その驚異的な解像力が話題となり、2017年2月に発売されるや、たちまち最も注目を浴びるカメラのひとつとなり、2017カメラグランプリでカメラ記者クラブ賞を受賞した、いまだかつてない軽量中判ミラーレスがフジフイルムGFX 50S。弊誌2017年3月号に掲載した開発者インタビューを振り返ることで、その魅力と性能の一端をうかがい知っていただけると幸いである。
画像: 写真左から上野 隆さん、大石 誠さん、インタビュアーの諏訪光二、芦田哲郎さん、藤村有一さん。

写真左から上野 隆さん、大石 誠さん、インタビュアーの諏訪光二、芦田哲郎さん、藤村有一さん。

フジフイルム GFX 50S

画像: フジフイルム GFX 50S

<注目ポイント>
●新開発5140万画素中判サイズのローパスレス「FUJIFILM Gフォーマット」センサー
●脱着式の電子ビューファインダー
●縦位置対応のチルト式背面液晶モニター
●システム専用の新開発「Gマウント」の「フジノンGFレンズ」

<Spec>
●有効画素数:約5140万画素●撮像素子:43.8×32.9mm ベイヤーCMOSセンサー●レンズマウント:フジノンGマウント●コントラストAF方式●脱着式電子ビューファインダー●背面液晶モニター:3.2型タッチパネル3軸チルト式●大きさ:W147.5×H94.2×D91.4mm●重さ:825g以下(バッテリー、メモリーカード含む)■実勢価格:80万4060円(税込・2017年6月中旬の編集部調べ)

「Xだからこそ撮れる被写体があるし、GFXじゃなきゃ撮れない被写体もある」

画像: 「Xだからこそ撮れる被写体があるし、GFXじゃなきゃ撮れない被写体もある」

上野 隆さん
富士フイルム 光学・電子映像事業部
営業グループマネージャー

コンセプト
最高の解像力、大きさ、重さ…ベストバランスを求めた“解”

【諏訪】今回キヤノン EOS 5DsRとソニーα7Ⅱ、ペンタックス645Zで比較したら、ノイズも含めて桁違いにGFX50Sが優秀でした。画素数が違うので、イーブン条件を自分の中でいろいろ作って比べたんですけど。
【上野】レンズは何をお使いでしたか?
【諏訪】キヤノンはLで、ソニーはGMで、ペンタックスは最新の広角系ズームです。背景を空で抜いた部分のノイズもぜんぜん良かった。解像も周波数が高くなってくるとイーブンになってましたけど、それ以外のところはぜんぜん勝っていましたね。ただ僕らからするとレンズ補正がある程度入った状態のJPEGなので、本当の素の状態の能力を知りたいっていうのもあるんです。では質問にいきます。富士はこれまでずっとAPS-CセンサーのXシリーズで攻めてきていたのに、ここにきてフルサイズという分野はパスして、一気に中判の世界を攻めて来ましたけど、そもそもなぜこっちに行こうとしたのでしょう?
【上野】我々はずっとAPS-Cで、しかもX- Trans CMOSだとか我々独自の色再現技術、信号処理、そしてフジノンレンズ…これをフィルムの過去の資産にとらわれない規格でフランジバックからなにからゼロスタートでやるということを有効活用し、フルサイズをわざわざ用いなくても同等の画質は出せるという信念の元に進めてきました。ただ我々がXを始めたときのフルサイズは24メガぐらいが一般的でしたが、数年あとにニコンさんの36メガが出てきた。我々が最初に想定していた時よりもレベルアップしている。となると、画素ピッチの関係上、APS-Cではサイズの壁、画素数の壁という限界が出てくる。しかも、その限界を超えたところに高画質な印刷とかビルボード、地下鉄のポスター、その他風景をより緻密に描きたいなど、まだまだいろいろな写真家のニーズがある。じゃあそこに応えていくには、さらに信号処理でとか特殊なレンズでというわけにはいかなくて、そこはもう一段階大きなセンサーのカメラを、というのがありました。
【大石】APS-Cというセンサーのサイズが決まっていますので、どんなに高い解像力を持ったレンズを組み合わせても、たとえばですけど開放で30メガの解像力が本気で出るかというと、そこには目の前に物理的な限界がある。フルサイズであっても本当に50メガの開放のF1.4で解像するのかというと、なかなか怪しいところがありまして、我々としてベストな解は、この大きなセンサーと大きなレンズだと。
【諏訪】ということは今後APS-Cは現在ぐらいの画素数の路線で固めていき、それ以上を求める方に大きいセンサーを用意した、と。
【大石】そうですね。
【上野】もちろん我々はあらゆるフォーマットを研究はしたんです。APS-Cを軸に1インチは、マイクロフォーサーズは、と。そしてフルサイズは確かに上に行きますけど、X-Transの実力を考えると性能のジャンプアップ幅的には狭い。また一眼レフメーカーさんのとった戦略は基本的にフルサイズとAPS-Cを同じマウントでやるのが一般路線です。それでフルサイズが上でAPS-Cが下みたいなヒエラルキーがイメージづけられている。
【諏訪】そういうイメージ、ありますね。
【上野】我々はGFXが出たあとでもAPS-Cが下でGFXが上だと思っていないんです。そこは並列なんです。APS-CのXだからこそ撮れる被写体、適している被写体があるし、GFXじゃなきゃ撮れない被写体もある。これは筆を選ぶかのように使い分けていただくものであって、どっちが上下ではないという概念がある。そことフルサイズとの差分を考えたら、我々は中判にジャンプアップすることでうまく棲み分け、我々の並列という考えがより具現化できるんじゃないかと、いろんな意見を社内でも戦わせつつ最後は全会一致で“よし中判にいこう”となったわけです。

