死者の脳に残存する記憶を映像化することで未解決事件の捜査を行う「科学警察研究所 法医第九研究室」(通称「第九」)。その室長である薪 剛を生田斗真、その部下であり片腕となる青木一行を岡田将生が演じる。
殺害された被害者や、加害者の記憶を映像として引き出すという、やや背徳的行為と、そうまでしてでも犯罪者を追い詰めなければならないと考える捜査官たちの悲壮な信念に引き込まれる。

基本的には忠実な実写化、しかし原作コミックと若干異なる設定

清水玲子先生の原作を映画化。

原作と共通するのは女性と見紛うほどの美貌と、天才的な頭脳を持つ主人公 薪 剛と、彼に大きなトラウマを与えることになる連続殺人鬼”貝沼”の存在。
彼の部下として働く青木は、原作では明るく穏やかなエリートとして登場するが、映画ではどこか影があり笑顔が少ない神経質な男として描かれる。それがゆえに、原作では、幾度となく破綻しかける薪の精神を、その都度救う献身的な青木の明るさや優しさが、本作ではまったくない。

全体的に、原作コミックが持つ、儚いくらいのせつなさは薄い。が、その代わり、脳内の記憶を映像化した様子は、迫真的かつ幻想的で、実際にそんな技術が開発されたらそのように映るだろうと思わせる出来だ。

ただ、主人公の薪を演じる生田斗真の演技にケチをつけるところはまったくないが、同じジャニーズならHey!Say!JUMPの山田涼介あたりのほうが女性ぽくてよかったのではないかと思ったりはする。原作を知る者にとっては、清水先生の画力に基づく、さらりとした味わいが消えているからであり、常に険しいカオをしている生田・薪は、原作の薪の中性的でギリシア神話の美少年のような非現実感とは遠い気がするのである。

原作を忘れて観ればけっこう面白いはず

とはいえ、本作は面白かった。
148分はやや長すぎだし、脚本の粗は結構目立つが、他人の脳に入り込むというリスクや、凶悪犯罪に関わる人間たちの精神の禍々しさを、耽美的に描き出すことには成功していると思う。

人は誰でも秘密を抱えている。脳の記憶を覗き込むテクノロジーを使って捜査を行う「第九」のメンバーだが、同時に自分たちが抱え込む秘密をもさらけ出してしまうことになる。その本質的なテーマを使って、映像化しているところは評価すべきだろう。

原作との比較。それさえなければ、面白く興味深く楽しめるはずだ。

画像1: 原作を忘れて観ればけっこう面白いはず
画像2: 原作を忘れて観ればけっこう面白いはず
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