スポンサーを集めるため放課後、テレアポするとこからスタートするんだよ

現在発売中のオートバイ1月号でも紹介されてた郁子 匠(うべたくみ)さんのバイクレースがテーマの小説「天竜川高校竜競部!」(マイクロマガジン社 本体694円)。年間300日は書店に通ってる私、11月半ばのおそらく発売日当日に新刊コーナーで見かけてたんですね。デビュー作でポプラ文庫から出てる「レーシング少女」を以前読んでたんで、新刊コーナで「お、新作か」と思って手にとって。でも、なんとなくとりあえず後回しにしてしまったのでした。

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郁子さんといえば自らレース参戦の経験もある人で、ライディングスポーツ誌の企画で「もて耐」に参戦した記事なんかも目にしたことがあって。レース参戦経験を活かした作品、ということで当時「レーシング少女」も読んだけど、私はいまひとつ乗れなかった。レース小説要素よりも、青春小説としての比重が勝っているというか、その辺のさじ加減が個人的に「刺さらなかった」記憶が。これはバイクに乗る本読みのワガママでしかないんだけど。で、「天竜川高校竜競部!」を遅ればせながら買って読あせてもらいました。レースをする高校生が主人公、という点は「レーシング少女」と共通。でも基本的にミニバイクレースのお話だった前作に対して、静岡県の高校にある「竜競部」=「自動二輪車競走部」が、「もて耐」に参戦するという筋立てからして、適度にエンタメ的期待感を感じさせる設定ですよ。

それでも最初は正直ナメてたんですよ。表紙でCBR250RRを背にして立ってるセーラー服の女の子のイラストの印象で。でも、バイク初心者の主人公・今村 心が高校の新入生歓迎会で「竜競部」のバイクスタントを見て、そして部長の瘧師京子(表紙の子ね)に出会い入部してしまうという導入部から、読み始めるとあっという間。真面目な話、集中しすぎて電車で目的地を乗り過ごしたくらい。話の展開は、目標があって、トラブルがあって、それを乗り越える。そして最後は…ってなもんで古典的で王道なパターンだけど、だからこそ読ませるストーリーになる。もちろん、しっかりとしたディテール描写と練られた構成があってこそなんだけど。

ネタバレになるんで細かい内容には触れないけど、その実態はレース準備小説なんですねコレ。そもそも高校生が部活でレースに出るのが無茶な話なんだから。だからこそ、説得力を持たせるにキッチリと手順とかを踏まなきゃならないんだけど、その辺の厳しい現実も含めて一切手抜きなしだから。だって、スポンサーを集めるため放課後、テレアポするとこからスタートするんだよ。もちろんレースの描写やバトル中のライダーの心の動きなんかも、さすが自分で走ってきた作家ならではで「ああ、そう、そうなっちゃうよ」って感じ。キャラクターもレースどころかバイク初心者の主人公、超人見知りな主人公の幼なじみ、CBR1000RRを軽々乗り回す謎の美人部長、レース経験豊富な主人公の同級生と役者も揃ってます。脇役の大人たちもいい味出してます。

こういう小説、個人的には大好物なんですね〜私。去年、DE耐で燃費計算とかヘルパーとかしてたから、身につまされるエピソードが多かったという個人的思い入れバイアスを差し引いても面白い。昔読んだ高千穂遙さんの「夏・風・ライダー」(80年代前半の鈴鹿4耐に出るプライベートチームの話)も好きなんだけど、「天竜川高校竜競部!」も真面目にオススメな現代の青春耐久レース小説です。

天竜川高校 竜競部!
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郁子匠
マイクロマガジン社 (2017-11-18)
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