リコーから発売された、話題のAPS-C一眼レフ=“PENTAX KP”。そのスナップシューターとしてのポテンシャルを、写真家・内田ユキオが紡ぎ出す!

ペンタックスは、もっとも長く一眼レフを作っているメーカーだ。ミラーレス隆盛の時代に何を思うのか?その回答がこのKPなのかもしれない。

画像: ■HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR  絞り優先AE(F4 1/400秒) マイナス1.0露出補正  WB:CTE ISO400

■HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR  絞り優先AE(F4 1/400秒) マイナス1.0露出補正  WB:CTE ISO400

ロケバスの窓ガラスから雨に滲む風車を見たとき、そこが文学の始まった場所だと思いだした。

画像: ■HD PENTAX-DA 70mm F2.4 Limited  絞り優先AE(F4 1/400秒)  WB:オート ISO400

■HD PENTAX-DA 70mm F2.4 Limited  絞り優先AE(F4 1/400秒)  WB:オート ISO400

「ラ・マンチャ」という名前を耳にしたとき、遠い記憶に響くのを感じた。小説「ドン・キホーテ」の舞台になった街だということはすぐわかった。自分を伝説の騎士だと信じ、風車に向かっていく男の滑稽な姿を描いた物語は、子どものころに何度も繰り返して読んだ。
それが近代小説の始まりだったことは、大人になってから知った。ただの滑稽な姿を描いたのではない。ドストエフスキーは「人間の魂の最も深い、最も不思議な一面が、人の心の洞察者である偉大な詩人によって、ここに見事にえぐり出されている」と称した。あれは人間の孤独と苦悩の物語だったのだ。

曇った窓ガラスの向こうに風車を捉える。すると、心のなかに懐かしさに似た想いが宿っているのを感じた。初めて見た景色なのに? 
ピントを合わせていくとき、その懐かしさが何だったのかがわかった。一眼レフを初めて手にしたときの、ファインダー越しに世界を見る喜びだ。

画像: ■HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR  絞り優先AE(F5 1/80秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート ISO800

■HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR  絞り優先AE(F5 1/80秒) マイナス0.7露出補正 
WB:オート ISO800  

良い写真を撮るためにカメラにもっとも求められることは、いつでも持っていられること。静音性や小型化はこのためにある。さらに言えば、いつでも持っていたくなること。デザインや質感はこのためのものだ。 

画像: ■HD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited  絞り優先AE(F4 1/125秒) マイナス1.7露出補正 WB:オート ISO200

■HD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited  絞り優先AE(F4 1/125秒) マイナス1.7露出補正 WB:オート 
ISO200

KPでは高感度特性の向上と手ブレ補正のおかげで、昼夜を問わずほとんど手持ちで撮れてしまう。時を追うごとに赤みを増していく空と雲の流れを見ながら、その瞬間を待った。

感動のピークは、良質なファインダーで被写体を見つけた瞬間に宿る。

画像: HD PENTAX-DA 16-85mm F3.5-5.6ED DC WR  絞り優先AE(F4.5 1/125秒) WB:オート   ISO200

HD PENTAX-DA 16-85mm F3.5-5.6ED DC WR  絞り優先AE(F4.5 1/125秒) WB:オート   ISO200

スペインを初めて訪れたのはもう十数年も前で、そのときはバルセロナだけだった。たしか11月だった。ここで鮮烈に覚えていることがある。

こんなに小さな街だとは知らず旅程を延長したことを後悔しながら、ガウディが設計したグエル公園で時間を持て余していた。すると大きな観光バスが近くに止まり、日本の団体客が降りてきた。公園の入口にあるレリーフの前で「ここがガイドブックの場所よ!」とひとりが叫ぶと、みんなで一斉にそこを撮り始めた。各々がカメラにそのガイドブックに似た写真を収めて満足すると、すぐにバスへと戻ってゆき次の目的地へと消えていった。

画像: ■HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4ED Limited DC WR  絞り優先AE(F4 1/80秒) マイナス1.3露出補正 WB:オート ISO3200

■HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4ED Limited DC WR  絞り優先AE(F4 1/80秒) マイナス1.3露出補正 
WB:オート ISO3200

デジタルになって、撮影のピークは背面液晶で画像を確認する瞬間になってしまったように感じる。ほんとうはファインダーで被写体を見つめる瞬間にこそ、感動のピークがあるべきなのに。
偶然と奇跡、さらに出会いといえば、旅を連想しないわけにはいかない。旅カメラに求められるものを突き詰めていくところからKPは作られたように見える。

ペンタックス KPのPにはポテンシャルの意味が込められているとのこと。一眼レフの未来に向けた可能性やいかに。

画像: 感動のピークは、良質なファインダーで被写体を見つけた瞬間に宿る。

内田ユキオ

新潟県両津市(現在の佐渡市)生まれ。公務員を経てフリー写真家に。タレントやミュージシャンの撮影のかたわら、モノクロで切り取った市井の人々や海外の都市のスナップに定評がある。2017年4月20日に発売が予定されている「PENTAX KP オーナーズBOOK」(モーターマガジン社刊)では、今回のようなKPをフィーチャーしたフォトエッセイに挑んでいる。
ブログ:http://perish.jugem.jp
ギャラリー:http://yuki-187.wixsite.com/yukio-uchida-gallery

リコー PENTAX KP

この2月にリコーから新発売されたペンタックス・ブランドのAPS-C一眼レフ。コンパクトでありながらも上位機の機能をそのまま継承。全天候(防塵・防滴 -10°耐寒対応)にして昼夜を問わず(最高ISO感度812000!)撮影できる「全域スナップシューター」として注目を集める。
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/kp/

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