ダートオーバルを周回するレーシングマシンが持ち合わせていないもの・・・まずはルールで "完全な取り外しが義務づけ" られるフロントブレーキを挙げることができますが、さらに見てみると前輪を覆うフロントフェンダー (泥よけ) を装備していないマシンが大多数。土の上でのレースなのに?レース車両の元になる市販車にはついていますが?というわけで本日は、歴史的に前輪を "オープンホイール" とするダートトラックマシンのアレコレにまつわるお話です。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ダートトラックレーシングでフロントフェンダーを取り外すのが一般的なのには、大まかに4つの理由があります。ストリートカスタムでの "ボバースタイル" にもそのまま通ずる、なかなか趣きのあるストーリーなのでご紹介したいと思います。

超高速でのストレート走行に不必要!

皆さんはオフロードバイクで高速道路を走った経験はありますか?悪路での泥はねを受け止めるアップタイプのフロントフェンダーは、時速100キロ近いスピードでは空力的に大きな抵抗となり、ハンドルを取られる原因になってしまいますね。

画像: www.knfiltros.com
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ダートトラックレースの花形、最もスピード域の高いマイルレース (1周1,600mオーバル)では、その最高速度は時速200キロ以上に達すると言われています。左手をハンドルから離して身を屈め、空気抵抗を可能な限り減らして、ライバルより1ミリでも前に車体を進めたいこの状況では、フロントフェンダーは取り付ける意味を持ちません。

繊細なハンドリングが求められるコーナリング中に不必要!

筆者の手元にあるオフロード車用の純正フロントフェンダーは、その重さが約600gありました。繊細なマシンコントロールが求められるダートトラック走法で、操作の要のひとつでもある前輪ステアリング付近に、それだけのウェイトを積んで走るのは、あまり合理的な考え方ではありません。

画像: stusshots.blogspot.com
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写真のようなクッショントラックで、各車が巻き上げている土煙 ( = 英語ではルーストと呼びます) はその醍醐味のひとつですが、自車の前輪から生じた分がフロントフェンダー裏を叩けば、繊細さが求められるハンドル操作に影響を与えることは必至です。また均質にならされたレーストラックでは、前方視界を奪い去る水分の多い "泥はね" の影響はほとんど心配する必要がないため、ここでもフロントフェンダーはあまり出番がなさそうです。

バーtoバーの接近戦で接触時のリスクが高まるため不必要!

1周10数秒足らずのトラックに何台ものマシンがひしめき合うショートトラックでは、ライダー同士のちょっとした接触や転倒者の回避は日常茶飯事です。際どく接近した際に引っかかり両者が転倒することを避けるため、余計なパーツは極力外すのが、過激な肉弾戦を生き残る秘訣かもしれません。

画像: www.motorcyclistonline.com
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ダートトラック"らしいスタイル"の追求のために不必要!

もちろんレギュレーションで取り外し必須とされていない場合、ほとんど気にしないライダーもいます。特に21世紀生まれの若い選手たちは、いわゆる "DTXスタイル" のマシンのみにしか馴染みがないため、整合性のあるボディデザインの一部であるフロントフェンダーをあえて捨て去ることには、大いに抵抗があるようです。

画像: www.americanflattrack.com
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モトクロス用レーサーをベースとして仕立てられる最近の単気筒ダートトラックマシン "DTX" に、カテゴリーのアイデンティティを主張させるためには、フロントフェンダー取り外しこそが明快な表現だと考える関係者は多く存在します。結論が出る話題ではありませんが、定期的に巻き起こる、"フロントフェンダー・いる or いらん論争" は、本場アメリカを中心とした、この種目のファン層の厚さと、歴史の奥深さを感じさせる、永遠のテーマのひとつだと言えるでしょう。

伝統的スタイルの "フレーマー" と最新レーサーベースの "DTX" 、その特徴をそれぞれ紹介した過去コラムも併せて再読いただければ幸いです。ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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