八王子で若い夫婦を惨殺し、血文字でと書き残して 行方をくらました犯人。警察は容疑者を山神一也と断定したものの、彼は整形を繰り返していると思われ、1年経ってもその足取りは掴めなかった。
その後、千葉、東京、沖縄に3人の身元不詳の男たちが現れ、それぞれその地に住む者たちとの交流をはじめ、やがて特定の相手との恋愛関係を育み始める。しかし、その後テレビ公開された、山神の整形後のモンタージュ写真に、彼らが似ていることによってその人間関係が徐々に崩壊していく・・・。隣で微笑むその人が、残虐な殺人犯なのでは?という疑念を捨てきれない恐怖を描いた心理サスペンス。
犯人が夫婦を殺害する理由の不条理さも話題に。

君の隣にいるその人って本当に君が思うような人ですか?

スガシカオは、自身の名曲「真夏のパレード」で、君の隣にいるその人って本当に君が思うような人ですか?と歌う。

優しそうに見えて本当は優しくない、親切そうでほんとは冷たい。人は案外見た目と違うものだが、そんな程度ならいいけれど、愛した人が実は殺人者だとしたら、そしてそれが本当がどうかを別にして、殺人者なのではないかと疑わざるをえないとしたら、これほど恐ろしいことはないだろう。

本作は、千葉、東京、沖縄の3つの異なる場所で、それまで何をしていたか全くわからず、身元もわからない男たちと、彼らと恋に落ちる若者たちの交流を描き、そして誰がババを引く(つまり殺人者と恋をしてしまったという恐怖と絶望を味わう)のは誰か、という不安を引きずるように物語を綴っていく。

3つの異なるシチュエーションがおりなすストーリー

東京では、ゲイであることを隠しながら生きる、妻夫木聡演ずる若いサラリーマンが、綾野剛演ずる謎めいた男と同棲を始める。
千葉では、宮崎あおい演ずる元風俗嬢が、父親の工場で働く 松山ケンイチ演ずる謎めいた男と交際を始める。
沖縄では、広瀬すず演ずる少女が、森山未來演ずるバックパッカーに心惹かれ始める。

それぞれの世界は交わることがないが、共通しているのは、身元不明の男たち。そして、その容貌が八王子の殺人事件の容疑者 山神一也のモンタージュに似ていたこと、そして彼らがそれぞれの土地に現れた時期が、山神の失踪した時期と重なること。

果たして3人の中に、犯人は存在するのか?だとしたら、それは誰なのか。

たとえ裏切られても、しょうがないと言える?

本作では、とにかく自分のことを話したがらない謎めいた男たちが3人いる。
彼らは、自分たちの”いま”を話すことはないし、”過去”についても話さない。仮に話したとしても、それが本当のことかどうかわからない。

だから彼らを愛することはできても、心底信じることは難しい。たとえ裏切られるかもしれないとしても信じてみよう、そんなふうに思うことは本当に難しいことだ。

本作では、総力をあげても発見できることができない殺人犯を追う警察の焦りを定点的に描きながら、愛する人への疑念を抑えることができなくなっていく人々の、切ないばかりの苦しみ、そして疑念を抑えきれないがゆえに愛を失う恐ろしさをを丹念に表現していく。

自分ならば、不安を抑えて、相手を信じきることができるだろうか。自分の想いと裏腹に、相手に裏切られたとしても、それはしょうがないと諦めきることはできるだろうか。

自問自答してもその答えを得ることは難しい。
その意味で、この映画はとても恐ろしい問いを投げかけているのである。

画像: 殺人犯が書き残した「怒」の血文字 www.ikari-movie.com

殺人犯が書き残した「怒」の血文字

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画像: 「怒り」予告2 www.youtube.com

「怒り」予告2

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