年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも見るべき映画を紹介。
1970年代の米国で、天才的な飛行機の操縦技術を買われてCIAにスカウトされた男、バリー・シールの破天荒な生涯を映画化。
1970年代、大手航空会社TWAのパイロットであったバリー・シールは、CIAからスカウトされ、中南米への物資密輸の任務を与えられる。しかし彼は同時に中米ゲリラたちの銃器の横流しや麻薬の密輸の片棒もかつぐようになり、あっという間に莫大な資産を築き上げていくが・・・。
主人公バリーをトム・クルーズが熱演。持ち前の空虚だが愛嬌たっぷりの笑顔が、周囲を悪事に巻き込みながら、暗さや陰湿さを見せない憎みきれない悪党バリー・シーンを見事に再現している。

CIAに雇われながらも私欲に走った実在の人物を映画化

大手航空会社のパロット、バリー・シーンはCIAにスカウトされ、中南米の反共ゲリラへの支援物資の密輸を手がけるようになるが、同時にゲリラたちの私腹を肥やす手伝いとして、物資の横流しやコカインの米国への密輸にも手を染める。

さまざまな問題に直面しながらも荒稼ぎしていくバリーだったが、金を稼ぐことしか頭にない反共ゲリラたちに業を煮やしたCIAが彼らと手を切ろうとしたことで、すべての関係が破綻し、一気に苦境に陥っていく・・・。

国益の名のもとに非合法な仕事に従事した男の、哀しくもスリリングな一生を描いた、実話ベースの問題作。

原題はAMERICAN MADE.

邦題の”アメリカをはめた男”というのは、皮肉というか、むしろバリー・シールに対してやや悪意が過ぎるという気もする。
本作は原題”AMERICAN MADE.”。バリー・シールは飛行機によって非合法に国境を越え、銃や麻薬の密輸で荒稼ぎした悪党だが、彼の存在を作り出し、その行為を支え続けたのは他ならぬ米国≒CIAだからだ。

バリーがCIAの指示によって銃器を渡していた相手はコントラだったが、そのためレーガン元大統領の映像や、(非常によく似た役者を使った)オリバー・ノース中佐の姿なども登場する。

イラン・コントラ事件(イラン・コントラじけん、Iran-Contra Affair)は、アメリカ合衆国のロナルド・レーガン政権が、イランと裏取引をした上に、同国への武器売却代金をニカラグアの反共ゲリラ「コントラ」の援助に流用していた事件。1986年に発覚するや、アメリカ国内はおろか世界を巻き込む政治的スキャンダルに発展した。)

つまりは、バリー・シールは、正義、あるいは国益の名の下に正当化されるさまざまな行為の被害者の一人、という言い方もできるだろう。
逆に、コントラへの武器援助の資金(その金の一部がバリー・シーンに流れた金)を作るためにイランと行なった裏取引の重要関係者であったノース中佐が、いまでは全米ライフル協会の会長に選出されている、という事実を見ても、そういう感想が募るばかりだ。

画像: 『バリー・シール/アメリカをはめた男』予告映像 youtu.be

『バリー・シール/アメリカをはめた男』予告映像

youtu.be
コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.