【オートバイ2016年10月号より抜粋】

今月はホンダの400Xと、NC750Xが主役。いずれも乗りやすさに定評のあるモデルだが、その理由はどこにあるのか? 具体的に迫っていこう! それはさておき、25歳の沙織ちゃんを前にやや頬が緩みがちな、伊藤さんの表情にもご注目ください。

画像: 伊藤真一(いとうしんいち) '66 年宮城県生まれ。'88 年ノービスから国際A 級に昇格と同時にHRC ワークスチームに抜擢される。以降WGP500クラスの参戦や全日本選手権で長年活躍。現在はメーカーの契約ライダーとして市販車、レーサーを問わずマシン開発に携わるほか、レーシングライダーの若手育成にも取り組んでいる。 大関沙織(おおぜきさおり) レース会場で応援を盛り上げるHondaライダーズフレンドでありながら、女優も務め、おまけに今年はボクシングのプロテストにも合格した沙織チャン。今春大型二輪免許を取得し、愛車購入にも燃えている。

伊藤真一(いとうしんいち)
'66 年宮城県生まれ。'88 年ノービスから国際A 級に昇格と同時にHRC ワークスチームに抜擢される。以降WGP500クラスの参戦や全日本選手権で長年活躍。現在はメーカーの契約ライダーとして市販車、レーサーを問わずマシン開発に携わるほか、レーシングライダーの若手育成にも取り組んでいる。
 
大関沙織(おおぜきさおり)
レース会場で応援を盛り上げるHondaライダーズフレンドでありながら、女優も務め、おまけに今年はボクシングのプロテストにも合格した沙織チャン。今春大型二輪免許を取得し、愛車購入にも燃えている。

お互いにまったく違う個性を持ったツインエンジン

今回は400XとNC750Xという、ホンダのミドルクラス・アドベンチャー系モデルを比較試乗してみました。どちらも、本格的オフロード走行もOKのデュアルパーバスモデルというより、アドベンチャー的スタイリングと乗り味を楽しむツアラー、と言った方がいいでしょう。ホンダのラインアップの中でも、ロードスポーツモデルとして区分されています。

そうそう、いきなりちょっと個人的な話ですが、じつは今、本気で欲しいと思っているバイクの一台がNC750Xなんです。なので今回の試乗では、どちらかというと750Xに少々肩入れ気味のインプレになってるかもしれませんが、ご了承ください(笑)。

試乗した最初の印象をひとことで言うと、750Xは「扱いやすく、取っ付きやすいバイク」だし、400Xは「しっとりした乗り味の、乗りやすいバイク」。

エンジンキャラクターから比較すると、400は比較的高回転型で、750は低中回転型です。排気量の違いを考えれば当たり前というか、小さい排気量で力を出そうとすれば、回転数で馬力を稼がなくちゃならないのは当然のこと。400Xはスペック上、ピークパワーを9500回転で発生、実際、1万回転を少しオーバーするくらいまで回ります。ただしトップエンドは、ちょっと苦しげに回る印象を受けたかな。特にロングツーリングなんかだと、高回転型は疲れるって人も多いと思いますが、そこは仕方ないでしょうね。でも、法定速度内の走りにはなんら問題はないし、高速道路での追い越しも不足感はないですから、充分に良く出来たエンジンです。

馬力は400Xが46PSで、750Xが54PS。排気量ほどの差がないように感じますが、トルクは3・8㎏-mと6・9㎏-mとかなりの差があり、この差が走りの違いに大きく現れています。ボア×ストローク比がロングストロークで、270度位相(400Xは180度)の750Xは、レブリミットは低いけど、そこまでがトルクの塊のようにスパン!と回る。今の自分は、こういうエンジンの方が好きですね。「レブリミットが早い」という意見もよく聞くけど、それはシフトアップすればいいだけの話ですから。

もちろん400Xにも特有の良さがあります。エンジンの回転域を下から上まで使えるので、見晴らしのいいコースで、ガンガン上まで回して走ったりすると、かなり気持ちいいはず。750Xはパワーバンドの上限が低く、それを上回るとすぐトルクも落ちるので、その範囲内でシフトアップしなくちゃいけないんですが、400Xは2速や3速で、回転を上げても下げても上手く使えるから、アクセルワークの練習にもなると思います。それに、回転がずっと伸びやかに上がっていく高揚感は、こうした高回転型エンジンならでは。このフィーリングに慣れてから、750Xに乗ると、「あれ、もう終わり?」って感じるでしょうね。

画像: 撮影時にちょっとしたオフロードを走行した後、「400Xは舵の入り方が自然でとてもいい」と伊藤さんは語った。CBR400RやCB400Fに比べると、リアサスの変更によりしっとりとした接地感が感じられた様子。またそれに伴うジオメトリーの違いが、舵の入り方を自然にしていて、ウエットな路面や、未舗装路でもフラットな場所なら不安なく走れたようだ。

