マダム・フローレンスは類稀な音痴だが本人だけはそれを知らない。やがて彼女は音楽の殿堂カーネギー・ホールでリサイタルを開くが、それはすべて彼女の夫シンクレアの献身的な陰の努力によるものだった。
1940年代に実在した「世界一音痴なオペラ歌手」フローレンス・フォスター・ジェンキンスの生涯を、名優メリル・ストリープとヒュー・グランドの共演で映画化。

実在した、世界一音痴なオペラ歌手の生涯

裕福ではあるが若い頃に患った病気に悩む女性、マダム・フローレンス。彼女の生きる支えは歌うこと。彼女は類稀なる音痴だったが、彼女だけがその事実を知らない。
彼女は度々コンサートを開くが、それは彼女の夫シンクレアに買収された客だけが集められた虚構の舞台。彼女の音痴は世間にも広まることなく、新聞での評価も常に上々。マダムは夫によって作られた幸福な夢の世界で生きていたのだ。

しかし、あるとき彼女はカーネギー・ホールを独断で借り切り、リサイタルを行うことをシンクレアに告げる。さすがのシンクレアもカーネギー・ホールに集う客のすべてを買収することはできず、マダムは初めて出来レースではない、本当の聴衆の前でその歌声を披露することになるが・・・。

実在した世界一音痴でありながら、いまだに多くの人々の記憶と心に残る歌声を残した不思議な歌手、フローレンス・ジェンキンスの生涯を描いたヒューマンドラマ。

芸達者な2人の俳優の演技の冴えを楽しめる可笑しくも物悲しい作品

実はとても歌が上手なメリル・ストリープだけに、声の張りは素晴らしく、美しいのだが、絶妙に音を外してくれるのがすごいw。
若い頃にろくでなしの男と結婚してしまったために、夫から性病を伝染されたマダム・フローレンスは以降病弱となる。ヒュー・グラント演じるシンクレアと再婚するものの、性生活を持つことは叶わず、子供をつくることもできない。
不安定な体調と、不完全な結婚生活に苦しむマダムの生きがいは歌うことだけ。夫のシンクレアは、そんな彼女を不憫に思うだけではなく、献身的に支え続ける。とはいえ、男として性生活の不備は辛いから、彼には実は愛人がいる。そこは軽妙なプレイボーイ役を演じさせたら右に出る者がいないヒュー・グラントならではで、観ている我々にも 作中の彼の周囲の人間にも決して男の不義を非難する気にはならない。

見ようによっては、妄想を肥大化させてしまった金持ちの馬鹿な中年女性と、その妄想を抱かせ続けることに腐心しつつ浮気を続けた不実な男の話、のように見えなくはないところを、2人の名優の素晴らしい演技が、あくまでも美談として本作を成立させている。

妄想が現実になったとき、悲劇が訪れるのだが、結果としてマダム・フローレンスの歌声は歴史に残る。彼女の夢も、夫の献身も、決して無駄にならなかった。それが観ている我々にとっても、大きな慰めとなって、本作に素直に感動させられるのである。

画像: 『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』予告編 youtu.be

『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』予告編

youtu.be
コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.