年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき映画を紹介。今回の100分の1の映画は、2012年に『世界にひとつのプレイブック』で世界的ヒットを飛ばしたブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンスのコンビが復活した、『セリーナ 炎の女』。

”暗黒の木曜日”後のアメリカを舞台とした愛と狂気の物語

1929年の大恐慌直後のノースカロライナを舞台とした、負のスパイラルに追い込まれていく夫婦の姿を描いた、切なくも禍々しい恋愛映画。

グレート・スモーキー山脈で製材所を営むジョージ・ペンバートン(ブラッドリー・クーパー)は、孤独な美女セリーナに一目惚れし、求婚する。自身も製材所の経営者の一家に生まれたセリーナは、家族を火事で失くして孤児になった過去を持つものの、ジョージの良きパートナーとして製材現場で強い意志と男勝りの才覚を発揮する。

しかし、社会を覆う不況の影は彼らの生活を脅かし始め、さらにセリーナが不慮の事故で流産してしまったことから、2人の生活は一変する。破滅への予感に慄くジョージ、そしてそのジョージが自分から離れていくのではないかという不安に徐々に狂気を孕んでいくセリーナ。2人は徐々に暗い結末へと追い込まれていく・・・・。

誰得?と一瞬思うけれど、暗い影に覆われた世界でもがく野心家の苦しい戦いと思えば・・・

正直、早々にバッドエンドを予期してしまう、とてもとても暗い作品。映画をみただけでは、これって誰得?と思わざるを得ない流れだし、ブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンスというスターを使ってこれなの?と思わなくもない・・。
だから、あまり人に勧められない作品であるし、ランダムに映画をみ続けていると年に何度かはこういう作品に当たってしまう、という一本(苦笑)。

ただ、前項でも述べたように、1929年という、米国史上稀に見る大恐慌時期、つまり相当の社会不安に米国が落ち込んでいた時期を舞台としているということを考えてみると、この物語の真意がちょっとわかるかもしれない。
金のために突き進む野心家のジョージと、彼を愛してしまったセリーナ。ジョージは自分の城と、将来の夢を守り抜くため悪事に手を染めるが、セリーナはそれを止めるどころか背中を押す。2人を追い込むのは、やはり未曾有の社会不安が背景にあるからだと思う。

経済が順調に回っているときは、彼らのようにある意味エキセントリックで自己中心的なタイプは、案外大成功していって、それなりのVIPとして豊かな生活を謳歌していくのではないかと思わないでもないが、誰も経験したことのないほどの逆境にあっては、必死にもがくあまりに周囲を傷つけ、自分たちも破綻していくだけだった。

だから、まともに観ているだけではジョージとセリーナには全く感情移入できないが、時代背景と合わせて眺めれば、それなりの教訓というか、2人を哀れに思っていられるような気がする。

画像: 『セリーナ 炎の女』2018年4月4日ブルーレイ&DVD発売/同日DVDレンタル開始 www.youtube.com

『セリーナ 炎の女』2018年4月4日ブルーレイ&DVD発売/同日DVDレンタル開始

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