「アマチュアとプロの区別はしていません。
ぜひアマチュアの方々にも使っていただきたい」

画像: 「アマチュアとプロの区別はしていません。 ぜひアマチュアの方々にも使っていただきたい」


大石 誠さん
富士フイルム 光学・電子映像事業部
営業グループマネージャー

【諏訪】具体的なターゲットはあるんでしょうか。
【大石】プロフェッショナルで言いますとファッション、コマーシャル、あるいはもっと高画素が欲しいような風景写真、あるいは一部にウエディングで、という方もいます。
【諏訪】アマチュアとプロのウエイトでいうとやっぱりプロがメインターゲットですかね。
【大石】アマチュアとプロを区別することはまったく考えていません。ぜひアマチュアの方々にも、たとえば本当にこの高画素で風景写真を撮っていただきたいと思っています。逆に言うと、そういう方達のために初めからズームレンズもラインナップしています。
【上野】アマチュアの方は、たぶん風景を撮る方が多いと思うんです。我々の得意なのはベルビア独特の風景の色だったり肌色だったりするので、アマチュアでポートレートを撮る人はどっちかと言うとXなのかなあと。あとプロの方には"ほとんどの仕事は2400万画素もあれば大丈夫"とよく言われるんですが、最近はトリミング耐性がより重要なポイントになっているんです。「現状、横位置で撮った写真を“じゃあここ抜きますね”とディレクターに平気でやられる。全身写っているのに“この表情いいね。顔だけ使うから”と。その抜いたあとに何画素残るかがすごい大事なんだ」と、いろんなプロの方に言われています。それこそ写真が素材になっていますよね。
【諏訪】写真家の意思は別として、プロの仕事では求められる要素ですよね。ところで、ちょっとスペックにこだわる人たちはX-Transが優秀なら、GFXにも大型のX-Transを搭載したらもっと良くなるのではと思いそうですが?
【芦田】たしかに、もうちょっとだけ良くなるかな。ただX-Transは画素数が少ないほうが効果が大きいんです。
【上野】けっきょくX-Trans配列は画質のブーストみたいなもので、実際に解像感ではなく本当にテストチャート撮影時の解像本数が上がるんです。それは2400万画素とか1600万画素だからこそ効果がすごく大きい。けっきょくモアレや偽色は情報を正確にキャプチャーしきれないから間違った模様とか間違った色になるんですけど5000万画素もある時点で、たとえベイヤー配列だとしてもキャプチャー能力が非常に高いんです。それでいて読み出し等は逆にシンプルで速くできる。あとはソフトウエアですね。
【大石】X-Transを信号処理していただくというのもすごく敷居が高いというか普通のソフトウエアベンダーさんだとなかなかやりきっていただけない部分があるんです。汎用なベイヤーだったら慣れているので、ある意味システムの拡張という意味でも対応しやすいかなと。
【上野】たぶんX-TransからのRAW現像をやりたいと言われたら、こちらが全部情報を開示してやらない限り難しいんじゃないですか。
【諏訪】僕なんかRAWで撮って全部自分で作っていきたいほうなんですけれども。

