今では希少な角目 1灯ヘッドライトにビキニカウル。カワサキ「Z」の歴史を今に受け継いできたZRXシリーズは、2016年8月に発売された、この「ZRX1200ダエグ ファイナルエディション」を最後に姿を消します。
オートバイの本当の価値って何でしょうね? 最後のZRXは、それを教えてくれるような気がします。

Kawasaki ZRX1200DAEGは、日本だけでしか買うことができません

画像1: Kawasaki ZRX1200DAEGは、日本だけでしか買うことができません

2016年8月にZRX1200ダエグのファイナルエディションが発表されてから、もう半年ほどが経ちました。あと何人のライダーが、このバイクを「新車」という最高の状態で乗れるという幸運を手にすることができるのでしょうね? なぜそんなことを言うのかって……たぶん、もうZRXに乗るのは最後になるだろうな、と思ってカワサキさんからお借りしたんです。

そうして久しぶりに乗ったら、改めて感動しちゃったんですよ。センチメンタルなのかもしれませんけど、それでも確かに「オートバイとして大事なもの」がZRXの中にはあるな、と感じたんです。

画像2: Kawasaki ZRX1200DAEGは、日本だけでしか買うことができません

角目1灯にビキニカウルというこのスタイル、どうなんでしょうか? オートバイをよく知っている人にとってはカワサキらしさの塊ですよね。ローソンレプリカZ1000R、もしくはAMAで初タイトルを獲ったエディ・ローソンのZ1000Jかもしれません。こういうの、20代とかの若いライダーにはどう見えるんでしょう。クラシック感が一周ぐるっと回って、新しい!って感じるのかな?

でもひとつ言えるのは、このデザインは今やZRXにしか無いってこと。ONE&ONLYですね。

ちなみに、このZRX1200DAEGっていうオートバイは国内専用モデルです。大排気量なんだから海外でも需要がありそうなのに、日本でしか売っていません。何年か前にカワサキモータースジャパンの社長さんとお話したときに仰ってました。

「Zは我々の宝のひとつなんです」って。

カワサキは日本のオートバイ乗りを本当に大事に考えていて、だから国内専用モデルとしてZRX1200ダエグをラインアップしていたんです。グローバル化が急速に進み、排ガス規制も厳しくなる中では国内専用モデルはビジネスとしてはキツいはず。でも、それがカワサキの心意気ってやつだったんですね。

画像: 「Zは我々の宝のひとつなんです」って。

温かみがあるのに、走りが鋭い。カワサキらしいオートバイ

排気量は1164cc。ビッグネイキッドだと1300ccも普通なんですけど、その中ではいちばん小さい排気量です。でも、エンジンは気持ちよく吹けあがり、最高出力110馬力に届きます。この数字は同カテゴリの中ではナンバーワン。排気量が小さくてもパワーで負けない。そういうところもカワサキらしさですね。

エンジンフィーリングはとにかく軽いです。ビッグネイキッドはもうすこし重厚な加速をするキャラクターが多いんですけれど、ZRXにはもっとピュアに「ロードスポーツ」を感じます。4気筒らしくスムーズに伸びていって、6000回転あたりからもう一段、パワーがあふれてくるようでした。

画像: エンジンのヘッドカバーは質感の高いリンクル塗装。ファイナルエディションのみのスペシャルな仕様です。

エンジンのヘッドカバーは質感の高いリンクル塗装。ファイナルエディションのみのスペシャルな仕様です。

国内専用ですから180km/hのリミッターが当然ついていますけれど、高速道路で時速100kmで走っている感覚からすると、6速ギアを使うまでもなく、5速でも(4速でも?・笑)余裕でリミッターに届くだろうな、と感じます。アクセルを開けていくときの滑るような加速。あっという間にスピードがのっていくのが最高の快感でした。それでいて、リラックスして時速80kmフラットで流すときも、エンジンがヴヴヴヴヴっと股の下に感じられて心地良いんです。精密さと機械の温かみを同時に感じることができるエンジンです。

このエンジンは元をたどれば伝説の名車GPZ900R系の発展型というか、最終版みたいなものですからね。味わいも高性能も備えていて当然といえば当然。まったく名機という他ありません。

画像: カヤバ製のリアサスペンションはノーマルではソフトな快適セッティングです。プリロード、伸び&圧側減衰調整もできるフルアジャスタブルなので、コーナリング重視派はセッティング変更もできます。まあ、ノーマルのセッティングで十分ですけど(笑)

カヤバ製のリアサスペンションはノーマルではソフトな快適セッティングです。プリロード、伸び&圧側減衰調整もできるフルアジャスタブルなので、コーナリング重視派はセッティング変更もできます。まあ、ノーマルのセッティングで十分ですけど(笑)

