あー最近『真田丸』観てないなー、信繁ロスだなーって呟いてたら、いつの話をしてるんだよ!と怒られました。大河ドラマは『西郷どん』の時代なんだそうです。
それでも戦国最後の真紅の軍団を率いる、真田左衛門佐幸村(さなださえもんのすけゆきむら)の活躍が恋しいトーマス、遅ればせながら、いいものをみつけちゃいました。
それがこれ。池波正太郎原作の「真田太平記」のコミック版『真田太平記』です。戦国最後の赤い閃光、真田昌幸、信之、幸村の3人の比類なき壮絶な生き様を描いた、長編歴史大作です。現在1-10巻が絶賛発売中で、物語はいよいよ佳境の、関ヶ原から(大坂冬の陣と、慶長20年の大坂夏の陣から成る)大坂の役へと進んでいくところまで来ています。

天正十年(1582年)、織田軍の攻撃により武田家が滅亡したことをキッカケに歴史の表舞台に現れた真田一族

本作は、天才的軍略の持ち主 真田昌幸が、長男 源三郎(信之)と次男 源二郎(信繁。のちの幸村)とともに小さな地方の豪族にすぎない真田家をして、織田、北条、上杉、豊臣、徳川といった巨大勢力を相手に回しつつ、日本一の兵(つわもの)として全国にその名を轟かせていく、男なら誰でもその血を滾らせるスリリングな生き様を丁寧に描いた作品になっています。

ときは天正十年(1582年)。
戦国最強の武将と謳われながらも志半ばに病死した武田信玄の後を継いだ武田勝頼が、織田信長の侵攻によって斃れ、甲斐の名門武田家が滅ぶところから物語は始まります。
勝頼の側近の一人、真田昌幸は落胆しつつも真田家を存続させるために知略の限りを尽くし始めます。主人を失ったことにより、ある意味自分たちの一族のためだけに生きていける自由さを得たとも言えるのです。

一旦は織田家に仕えることになった真田ですが、その後まもなく起きた本能寺の変によって織田信長が落命したことにより、世の中は再び乱れ始め、織田の支配下だった甲州、信州、上州をめぐる北条、上杉、徳川の三つ巴の争いが勃発。真田は大国の思惑に翻弄されつつも、自力で難局を切り抜けていくことを決意するのです。
彼らは上杉との関係再構築を選択することで北条、徳川と対立します。昌幸らは徳川の軍勢を打ち破るなど、大いに面目を保ち、やがて織田の跡目を継いだ豊臣秀吉に上杉が降ることで、秀吉の庇護を得ることに成功します。

その後秀吉が世を治めるものの、一代で築いた権力基盤の層の薄さと子宝に恵まれなかったという不運が重なり、秀吉の死後間も無く天下は再び揺らぎ始めてしまいます。秀吉亡き後、最大勢力を持つ徳川家康はあからさまに野心を露わにし始め、石田三成を中心とする豊臣家に忠誠を誓う一派との対立が深まり、やがて東西分かれての天下分け目の大決戦、関ヶ原の戦いへと繋がっていきます。

真田昌幸は(大嫌いな)徳川家康ではなく、恩義のある豊臣家に肩入れし、石田三成側の西軍に与しようと考えます。しかし、冷静沈着で父親にも勝るとも劣らない知略の持ち主である源三郎こと信之は、東軍(家康)に就くことを進言。
最終的に、真田は本家(昌幸と幸村)と分家(信之)を作り、本家は西軍、分家は東軍に加担するという戦略をとります。(結果的にはこれが真田家を生き延びさせることになるのです)

漫画で読む歴史小説!

現在デジタル版としては10巻まで刊行されている本作ですが、冒頭の通り原作は池波正太郎先生の「真田太平記」です。残念ながらトーマス、この原作を読んでいないのですが、漫画化にあたり、原作に忠実に、丁寧に再現されているとのことです。
そして、歴史上の人物を描いているので、当たり前ですがおおよその展開はNHK大河ドラマ『真田丸』と同じです。
『真田丸』は、源二郎信繁(=幸村)の幼馴染である長澤まさみさん演じるヒロイン"きり"の目線を生かして描かれていましたが、本作では草の者=忍者であるお江というくノ一がその役割を負っています。忍者なので、(忍者同士の戦いなどのアクションシーンや)日本中を駆け巡ることで様々な事件を生で見ることができ、物語に臨場感を与えることができます。小国である真田一族が大国を向こうに回していけるのも、草の者たちという諜報組織を持ち、情報をいち早く手に入れることの重要さを理解していたからです。彼らの活躍が、真田をして今日までその名を轟かせる優秀な一族となれた理由を読む者に納得させてくれています。

また、長兄の幼名が源三郎で、次男である幸村が源二郎であることについて、『真田丸』では幸村が変人または縁起を担いでそのような反対の命名をしたかのように、あっさりとこの点流していましたが、本作では(原作でも同じようにあるのでしょう)もっと明快な理由が記されていて、納得です。
(これ、ネタバレになるかなとも思ったのですが、ネットにも出てくるのでサクッと書くと、二人は異母兄弟で、源二郎のほうが実は先に生まれているのですが、幸村の妾の子供なので、正室の子供である源三郎を嫡男とした、という説=本当かどうかはわからない俗説だそうです を採用してありました)

とにかく、本作は『真田丸』をはじめとした真田幸村ブームに便乗して制作された流行の徒花のようなものではなく、実に丁寧に、きっちり作られた、漫画で読める歴史小説です。

戦国時代の終盤、徳川幕府による江戸時代の始まりまでの30年ほどの、それこそ本当に最後の動乱時期を描き、一族の生き残りに心血を注いだ昌幸の情熱、冷静に時局を読み真田の血脈を長く生き永らえさせた長男 信之の知略、そして最後まで戦国武将の気概と忠義に則って豊臣家に尽くした真田幸村の信念。三者三様の真田家の生き様を豊かに表した、実に面白い作品です。
あと残り数巻で終わるものと思いますが、今から一気読みすれば、気分は赤備えの軍団。身の回りをすべて赤くして幸村とともに鬨の声を上げようじゃありませんか。

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