「カメラでできるだけのことをやってできるだけフォトグラファーの作品の質を上げていただきたい」

画像: 「カメラでできるだけのことをやってできるだけフォトグラファーの作品の質を上げていただきたい」

芦田哲郎さん
富士フイルム R & D統括本部
光学・電子映像商品開発センター 技術マネージャー

【芦田】そういう意味だと、このGFXはカメラ内RAW現像によるTIFF保存というのもできて、カメラ内で少しイジったデータをTIFFに落とし、それをパソコンでさらに細かく補正できるようにはしております。
【諏訪】これまでXシリーズはJPEGが表に強く出てたと思うんですけど、GFXに関してはどっちもという感じになるんですか?
【大石】もちろんどちらもですし、お使いいただくユーザーさんの選択だと思います。ただ我々は、やっぱりこのJPEG画質はかなり押していると言いますか…たとえば今まで数百枚、数千枚を撮らなきゃいけなかったファッションとかコマーシャル。それをRAW現像する時間を考えたら、ウチのJPEGで好みの色が出てくれるのであれば、ぜひそれを使っていただいて、ワークフローを短縮する手助けになればいいかなというのも思っています。
【芦田】営業から開発まで「フォトグラファーのことを考えてカメラを作る」という思いでやっています。「画像は素材。あとはPCでいくらでも作れる方は作れちゃいます」という提供の仕方はちょっと違います。カメラでできるだけのことをやって、できるだけフォトグラファーとしての作品をこだわって作っていただきたいと思います。

「軽さに驚かれるのは、グリップ性もかなり寄与しているんじゃないか」

画像: 「軽さに驚かれるのは、グリップ性もかなり寄与しているんじゃないか」

藤村有一さん
富士フイルム  R & D統括本部
光学・電子映像商品開発センター

軽量化
『実の軽さ』と『握ったときに 感じる軽さ』を追究!

【諏訪】今回GFXで撮ってみたら本当に軽くて、軽快で撮りやすい。スナップもバンバンいけます。工夫された点は?
【藤村】『実の軽さ』と『握ったときに感じる軽さ』という2つのポイントがあります。まず『実の軽さ』についてはミラーレスというのが大きなメリットです。一眼だとフランジバックとペンタにプリズムが入った部分だけでずいぶん重い。そして精度を出して保持するためにアルミのダイキャストで全部囲って強度を出しているので、すごいボリュームがあって重いものになる。対してミラーレスはショートフランジバックなので、マウントから撮像面まで短い距離で済みます。
【諏訪】ミラーレスの画期的なメリットですよね。
【藤村】『持ったときの軽さ』を実現するためには“いかに握りやすくするか”についてかなり試行錯誤しました。グリップの形や幅は、何度も小さくしたあとで、かなり微調整を繰り返しました。”設計的にはこのサイズまで小さくできます”というのをいったん作った後で、握ったときの指のかかり、操作のしやすさ、中心のバランスとかを見ながらミリ単位の板を入れていって、ベストの形を探りました。これは当然設計だけじゃなくて、商品企画もデザインも三位一体になりながら最適な形とサイズ感を出そうと。GFXはその2つのバランスがいいので、見た目にも小さく実際の重さも軽いんですけれども、持ったときに驚かれるのは実の軽さだけじゃなくて、グリップ性というところもかなり寄与しているんじゃないかなと思っています。
【諏訪】実際に使ってみて、かなり持ちやすかったです。
【大石】その構造形をロンドンに持っていって、男性と女性にも触ってもらって海外の方にもどの幅がいいか探りました。
【諏訪】小さければいいってものではない、と。
【藤村】そうですね。そこは数字だけを追わずに「道具としてのベストなサイズというのはどうだ」というのを話をしながら開発しました。
【諏訪】たくさんサンプルをとってアベレージで決めていくものなんですか?
【大石】最終的には我々の意志で決めていますけれども、やっぱりいろんな意見をいただきました。でも握りやすいにこしたことはないというのが結論でしょうか。とくに中判サイズなのでレンズも大きいし、電池位置も移動したので重心がなるべくカメラの真ん中に、右側のグリップ側に来ないかという検討もしました。その代わりに右手の3点で持ったときに一番軽くなるバランスを探りました。
【諏訪】聞くところによるとパーツに穴を開けたりして軽量化を図ったそうで。
【藤村】中のフレームとか放熱関係のフレームなんかは最小限に抑えて小さくしようとしています。一年以上、アクセサリーも含めた軽量化のことを気にしていました。EVFをどこまでボディにのっけて、どこまでを着脱にするか、と。今は3段重ねになっていますけれども、この解が見えないときは難儀しました。
【諏訪】光学ファインダーでないのについホコリに慎重になったりしましたが、面白いのは交換式ファインダー。アングルも自由になる。
【上野】光学連係が何もないのでどうとでもなるんです。極端な話、Wi-Fiさえあれば離れていても物理的にはできるはず。そういうところは目指したいなと思いますけれども。
【諏訪】その辺出るんですか。
【上野】もう携帯でできますよね。
【大石】なんでもできる可能性があるコネクタを作りました。だからきっと未来には(笑)

*記事は月刊カメラマン2017年3月号より。

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