63m×高さ0.34mで、36セルモジュールで構成され、各モジュール(靴箱ほどの大きさ)に2層構造で12のパウチセルを搭載しているという。

画像: まるでこの下にエンジンが収まっているように見えるがこれは収納コンパートメントの蓋。

まるでこの下にエンジンが収まっているように見えるがこれは収納コンパートメントの蓋。

ブーストモードを起動させるとフルパワーを引き出せる

ボディサイズは、全長4901mm、全幅1935mm、全高1616mm、ホイールベースは2928mmでQ7よりも少し小さいがほぼ同じセグメントとだと思っていいだろう。またラゲッジルーム容量は660Lを確保、リアシートバックを倒せば最大で1725mmまで拡大できる。またフロントハッチ下にも60Lの収納を確保する。

画像: オレンジに塗られたブレーキキャリパー。減速時は0.3Gまで電気モーターがエネルギー回生を担当する。

オレンジに塗られたブレーキキャリパー。減速時は0.3Gまで電気モーターがエネルギー回生を担当する。

電気モーターは、フロントとリアにそれぞれ搭載し、システム出力300kW、最大トルク664Nmを発生する。フロント側のモーターよりもリアのモーターの出力が大きいのは、後輪駆動のようなダイナミックな走りの実現のためである。0→100km/h加速は5.7秒(いずれもブーストモード時)、また最高速は200km/hに電気的に制限される。ちなみにブーストは、Sモードにしてアクセルペダルを床まで踏みつけると起動し、それが8秒間だけ持続する。

画像: ブースト時は300ps、664Nmを発生させることができる。

ブースト時は300ps、664Nmを発生させることができる。

国際試乗会は、アラブ首長国連邦のアブダビで開催された。そこで一般道、高速道路、ワインディングロード、オフロード、そして一部砂で埋まっている砂漠の中の舗装路でテストドライブした。

最初に気になったのがバーチャルエクステリアミラーだ。どうしても本来サイドミラーがある場所を見てしまい、さらに後続車との距離感が上手く掴めず違和感が残った。しかしこのメリットは夜でも後方視界が確保できることなどにある。慣れてしまえば便利だとは思うが、オプションなので装着するかしないかは価格次第だろう。ただ空力には貢献大でバーチャルエクステリアミラー装着車のCd値は0.27とクラス最高を実現、非装着車は0.28である。

減速エネルギーをバッテリーに貯める楽しさも味わえる

走り出しは、電気自動車特有のスルスルと音もなくスタートする。速度を上げていっても終始静かでジェントルな印象だ。外観と違ってその走りはとても未来的なものだ。サスペンションもよく動き路面の粗さを乗員に伝えることもなく、乗り心地はとても快適である。試乗車は21インチタイヤだったが、うまく履きこなしていたことにも驚かされた。

画像: 電動4輪駆動システムは、滑りやすい路面や高速コーナリング中にスリップが発生する前に予測的に行われる。システムが走行状況を検知して電気モーターがトルク配分するまでの時間はわずか0.03秒である。

電動4輪駆動システムは、滑りやすい路面や高速コーナリング中にスリップが発生する前に予測的に行われる。システムが走行状況を検知して電気モーターがトルク配分するまでの時間はわずか0.03秒である。

さらにしっかりとしたボディ剛性も感じられる。たぶんこれは重量物であるバッテリーが床下に敷き詰められたことによる効果だろう。当然、クワトロシステムもそれに貢献している。eトロンは通常は後輪駆動で、必要に応じて瞬時に4輪にトルク配分するのだ。

減速時は、0.3Gまでは電気モーターがエネルギー回生を担当し、従来のブレーキを使わない。これは減速シナリオの90%に相当する。つまりほどんどの場合減速エネルギーがバッテリーに充電されるというわけだ。つまり一番効率のいい走りは、従来のブレーキを使わずに走ることなのである。

画像: 通常はリア駆動だが必要に応じで前輪にトルク配分する。

通常はリア駆動だが必要に応じで前輪にトルク配分する。

eトロンは、欧州とは違う日本の充電インフラなども含め不確定要素がまだ多いのも事実である。ただアウディの電動化戦略はまだ始まったばかりで、モデル数は確実に増えていく。今後も注目だ。

■アウディe-tron 55 quattro 265kW 主要諸元
●Motor:最高出力 265kW(ブースト時300ps) 最大トルク 561Nm(ブースト時664Nm)●ディメンジョン&ウェイト:全長×全幅×全高 4901×1935×1629mm、ホイールベース 2928mm、トレッド前/後 1655/1652mm、車両重量 2490kg、ラゲッジルーム容量 660/1725L ●シャシ:駆動方式 4WD、トランスミッション 1速AT、ステアリング形式 ラック&ピニオン、サスペンション形式 前5リンク/後5リンク、ブレーキ 前Vディスク/後Vディスク、タイヤサイズ 255/55R19、●Performance:最高速 200km/h、0→100km/h加速 6.6秒(ブースト時5.7秒)※すべてEU準拠

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