BMWのモデルラインナップに強烈な存在感と官能的なデザインを採用した2ドアクーペ「8シリーズ」が加わった。躍動感溢れるスタイリングの中にパワフルな4.4L V8ツインターボエンジンを搭載し新世代クーペの続報をお届けする。(Motor Magazine 2019年1月号より)

「美しさ」と「速さ」を両立したラグジュアリーなBMW8シリーズクーペ

「8シリーズは要するに6シリーズの後継モデルですよね」と尋ねると、開発陣はそれを真っ向から否定した。初代8シリーズに始まりZ8、そして近年ではi8と、車名に“8”が含まれるモデルはどれも特別な存在であり、ゆえに新しい8シリーズも当然そういうモデルとして世に送り出されるのだと、彼らは胸を張る。

たしかにその大胆なスタイリングは、BMWとして新しい境地に挑む姿勢が明確に表れている。キドニーグリルは左右がつながり、ヘッドライトは4灯式をかろうじて守りつつも天地に薄く、これまでにない表情を描いている。ルーフはダブルバブル形状。そこからリアエンドに連なるラインは流れるようで、とても伸びやかだ。

実はクリス・バングル氏(元BMWのチーフデザイナー)時代でも継承されていたショルダーを前後に貫くラインなど、伝統的に使われてきたモチーフをいとも簡単に捨ててしまったことには戸惑いも生じるが、BMWとしてはそれでも新しい表現がしたかったのだろう。ともあれ、8シリーズはダイナミックな姿であることは間違いない。

実はこう見えて現行6シリーズクーペより全長の短いボディは、キャビン前後の支持構造、フロントバルクヘッド、ボンネット、ルーフ、ドアなどの外板パネルをアルミ製としている。また、インストルメントパネル内に通されたリーンフォースはマグネシウム合金製に。さらに、CFRP製センタートンネルも採用された。

当然、これらは軽量化、高剛性化のため。ただし、7シリーズのカーボンコアとは違い、ピラーまわりなどはCFRP化されていない。一方で、オプションとしてCFRP製ルーフも用意されている。ノーマルのアルミ製との重さの違いは1kg程度だというが、重心より遠い位置にあるパーツだけに、ハンドリング性能の向上に大きく貢献する。

やはりアルミや軽量スチールで構成されるサスペンションは、BMW M社が手がけたもので、とくにキャンバー剛性の確保に留意したという。インテグラルアクティブステアリング、電子制御式ダンパー、電子制御式ディファレンシャルなどが標準装備されるほか、アクティブロールスタビリゼーションと呼ばれる可変アンチロールバーも設定される。

画像: アダプティブMサスペンションプロフェッショナルの採用で、ダンパーやロール特性を調整し、快適でスポーティな走りを実現。往年のレーシングモデルに採用されてきたダブルバブルルーフラインを採用。カーボンルーフもオプション設定する。

アダプティブMサスペンションプロフェッショナルの採用で、ダンパーやロール特性を調整し、快適でスポーティな走りを実現。往年のレーシングモデルに採用されてきたダブルバブルルーフラインを採用。カーボンルーフもオプション設定する。

日本仕様のBMW8シリーズに3L直6のディーゼルの可能性も

エンジンは現時点で2種類を設定。M850i xDriveクーペには、4.4L V型8気筒ツインターボが、そして840d xDriveクーペには、3L直列6気筒ディーゼルツインターボが、それぞれ搭載される。

今回の試乗車は前者。新設計のクランクケース、低フリクションのピストン/ピストンリングを新たに採用した腰下に、噴射圧350barの多孔式燃料インジェクター、新しい点火システムなどを組み合わせて、最高出力を68ps増の530psに、最大トルクは100Nm増の750Nmに高めている。この出力は8速AT、そして電子制御式4WDのxDriveを介して4輪に伝えられる。

なお後者については、欧州でのディーゼルがシェアを下げている一方で、日本のプレミアムセグメントでの需要が堅調であることを意識してか、「これも日本市場にフィットすると思う」と、プロジェクトマネージメント担当は言っていた。直列6気筒ディーゼルエンジンを積む大型クーペ。本当に導入されるようだと、相当面白くなりそうだが……。

室内に乗り込むと、大型のセンターコンソールが中央に構える、ややクラシカルな雰囲気のインテリアに出迎えられる。しかし、メーターパネルはフルデジタル化され、大型のヘッドアップディスプレイと合わせて走行に関連する情報、さらにADASやナビゲーション等々の豊富なインフォメーションをわりやすくレイアウトする。進化したジェスチャーコントロールも備わり、操作はそれ自体が未来的。ただし、クリスタルのシフトノブのように、これまた今までのBMWの文脈にはないデザイン要素は賛否が分かれそうだ。

