エンジンをうなるほど回し、マシンと体を捻ってしならせつつ周回するのもダートトラックライディングの特徴ですが、運動の理屈はごくシンプルとはいえ車体への負荷 = ダメージはなかなかのもの。街乗りオートバイなら空気圧チェックとオイル交換、チェーン注油程度でしばらく走れるのでしょうが、激しく扱われるスポーツ用品はそういうわけにもいきません。本日はこれまでの筆者の経験から、ダートトラッカーならではともいえる、日々乗るごとのチェック項目を確認してみましょう。

ありとあらゆるネジを疑え。ついてるものは残らずゆるみます。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ターン進入を目がけて、他カテゴリーと比べ高いエンジン回転域を常用するダートトラックマシンは、どんなに気を配って組み付けたとしても、"振動によるネジのゆるみ"を完全に排除することが非常に困難です。そのまま放置すればパーツの脱落や重大なトラブルにもつながりかねないため、予防策としては短いスパンの走行のたびに気を配ってチェックする必要があります。

カッチリ強い固定方法を工夫すれば全然緩まず良さそうな気もしますが、それはそれでかえって力の集中、金属疲労による破断・破損などの大事を招く場面もあるため、最終的にはどうしても都度ごとの増し締めで対応するほかなく、 感覚としては "ほどほどルーズ" に、かつしっかりと(?)組まれた状態を感覚的に知り、維持することを目指すことになります。

車体周りで特にゆるみがちなポイントは・・・

・エンジンハンガーボルト

車種によっては、決まった箇所のボルトが長く乗るうち "ほぼ確実に破断" するものすらあります。この種目ならではの振動、繰り返しの負荷がかかるため仕方のないことかもしれません。経験の長いダートトラックライダーはおもむろにスペアを取り出してササッと交換するだけ?

・スプロケット固定ボルト

このスポーツではターン進入ごとに大きく加減速を繰り返すため、ドライブチェーンの消耗とともに前後スプロケット固定ボルトの確認を怠らない方が良いでしょう。駆動力を地面に伝える重要なパートだけに、見逃せば大々的な破損やトラブルを招き、手痛い出費となる可能性も少なくありません。

画像: ダートトラッカーならではの"クイックチェンジスプロケット"は専用スパナでの乗るたび増し締めが基本。

ダートトラッカーならではの"クイックチェンジスプロケット"は専用スパナでの乗るたび増し締めが基本。

・スイングアームのチェーンアジャスターボルト

国産マシンの多くは車体左側にドライブチェーンを配置するレイアウトを採用しますが、加減速の繰り返しにより、スイングアーム後端の後輪車軸取り付け部分には強いねじれの力が働きます。ゆるみ止めの細工もありますが、正しい位置関係を保持するためには細かな観察と調整が欠かせません。ちなみに?本場のアメリカンたち、プロレベルの話題ですが、荒れてグリップレベルの安定しないトラックでは、いわゆるチェーンの遊びを極力ルーズに設定する傾向があるようですよ。へぇ〜。

・前後ホイールのスポーク・ニップル

30数本から40本程度のスポークと呼ばれる線材によって組み立てられるホイールは、ひとたびバランスが損なわれると次から次へと欠損し、走行不能となります。張り具合の確認を忘れずに。

・吸排気系の全て

エアクリーナー、キャブレターやインジェクションの接続部は奥まった配置の場合も多く、ゆるみや部品の脱落に気づくのが遅れがちです。またエンジンからマフラーにかけての排気系は、高温に晒されるため乗車中や停止直後に確認することが難しいのでこちらも注意が必要です。

画像: あえて "チャチな固定" を意図した伝統的ダートトラックスタイルのサイレンサーステー。

あえて "チャチな固定" を意図した伝統的ダートトラックスタイルのサイレンサーステー。

代表的な箇所をあげましたが、決して大げさな話ではありません。マシンの前端から後端まで、とにかくすべてのボルトを疑って始めましょう。乗るたびにササっと確認する手順を個人がルーティン化することは、このシンプルなスポーツに親しむ上でとても重要です。個々のマシンごとの癖もあるはずなのでその見極めも言わずもがな。

意気揚々とレーストラックに出向いたはいいものの、ネジ1本落としただけで走れなくなるケースもおそらくあるはずです。走行毎の車体の状態チェックに気を配ることと同時に、各スペアパーツを用意することも必要ですね。

画像: すべてのボルトがゆるみます。そう思って間違いはありません。

すべてのボルトがゆるみます。そう思って間違いはありません。

乗るたびの洗車や拭き上げでトラブルを未然に防ぐ。

モトクロスやエンデューロなどのオフロードカテゴリーに比べ、ドロドロの悪コンディション下で走行する機会の少ないダートトラックマシンは、ついつい洗車や汚れ落としの回数が減りがちです。が、洗車、汚れ落としの拭き上げから毎度のメインテナンスを習慣化すれば、ついでにネジのゆるみや脱落、パーツの破損などがないかのチェック、さらにトラブルの予兆を発見することも可能です。

路面コンディションに合わせて各所の調整を。

レーシングマシンのセットアップは、路面コンディションや乗り手の状態に合わせ、様々に調整してこそ高いパフォーマンスを発揮します。"初心者なので道具に頼るなんてまだまだ" と言って人間力優先でチャレンジしようと頑張る方もしばしばいらっしゃいますが、「モーター」スポーツである以上、道具はギリギリまで扱い切った方が、そしてそのための知識と経験を早くに積み増す方が圧倒的に有利ですよ。次のシーズンに向け、どうぞみなさん念入りなご準備を。

あ、筆者の主催するダートトラックレースシリーズ "FEVHOTS" は、次週末12/23(日)の川越オフロードヴィレッジ戦が本年2018シーズン最終戦を迎えます。ご興味ある方はこの機会にぜひ一度ご来場ください。ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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