写真の新たな媒体、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)この連載では写真家・中野幸英さんが、SNSから生まれた新たな文法=リテラシーを実際に投稿者と会って検証・共有していきます。この記事は月刊カメラマン誌で紹介したものです。

鶴田さんのSNSはこちらから

画像: 鶴田さんのSNSはこちらから

老舗の花屋

仕事で花やグリーンが必要な時に、僕がよく頼むのが東京の恵比寿神社のそばにある「エビス花園」だ。店頭に立つ泰司さんは無愛想だけど、これまで冬に桜が必要になったり、急に大きな観葉植物を探すような時も丁寧に対応してくれた。お店のSNSは彼の担当だ。

エビス花園は70年前に彼のおじいさんが創業。生け花教室を併せ持った昔ながらのお花屋さんとして、母親と弟と家族でお店を切り盛りしている。

近年は恵比寿が住みたい街のNo.1になったり、若い人向けの新しい花屋さんが一気に増えたりと、とても競争が激しい。

自分も仕事で店舗のSNSやWEBについてアドバイスを聞かれるのだが、実際SNSでどれほど集客できるのか、売り上げに結びつくのか、いまいち確証は得られていない。いわゆるリアル店舗でのSNSは、未だ手探りを続けているアカウントがほとんどではないだろうか。

そんな中で泰司さんは同年代に様々な友人を持ち、自転車やトレイルランニング、DJ、カメラ…と趣味を楽しむ器用で活動的な人だ。

SNSでの店舗展開もかなり早かった。そんな彼にこれまでの投稿から得た感触を聞きたくて、インタビューに応じてもらった。

効果が1%

久しぶりに顔をあわせると彼は最近、音楽製作にはまり、機材を買うためにカメラはいったん、すべて売り払ってしまったという。本当に器用すぎる花屋さんだ。

「SNSを見てやってくる人の割合は1%というところです」と彼は言い切った。観葉植物、多肉植物、ドライフラワー、セラミックの鉢…と流行を押さえ、SNSを使って遠方にも配達展開をしていたが、商売上ではメインではないという。

近隣の競合店の影響で飛び込みでのお客は減り、収益に換算すればお花を買う人は生け花教室か近所の人がほとんどで、SNSはお店の場所を調べることに使われていること程度だと話してくれた。

ではお店にとって今、SNSはどんな意味を持つだろう。彼の投稿するお店のInstagramではお花などの写真が定期的に上がっている。

キャプションなども最低限に、ほとんどが店の奥の灰色のドアの前で、シンプルに商品やアレンジを撮ったものだ。数年前は写真にハマり、撮影の技術もある。

個人のアカウントでも面白い写真は多いが、お店のアカウントでは控えめな投稿に筆者には思えた。そう彼に聞くと「仕事はfever(熱)とは違うと思うんです」と自分のポリシーを話し始めた。

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