日本はもとより世界の陸・海・空を駆けめぐる、さまざまな乗り物のスゴいメカニズムを紹介してきた「モンスターマシンに昂ぶる」。復刻版の第36回は、「パリダカ」ことダカール ラリーで活躍している日野 レンジャーを紹介しよう。(今回の記事は、2017年3月当時の内容を基にしています)

世界一過酷で危険なダカールラリーに参戦

画像: タイトル画像:今も世界一過酷なラリーの異名をとるダカール ラリー。初参戦以来、全戦完走・圧倒的入賞率を誇り、2017年に4年連続カミオン/10L以下クラスで1-2位を遂げた日野レンジャー。

タイトル画像:今も世界一過酷なラリーの異名をとるダカール ラリー。初参戦以来、全戦完走・圧倒的入賞率を誇り、2017年に4年連続カミオン/10L以下クラスで1-2位を遂げた日野レンジャー。

最近は注目度が低いが、かつては人気を誇った「パリダカ」こと、ダカール ラリー。この過酷なラリーで勝ち続けている日本のトラックがある。

パリをスタートしてアフリカ・セネガルのダカールまで、道なき荒野や砂漠を約1万km走破する、世界一過酷と称された「ダカール ラリー」。1980〜1990年代は「パリダカ」の愛称で、F1やル・マン24時間耐久レースに並ぶメジャーなモータースポーツだった。ところが、アフリカ諸国の内乱や内戦などによってコースや日程が度々変更され、近年はあまり注目されなくなってしまった。

そんな中、1991年の初参加以来、全戦完走し高い確率で入賞している日本車が、カミオン部門のリトルモンスターこと「日野レンジャー」だ。(カミオンとは、トラックという意味のフランス語)

ダカール ラリーの参加車両には当初からカミオン部門があり、日本を代表する、バス/トラック メーカーの日野自動車が参戦したのは1991年の第13回大会からだった。初参戦で中型トラックのレンジャーを4台参加させ、1台が修理中に起きたドライバーの負傷でリタイアしたものの、3台が9100km/21日間のレースを見事完走した(カミオン部門7、10、14位)。

画像: レンジャー用ではなく、大型バス/トラック用A09C-TIエンジンを搭載する。本来、排出ガスの浄化を目的としたコモンレール燃料噴射装置+インタークーラー付きターボのチューンで、低回転でも強大なパワーを発揮する。

レンジャー用ではなく、大型バス/トラック用A09C-TIエンジンを搭載する。本来、排出ガスの浄化を目的としたコモンレール燃料噴射装置+インタークーラー付きターボのチューンで、低回転でも強大なパワーを発揮する。

ベース車体はレンジャーの消防車用/FT3H型で、これに幌ボディを架装。エンジンは6.5Lの直6インタークーラー付きターボでパワースペックは240ps/70kgmという仕様だった。カミオン部門での強豪メーカーは、ペルリーニ(イタリア)、タトラ(チェコ)、メルセデス・ベンツ(ドイツ)などで、排気量が倍以上もある550ps超級のモンスターが居並ぶ。その中でレンジャーは、「リトルモンスター」と呼ばれた。

翌1992年には4台全車が完走し、さらに上位での入賞を果たす。1994、1995年には連続してカミオン部門で準優勝し、優勝に狙いを定めた。ダカール ラリーは、サハラ砂漠のパウダーサンドが行く手を阻む難所として知られるが、砂丘走行においては軽量なレンジャーの車体が、大排気量/高出力のライバルのモンスターマシンより有利だった。

そして1997年、前年から搭載された新エンジンJ08C-TIの改良もあり、カミオン部門史上初の1-2-3位独占という快挙を達成した。市販車エンジンJ08CをチューンしたTIは、8L 直6 SOHCインタークーラー付きターボで420ps/120kgmを低回転から叩き出した。

また、出力より重視されたのが足まわりの改善で、この年は土漠(荒地)走行の割合が多い高速コース(150km/hにも達する)となるため、車軸真上にキャビンが載るキャブオーバートラックでは、ドライバーにダメージを与えないサスペンションセッティングが重要となる。そこで、しなやかな足まわりに改善したことが、1〜3位独占につながったのである。その後も上位での100%完走は続くが、アフリカ諸国の内戦はレースに重大な危険を及ぼす状況になり、アフリカを舞台にしたパリダカは閉幕した。

