エリート人生を転落し、IT業界に転職した主人公はサウジアラビアに最新のITシステムを売り込むことで、起死回生を目論むが・・・。急展開した自分の人生に苦しみ悩む、生き方を失った中年男が砂漠の国で、自分を取り戻すきっかけを得る。
トム・ハンクス主演のヒューマンコメディ。人生は捨てたものじゃないと感じられる感動作。

人生につまずいた中年男が悲哀を味わう中で、新しい生き方を探り当てる感動物語

かつては自転車メーカーの取締役の地位にいた主人公アラン・クレイ(トム・ハンクス)。しかし、彼は業績悪化の責任を問われて失脚。挙句に妻と離婚し、娘の教育資金のために住み慣れた家も売却するはめに陥ってしまう。やむなくIT業界に転職したものの、自分の身に起きた急激な変化を素直に受け入れることができずにいる。
そんなおり、彼は早速3Dホログラムを売り込むためサウジアラビア王国に出張を命じられる。

しかし、砂漠の国の、中東ならではの鷹揚さと言うか、悪く言えばルーズなところに振り回されて、アランはどんどんストレスを溜め込んでいく。生き方を忘れたと言うか、仕事人として家庭人として誇りを持てたはずの自分を失ったという自覚が、アランを苦しめ、それがどんどん増幅してしまうのである。
それでも、さまざまな人との出会いと交流が、彼を徐々に解放し始め、やがてアランは新しい自分の生き方を見つけるきっかけを与えられる。かつての自分に戻るのではなく、過去に決別し、新しい自分の人生を楽しむための踏ん切りをつけるのだ。

人生はうまくいかないことも多いし、不可逆で、いくら以前の栄光を取り戻そうとしても叶うことはない。そこで歩みを止めるか、新しく別の方向を定めて再び歩き出すかは、自分次第。中東の砂漠の国で、そんなきっかけを得た中年男に、誰でも自分を重ねて見ることができるはず。

華やかさはないが、穏やかで静かに心温まる良い作品だ。

意外なところで楽しめたので、小ネタ的に紹介

本作そのものには関係がないが、ロレンス的には思わずニヤリとするシーンがいくつかあった。

人生に挫折して落ち込んでいる本音を見せたくなくて、先行してサウジにきていた会社の仲間の前では気丈に振る舞うアランを、トム・ハンクスはいつもの哀愁に満ちた笑顔で演じている。なぜか座る椅子座る椅子が壊れて、後ろに倒れてしまうアランは「俺を殺せるのは黄金の弾だけだ!」と(ジョークを)叫ぶのだが、チームのメンバーには全く通じない。

これはなにかというと、『アラビアのロレンス』の一節を使ったジョークなわけ(試練に遭ったロレンスがそう叫ぶ。図らずも砂漠の国にやってきた自分と重ね合わせているわけ)だが、若いメンバーはキョトンとするだけw。ロレンスというメディアの名前は当然「アラビアのロレンス」からとったわけだが、実を言うと僕も知らなかった笑。

もう一つは、国王も交渉の担当者も不在でいらつくアランが、と担当者のアシスタントであるデンマーク女性のオフィスに招待されたとき。オフィスは別に豪華でもないが、置かれた家具はウチのオフィスと同じUSMハラーのモジュールファーニチャー。ちょっとした親近感が湧いたというだけだが、USMは組み立てが自由なので、プロジェクトベースでいつ引っ越すかもわからない”前線基地”的なオフィスには向いている。これを小道具として使っているのは映画のリアリティを増していると思えた。

画像: 映画『王様のためのホログラム』予告編 youtu.be

映画『王様のためのホログラム』予告編

youtu.be
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