画像: ウインカーがビルドインされたカーボンミラー。

ウインカーがビルドインされたカーボンミラー。

画像: グリルと同色のセシウムグレーのマフラーエンド。

グリルと同色のセシウムグレーのマフラーエンド。

画像: 新開発の4.4L V型8気筒ツインターボエンジンの最高出力は530ps、最大トルクは750Nm。0→100km/h加速は3.7秒。


新開発の4.4L V型8気筒ツインターボエンジンの最高出力は530ps、最大トルクは750Nm。0→100km/h加速は3.7秒。

BMW8シリーズはすこぶる上質な乗り心地を持っていた

走り出して、まず好印象を受けたのがエンジンだ。低回転域からアクセルペダル操作に対して実に活発に反応して、弾けるようなトルクでクルマを小気味よく前に進めていく。そしてそのまま高回転域まで淀みなく、爽快なサウンドとともに一気に吹け上がるのだからたまらない。力を入れて開発したムービングパーツの軽量化の恩恵をしっかり味わえる。 

ライドコンフォートのレベルも高い。サスペンションは硬過ぎずよく動き、路面の不整もすんなりやり過ごす。直進性も際立ち、強い横風の中でも、高いスタビリティを実感できた。

今回はエストリルサーキットを走行することもできた。限界近くになると、その大きさ、重さが気になることとなった。まず定常的にアンダーステアは強めで、ノーズはなかなかインを向いてくれないし、最大2.5度の切れ角を持ち、通常は72km/h、スポーツ/スポーツ+の各モードでは88km/hで位相を切り替える後輪操舵は、高い速度域では前輪と同位相となり、クルマをさらに安定方向に導く。xDriveは駆動力を後輪に寄せているはずだが、それでもラインはどんどん膨らんでしまう。もう少しコントロールの余地を残してほしいが、そうした走りはM8に任せて、ということかもしれない。

このM850i xDriveクーペは、すでに日本でも発表されている。さらにBMWは、この先、8シリーズのラインナップを拡充すると公言している。早くも、8シリーズコンバーチブルが発表されているが、2019年にはグランクーペとM8が加わる。このファミリー全体で、6シリーズとは異なる特別な存在として、どんな世界を創り上げていくのか注目だ。(文:島下泰久)

画像: センターダッシュには「BMW オペレーティングシステム 7.0」を導入した10.25インチの大型コントロールディスプレイを配置。

センターダッシュには「BMW オペレーティングシステム 7.0」を導入した10.25インチの大型コントロールディスプレイを配置。

画像: 12.3インチディスプレイのフルデジタルメーターメーターを採用。中央にはナビゲーションなどの情報を表示。

12.3インチディスプレイのフルデジタルメーターメーターを採用。中央にはナビゲーションなどの情報を表示。

画像: 4シーターシートには上質なメリノレザーを使用する。標準装備のアンビエントライトが高級感を演出する。

4シーターシートには上質なメリノレザーを使用する。標準装備のアンビエントライトが高級感を演出する。

画像: クラフテッド クリスタルフィニッシュのクリスタル製シフトノブを採用。シフトノブ内に「8」の字が浮かび上がる。

クラフテッド クリスタルフィニッシュのクリスタル製シフトノブを採用。シフトノブ内に「8」の字が浮かび上がる。

画像: ラゲッジルーム容量は420Lを確保。2分割式の後席バックレストを倒すことで長尺物を収納することも可能。電動式パワーゲートを装備。

ラゲッジルーム容量は420Lを確保。2分割式の後席バックレストを倒すことで長尺物を収納することも可能。電動式パワーゲートを装備。

画像: 20インチのハイパフォーマンスホイールとMスポーツブレーキを装着。フロントホイールの後方に陰影をつけたデザインを採用。

20インチのハイパフォーマンスホイールとMスポーツブレーキを装着。フロントホイールの後方に陰影をつけたデザインを採用。

BMW M850i xDrive 主要諸元(データは2018年11月8日発表の日本仕様)

●全長×全幅×全高=4855×1900×1345mm
●ホイールベース=2820mm
●車両重量=1990kg
●エンジン=V8DOHCツインターボ
●排気量=4395cc
●最高出力=390ps/5500rpm
●最大トルク=750Nm/1800-4600rpm
●トランスミッション=8速AT
●駆動方式=4WD
●車両価格=1714万円

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.