サスペンションはソフトで、高速道路の継ぎ目などもしなやかに吸収してくれます。シンボルでもあるビキニカウルも「こんなに防風性が高かったっけ?」と思うくらいに優秀。ちょっとしたツアラーかと思うくらいの快適な走りを楽しめます。

うーん、高速道路で300kmくらいなら一度も止まらずに走れちゃいそうかも。

今はものすごい快適さを誇る高級ツアラーとかアドベンチャーバイクがありますけれど、こうやってスタンダードなオートバイに乗ると、そこまで必要なのかな?って感じちゃいますね(笑)

なぜかコンパクトに感じる車体と、ほどよくエッジの効いたZRXのハンドリング

画像: なぜかコンパクトに感じる車体と、ほどよくエッジの効いたZRXのハンドリング

久々のZRX1200DAEGの快適さに驚きつつ、高速道路から峠道へ。いやぁ……高速道路は快適ですけど、やっぱり本領はコッチですね。なんとまあ、ヒラヒラと右に左に切り返せるオートバイでしょうか。なんと言うか、1200ccクラスで立派に大きいオートバイなんですけれど、乗っている限りは不思議と小さく感じるのがZRXの良いところです。グローバル基準じゃなくて、日本専用設計っていうのも理由なんでしょうかね? ハンドル幅やシート位置、タンクの形状も日本人の体格にピタリと馴染むんです。大きさを持て余さない感じがすごくイイ!

ハンドリングはネイキッドとして考えると、かなり鋭いと言っていいと思います。スッっと前輪が向きを変えるんです。そういえば、昔はスーパースポーツを峠で追い回せるからって「戦うネイキッド」なんて言われたりもしてましたね。

スーパースポーツよりは優しくてライダーを怖がらせたりはしませんけど、ソノ気になればけっこうイケる。重厚どっしり、ではありません。それが欲しければ他のネイキッドが良いでしょう。でもカワサキは違うんです。それがZRXというオートバイのアイデンティティのひとつなんですから。

画像: 普段は快適なポジション。膝の曲がりも余裕があって長時間もつらくありません。ワインディングではもうすこし後ろに座って前傾になりたくなります。ハンドルの幅や位置、垂れ角が完璧。この乗車姿勢が扱いやすさを生んでいる理由のひとつです。

普段は快適なポジション。膝の曲がりも余裕があって長時間もつらくありません。ワインディングではもうすこし後ろに座って前傾になりたくなります。ハンドルの幅や位置、垂れ角が完璧。この乗車姿勢が扱いやすさを生んでいる理由のひとつです。

最後の『かっこいい日本のオートバイ』

画像: 最後の『かっこいい日本のオートバイ』

オートバイのデザインは時代に合わせて変わっていきますけれど、本当にカッコいいオートバイっていうのは、いつの時代に見てもカッコいいものです。このシンプルさは10年後も20年後も、たぶんやっぱりカッコいいまま……なんでしょうね。

ZRXの時間は、このファイナルエディションを最後に止まりますが、それはつまり「これ以上、古くならない」ということなのだとボクは思っています。時が経つにつれて価値が変わらないどころか、上がっていく。このオートバイも、そういう名車になる可能性を秘めています。

そしてグローバル化がメインの今、国内でしか買えないZRX1200DAEGファイナルエディションは「最後のかっこいい日本のオートバイ」となるかもしれないですね。

このオートバイと暮らすのは、きっと幸せだと思います。

パーフェクトな装備に守られて快適な旅を楽しむのも良いし、電子制御に支えられてサーキットで、スピードに燃えるのも良いと思います。でも、オートバイに乗せられているのではなく「一緒に走る」ならば、ZRX1200DAEGっていうのは、最高のパートナーになってくれるはずです。

だって、ZRXにはオートバイの醍醐味がぎっしり濃厚に詰まっているんです。今、クルマはどんどん自動化が進んでいますけれど、それが完成したらクルマは移動する部屋になるでしょう。でも、オートバイはそうじゃない。風を切って走って、ライダーが乗りこなすものです。そういう意味で、シンプルに感動を味わえるこのオートバイには、単なる工業製品以上の価値があると思っています。

だからZRXっていうオートバイがボクは好き! これからもずっと大好きです。

みなさんはどうですか? このZRXシリーズのオーナーの人たち。カワサキファンの人たち。いま、このファイナルエディションが気になっている人たち。

そういうオートバイ乗りたちの『好き!』も聞いてみたいな、なんて思っています。

それでは最後に、たくさんの感謝をこめて、ライムグリーンのZRXに花束を。

画像1: このオートバイと暮らすのは、きっと幸せだと思います。
画像2: このオートバイと暮らすのは、きっと幸せだと思います。
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