ニンジャに、新しい時代に敗れ去りし者。
キリンがカタナに乗ったのはそんな理由だからだったんです。

カタナが海外のモーターショーで発表された時、正直「なんだこりゃ」って思いました。カッコイイの? あんな月光仮面のムーンライト号みたいにハナが尖ってるの、恥ずかしくて乗れないナ、なんて思ってましたね。

その頃私は、CBナナハンとZ750FXを持っていたんですが、少しずつオーバーナナハンが日本に入ってくるようになって、発表されたてのGSX1100E(大ベコ、って呼んでました)を狙ってたんです。その頃ですね、カタナが発表されたのは。

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カタナが日本に入ってくるようになったころ、友人のバイク屋から連絡があって「カタナ要るか?」って。えー、あのムーンライト号かよ、って実車を見に行ったんですが、写真より大きくて立派で、なんせセパハンでしょ? セパハンっていうのは、当時憧れの非合法改造アイテムだから、それが最初からついてる、ってだけで「買う」って(笑)。

実車のサイズ感にヤラれたんですね。デカくて立派で、実車を見たら、そんなに恥ずかしくねぇな、って(笑)。買って恥ずかしかったら、FXのタンクシートでも載せちゃうか、なんてね。

そのカタナ、日本に入って来た最初のロット5台のうちの1台とかで、200万円はしたんじゃなかったかな。そのあと、少しずつ値段もこなれるんだけど、私はローンを払っても払っても、新車価格よりも残債が多い(笑)。ちょうど漫画を描き始めた頃で、原稿料が安くてね、月収9万円くらいだった時、カタナの支払いは7万円だもん。走って走ってガソリン入れて……よく生活してたなぁ。

カタナはね、まぁテストコースで(笑)200㎞/h以上出たんですよ。CBナナハンは180㎞/h、Z2は190㎞/h、これはもう、いま走ってる自分は、世界中で一番速いゾ、なんて。

それが、数年後には排気量が200㏄も小さいニンジャに抜かれるんです。あぁ、時代が変わったんだな、って思いました。1200㏄に負けるなら今までの繰り返しだけれど、水冷なんていう新しい技術で、900㏄なのに1100㏄より速いなんて。もう「オレ、あそこで××キロ出したぜ」なんて言ってる時代じゃなくなっちゃった。

それからは次々と新世代の新しいバイクが発売されて、私はリングを降りたんです。だからカタナには、敗れ去りし者、ってイメージがある。それでも、新しい時代に、オレの腕をもってすればギリギリ届くかもしれない—って象徴なんです。

ニンジャに軽々と負けた頃、ミスター・バイクBGで「キリン」の連載が始まります。分別あるおじさんが、実はまだ燃えるものを持ってるんだ、っていうテーマを書こうとした時、彼が乗っているバイクはGSX−Rじゃない、そのGSX−Rやニンジャに立ち向かっていく旧世代。

だからカタナだったんです。私はニンジャに、新しい時代に嫉妬していたのかな。

PHOTO:松川 忍

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