撮影時にちょっとしたオフロードを走行した後、「400Xは舵の入り方が自然でとてもいい」と伊藤さんは語った。CBR400RやCB400Fに比べると、リアサスの変更によりしっとりとした接地感が感じられた様子。またそれに伴うジオメトリーの違いが、舵の入り方を自然にしていて、ウエットな路面や、未舗装路でもフラットな場所なら不安なく走れたようだ。

画像: プライベートでNC750XのDCTを購入予定という沙織ちゃんとは、NCの乗りやすさ、扱いやすさについてトークが盛り上がっていた様子です。

プライベートでNC750XのDCTを購入予定という沙織ちゃんとは、NCの乗りやすさ、扱いやすさについてトークが盛り上がっていた様子です。

足周りの軍配はしっとり感のある400X

足周りは、400Xの方がいいですね。特に、リアの全体的な動きがいいです。とはいえ750Xがダメという訳では全然なくて、先に750Xに乗って「これはいいな」と感じていたところ、続けて400Xに乗ってみたら、「あれ、こっちの方もかなりいいぞ」ってなっちゃった感じです(笑)。750Xも、フロントサスペンションに新たにデュアルベンディングバルブを採用して、従来モデルに対してユーザーから出ていた、足周り強化を求める声にきちんと応えている。だけど個人的には、400Xのリアサスの乗り味の良さが印象に残りました。なんというか、しっとりしているんですね。

最近、仕事の関係でCBR400Rをしばらく借りていて、プライベートでもちょこちょこ乗ってるんですが、同じ車体のCBR400Rと比べても、400Xの乗り心地はいいです。スタイリングはCBR400Rの方が好みなので、CBRに400Xのリアサスを付けたいくらい(笑)。でも、400Xはシート高を下げるためにリアサスペンションのホイールトラベルを短縮して、そのリカバリーとしてダンパーのグレードを上げているようなので、無理なリクエストでしょうね。キャスター角も寝ちゃうだろうし。

いかに路面のギャップをいなしていくかなど、乗り心地を左右するいちばん大きな要素は、やはりサスペンションユニットの性能です。ただしサスペンションは、中に入ってるオイルの価格や、バルブの厚みなんかも含めて、価格に比例して高性能になる傾向がある(笑)。だけど市販車には、どうしても価格設定に合わせたコスト制限があります。750Xのデュアルベンディングバルブ採用は、その決められたコストの範囲内で、最大限に努力した結果だと思いました。NCというキャラクターとの相性も良いと思いますよ。

ちなみに、ちょっと細かいことを言えば、乗り心地を決めるのは、サスペンションだけではないんです。チェーンの張りだとか、スロットルの調整だとか、様々な複合的要素が絡みあって影響します。それにしても、市販モデルを開発している技術者たちは、本当にサスを含めたこれらのセッティングの仕方を、熟知していると感心します。例えば、400Xはフロントサスペンションにプリロードアジャスターを装備していますが、今回乗っていて、調整の必要を全然感じなかったんです。これは、いかにストック状態で、良く出来ているかの証でしょう。どんなシチュエーションでも、どんなライダーが乗っても、ある一定のレベルで満遍なく快適に乗れるようにするって、実は物凄くハードルが高いこと。自分もセッティングについて全てわかってるとは言えないですし、モトGPに参戦しているような現役のプロレーサーやメカニックでも、実はその辺を深く理解していない人もいるんです(笑)。それを考えると、本当にスゴいなと思います。

HONDA 400X<ABS>(NC47)

画像: HONDA 400X<ABS>(NC47)

HONDA 400X<ABS>(NC47)主要諸元
 
全長×全幅×全高 2085×830×1335㎜
ホイールベース 1410㎜
シート高 795㎜
車両重 196㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
総排気量 399cc
ボア×ストローク 67.0×56.6㎜
圧縮比 11
最高出力 46PS/9500rpm
最大トルク 3.8kg-m/7500rpm
燃料タンク容量 17ℓ
変速機形式 6速リターン
キャスター角 25°55′
トレール量 105㎜
タイヤサイズ(前・後) 120/70ZR17・160/60ZR17
ブレーキ形式(前・後) ディスク・ディスク
価格 78万1920円(ABS・マグナレッド)

画像: 7月号でCBR400Rを試乗した時も高評価だったツインエンジンは、400Xでも「やっぱり良いエンジンですね」と高得点。しっとりしたリアの足まわりと相まって乗りやすさ抜群とも。

7月号でCBR400Rを試乗した時も高評価だったツインエンジンは、400Xでも「やっぱり良いエンジンですね」と高得点。しっとりしたリアの足まわりと相まって乗りやすさ抜群とも。

画像: リアサスペンションはCBR400RやCB400F(生産終了)に比べてホイールトラベルを短縮。代わりにダンパーのグレードを上げている。そのため乗り心地がしっとりしたものになっている。

リアサスペンションはCBR400RやCB400F(生産終了)に比べてホイールトラベルを短縮。代わりにダンパーのグレードを上げている。そのため乗り心地がしっとりしたものになっている。

HONDA NC750X<ABS>(RC90)

画像: HONDA NC750X<ABS>(RC90)