画像: 1991年、パリ〜トリポリ〜ダカールに初参加。ラリーのノウハウなど皆無な中、4台中3台の完走を果たした。ベースはレンジャーの四駆(消防車用)FT3Hに幌ボディを架装し「リトルモンスター」と呼ばれた。

1991年、パリ〜トリポリ〜ダカールに初参加。ラリーのノウハウなど皆無な中、4台中3台の完走を果たした。ベースはレンジャーの四駆(消防車用)FT3Hに幌ボディを架装し「リトルモンスター」と呼ばれた。

リトルモンスター、日野 レンジャーがいよいよ南米に上陸!

2009年、ダカール ラリーの名称のまま舞台を南米アルゼンチン〜チリに移し、ラリーは再開される。日野は初回こそペナルティタイムで優勝を逃すが、2010年以降2016年まで7年連続で10L未満のクラス優勝を続け、2017年のパラグアイ〜ボリビア〜アルゼンチン ラリーを迎えた。結果は8年連続クラス優勝。4年連続クラス1-2フィニッシュだけでなく、カミオン部門総合でも久々に8位入賞の快挙を遂げた。

最新のレンジャーは、1クラス上の大型トラック/プロフィア用のA09C-TI型エンジンを搭載。10L未満のクラスに留めながら、新技術のコモンレール式インジェクション(燃料をいったん頑丈な金属管に高圧で蓄えてから、インジェクターに均一に供給する)を採用。燃料噴射の圧力やタイミング、回数などを電子制御でよりきめ細かくコントロールでき、ディーゼルエンジンの燃焼効率を向上できる。元々は燃費向上と排気ガス浄化の技術)と大容量インタークーラー付きターボで、市販車エンジンの1.8倍超の出力と1.5倍のトルクを発生させる。

画像: 初参戦からわずか6年後の1997年、第19回大会でなんとカミオン部門1-2-3位(左端が優勝車)という大快挙を歴史に刻んだレンジャー/FT1JGB-LD。

初参戦からわずか6年後の1997年、第19回大会でなんとカミオン部門1-2-3位(左端が優勝車)という大快挙を歴史に刻んだレンジャー/FT1JGB-LD。

また、パワーアップと高速化に対するリアボディの強化と足まわりの最適化も図られた。1997年の優勝車と比較すると、ブレーキはドラム式からベンチレーテッドディスク+4ポッドキャリパーに進化し、スチールホイールは鍛造アルミ製になった。重要なサスペンションは、テーパーリーフスプリングとコイルオーバーショックアブソーバーにコーナーコントロールバルブを組み合わせ、全地形に合わせて細かなセッティングが可能になった。これにより、フロントスタビライザーを廃止し、バネレートも極限まで下げ、しなやかさの追求に成功している。

モータースポーツも他のスポーツ同様、切磋琢磨の継続が最も大切だ。初出場から26年間、サポート規模の大小こそあれ、地道にレース活動を継続している日野自動車を称えたい。(文 & Photo CG:MazKen)

■H06C-TI(1991年仕様) エンジン諸元

●形式:水冷・直列6気筒/OHV 12バルブ+ターボ(インタークーラー付き)
●排気量:6486cc
●燃料供給方式:機械式燃料噴射装置
●燃料:軽油
●最高出力:240ps/2700rpm
●最大トルク:70kgm/1600rpm

■A09C-TI(2017年仕様) エンジン諸元

●形式:水冷・直列6気筒/SOHC 24バルブ+ターボ(インタークーラー付き)
●排気量:8866cc
●燃料供給方式:電子制御(コモンレール式)燃料噴射
●燃料:軽油
●最高出力:650ps/2200rpm
●最大トルク:230kgm/1200rpm

編集部追記:日野 レンジャーは現在もダカール ラリーに参戦を続け、2020年にはクラス11連覇を達成。29回連続完走と、トラック部門総合でも4年連続トップ10入りを果たしている。

画像: 2020年にはクラス11連覇を達成した日野 レンジャー。

2020年にはクラス11連覇を達成した日野 レンジャー。

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