年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき映画を紹介。今回の100分の1の映画は、超危険な公道レースに挑み続けるバイク一家、ダンロップファミリーを描いたドキュメンタリー映画『ロード(ROAD) デスティニー・オブ・TTライダー』。
3年ほど前に一度さらっと観ていたが、今回気合いを入れ直して瞬き少なめに観直してみた。

事故を起こせば死に直結する危険な公道レースに挑み続けるダンロップ一族のドキュメンタリー映画

現代では、ロードレースといえば、ある程度安全対策が考慮されたクローズドな専用コース(サーキット)で行われるものと相場が決まっているが、英国・アイルランド地方を中心として公道を使ってレースを行うリアル・ロードレースもいまだに開催されている。

本作は、このリアル・ロードレース、公道レースに全てを賭けて挑み続けた4人のレーサーたち、ジョイ・ダンロップ、ロバート・ダンロップ、ロバートの息子であるウィリアム・ダンロップ、マイケル・ダンロップの命がけの挑戦を描いたドキュメンタリー映画だ。

公道レースとしていまだに多くのファンを持ち世界的に有名なマン島TTレースや、北アイルランドのノースウェスト200、アルスターGPなど、サーキットに比べると安全性も路面の舗装状態も悪い一般の公道を、最高速320Km/h、平均時速210Km/h以上でぶっ飛ばす、このうえなく過激でエキサイティングなレース。
そんなレースの危険な魅力にとり憑かれて走り続け、やがて不慮の事故で命を落とすことになるのがジョイ・ダンロップとロバート・ダンロップ兄弟。

そして、2人が命を落としたあとも、ジョイの甥でありロバートの息子であるウィリアムとマイケルは、公道レースにおける名家ダンロップの名を継ぐ者として、危険なレースに挑み続ける。

そんなダンロップ一族の強烈な走りと強い意志を、家族や友人たちの証言を元に鮮やかに描き出した作品。

画像1: バイクに乗り続ける者たちへ『ロード(ROAD) デスティニー・オブ・TTライダー』 -1/100の映画評

JOEY DUNLOP

兄・叔父/ジョイ・ダンロップ

公道レースのレジェンド。北アイルランド出身。マン島TTレースにおいて通算26勝を記録し、”キング・オブ・ザ・ロード”(King of the Roads )の名で呼ばれるライダー。このマン島TT最多優勝記録は未だに破られていない。TT-F1世界選手権ロードレースでも1982年から1986年まで五連覇するなど圧倒的な速さを見せた。
 2005年には「歴史上最も偉大なライダー」のランキングで5位に選ばれた。レースにおける業績からMBE勲章を、そして人道的な活動からOBE勲章をそれぞれ英国女王から贈られている。ジョイ・ダンロップはそのレース人生において、多くの仲間を失っている。そして彼自身の人生も2007年7月2日、エストニアでのレースで終焉を迎えた。48歳だった。

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ROBERT DUNLOP

弟・父/ロバート・ダンロップ

 ジョイの弟。マン島TTを初出場で優勝、その後5回にわたり表彰台に上がった優秀なロードレーサー。北アイルランドで開催される公道レース、ノースウエスト200では15回優勝という記録を達成している。しかもこの記録は、途中再起不能と言われるほどの負傷から乗り越えてのものでありさらに輝かしいものとなっている。
 彼は1994年のマン島TTにて、走行中にホイールが破損するトラブルに遭い、時速160km以上の速度から壁に激突してしまう。一命こそ取り留めたものの重傷であり、誰もがレースへの復帰は不可能だと考えていた。しかし彼は諦めずに後遺症の残る体に合わせたモディファイをバイクに施して復帰。再び勝利を手にした。兄ジョイの死後もレースへの参戦を継続。リスクについて彼は誰よりも理解していた。そしてその代償をいつか自分は支払うことになることも……2008年5月、再びレースでの事故により彼の人生に幕が下りた。

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WILLIAM DUNLOP

兄・長男/ウイリアム・ダンロップ

 1985年、ロバートの長男、ジョイの甥として生まれる。父、ロバートの助言を受けて17歳からレースの道へ。ノースウェスト200、アルスターグランプリで勝利を挙げる。2008年、父ロバートが命を落としたレースの予選で父と併走しているとき、父のマシンの異変に気づくが、それを父に伝える手段はなかった。2014年はTYCO SUZUKIからマン島TTにエントリー。スーパースポーツレース2でクラッシュするものの、大事には至らなかった。

画像4: バイクに乗り続ける者たちへ『ロード(ROAD) デスティニー・オブ・TTライダー』 -1/100の映画評

MICHAEL DUNLOP

弟・次男/マイケル・ダンロップ

1989年生まれ。ロバートの次男、ウイリアムの弟。ダンロップファミリーの血脈を次ぐ者として、兄ウイリアムと同じく10代でロードレースの道に入る。マン島TTに初出場したのは、出場が許される18歳になってるすぐの2007年のこと。2009年には早くも1勝目を挙げ、2014年までに12勝を記録した。2013年は7レース中5勝、2014年も出場した5レースのうち4つのレースで優勝している。2008年、予選中に父ロバートが悲劇に見舞われたノースウェスト200の250ccクラスで優勝。2014年からはBMWにマシンをスイッチ(600ccクラスはホンダ)し、活躍を続けている。

画像: 映画「ロード」予告篇 youtu.be

映画「ロード」予告篇

youtu.be

我が名はバイク乗り。ダンロップ一族の鉄の意志に思わず、バイクに乗り続ける意思を重ね合わせてしまう

公道を走るという点では同じだが、事故はもちろん、ちょっとした転倒も怖いし、白バイの姿を見かけたらビクビクしながら速度を控える・・。それが大抵のバイク乗りだと思う。
20世紀ならばいざ知らず、もはや峠や高速道路で最速を競い合うような時代でもない。

今となっては、大切な愛車にいつまでも乗っていよう、乗り続けようという意思の有無が大事になっている、それが現代のバイク乗りだ。

しかし、このドキュメンタリーに描かれているのは、決死の覚悟でスピードに挑戦し、誰よりも速く公道を駆け抜けようとする命知らずたちであり、Xゲームなどと同じように常に危険と隣り合わせのゲームに挑戦し続けるアスリートたちだ。当然普通の、市井のバイク乗りと気分を同じくするものではない。

だが、それは重々わかっていても、どんなにバイクやヘルメットが高性能になっても、それでもバイクに乗るということは車に乗るよりは危険を伴う(ように感じる)し、バイク乗りの多くは、制限速度で走っていたとしても、”万一”の不運には心備えているものだ。
比べようのない彼我の差異であり、超危険なレースに挑み続ける彼らとは全く次元が違うことは理解しているが、それでもダンロップ兄弟たちの走りに、思わず自分たちの意思を重ね合わせてしまう。
誰がなんというと、バイクには乗り続ける。そんな意思を、ダンロップ一族の意志にほんの少しでも重ねてしまうことを止められないのである。

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