HONDA NC750X<ABS>(RC90)主要諸元

全長×全幅×全高 2230×845×1350㎜
ホイールベース 1535㎜
シート高 830㎜
車両重 220㎏
エンジン形式 水冷4ストOHC4バルブ並列2気筒
総排気量 745cc
ボア×ストローク 77.0×80.0㎜
圧縮比 10.7
最高出力 54PS/6250rpm
最大トルク 6.9kg-m/4750rpm
燃料タンク容量 14ℓ
変速機形式 6速リターン
キャスター角 27゜00′
トレール量 110㎜
タイヤサイズ(前・後) 120/70ZR17・160/60ZR17
ブレーキ形式(前・後) ディスク・ディスク
価格 79万3800円(ABS・グリントウェーブブルーメタリック)

画像: 「アクセルやクラッチといった操作系がすごくリニアに反応して、Honda特有の扱いやすさがある」と、初心者も臆せず乗れるNC750Xの取っ付きの良さをべた褒めしていた。

「アクセルやクラッチといった操作系がすごくリニアに反応して、Honda特有の扱いやすさがある」と、初心者も臆せず乗れるNC750Xの取っ付きの良さをべた褒めしていた。

画像: NCシリーズの特徴であるラゲッジスペースは、これまでの21ℓから22ℓに容量を拡大。通常のフルフェイスヘルメットは難なく収納できるだけに「やっぱりあると便利だよね」。

NCシリーズの特徴であるラゲッジスペースは、これまでの21ℓから22ℓに容量を拡大。通常のフルフェイスヘルメットは難なく収納できるだけに「やっぱりあると便利だよね」。

最強の「日常」バイクとして使えそうなのは…

また、この2台を試乗して感じた大きな違いは、750Xのエンジンは、低重心を狙ってシリンダーが前傾角62度と傾いているので、フロントに加重がドーンと乗っていることです。重量配分が前に大きくて、フロントの接地面に常に加重が乗っているイメージというか。キャスター角が27度と寝かしてあって、この加重バランスですから、もう少しキャスターが立っていたら、ちょっとフロント加重がいきすぎていたはず。でも現状は、1535㎜と長めのホイールベースもあって、直進安定性にも良い作用を及ぼしています。今回一緒に乗った沙織さんはビギナーライダーですが、彼女も、特に高速走行で750Xの安定感を感じた、と言っていました。

ただ、ホイールベースの長さにはデメリットもあって、(特に小さい半径の)コーナリングには影響があると言われます。でも750Xは普通に良く曲がるし、長さのデメリットを感じません。トルクに厚みがあって引き出しやすいので、車体のピッチングを作りやすい。その特性を使ってひょいって曲げられるんですよ。ちょっと昔のモデルですが、ホンダのX4なんかも重心が低くて、ホイルベースがメチャクチャ長かったけど、よく曲がるバイクでした。その辺の味付けは、ホンダが得意とするところなのかもしれないですね。

また750Xは、電子スロットルかと勘違いしたくらいなので、インジェクションのセッティングは大変優秀な部類なんだと思います。ツーリングはもちろん、街中でも、どちらを使いたいか選ぶなら、僕は750Xですね。しかも750Xは、「よくこの値段で、これだけのバイクを出したな」って感じるくらい、質感的な意味のコストパフォーマンスも高いと思います。クラッチのマスターシリンダーとか、ミラーの付け根の作りとかが、一体で成形されているのも凄くいい。俺はそういう細かい部分の作りがしっかりしていないと、ガッカリしちゃう方なので、値段なりのプアさがないのは、嬉しい驚きでしたね。

ただし何度もいうけど(笑)、400Xもちゃんと良いバイクで、ちょっとした未舗装路も普通に走れるし、バランスもいいんです。リクエストとして、特に初心者ライダーは、自分が何速で走っているのかわからなくなりがちなので、メーターにギアポジ表記が欲しい、というのはあるけれど、それ以外の不満はありません。

前号でも言いましたが、自分はレプリカ世代なので、これまでずっと好きなバイクはカウル付きばかり。正直、こっち系のバイクはあまり好みではなかったんです。でもアフリカツインに乗って、こういうタイプのバイクもいいなって思うようになった。そんな自分が、なぜ今750Xが欲しいのかというと、日常使うバイクとして使えるから。750Sと迷うところはあるにせよ、どこに行くにもいちばん気軽に乗れるだろうし、バイクに乗ろうとなった時に、いちばん最初に掴むキーが750Xだと想像できるんです。それくらい、取っ付きやすいバイクだと思う。ヘルメットがラゲッジスペースに収納できるのも、地味だけど、やっぱり便利ですしね。

なんだか、今月も褒めてばかりになっちゃいましたが(笑)、実際、本当に2台とも良く出来ているんです。特にNCに関しては、1万㎞、2万㎞と走った時にどう変化するのかも気になります。教習車に採用されてるくらいなので、おそらくかなり丈夫だとは思うのですが。そう考えると、本当にコスパの高いバイクですよね。

(写真/松川 忍、まとめ/斉藤ハルコ)

This article is a sponsored article by
''.