2007 年に登場した初代XF は全世界で145 もの賞を獲得し、2014 年までに約28 万台を販売するヒット作となった。そのジャガーのラグジュアリーサルーンが2 世代目になった。新型は美しいプロポーションと軽量モノコックボディ を手に入れ、さらに新開発のディーゼルエンジンを揃えたラインナップや先進の運転支援システムの装備など大きな進化を遂げている。(Motor Magazine 6月号)

画像: ジャガーXF25t プレステージ

ジャガーXF25t プレステージ

XFとXE 国内ロードインプレッション

昨年夏のブランニューモデル、XEのデビューからまだそれほど経っていないのに、今度は主力のミッドサイズセダン、XFのフルモデルチェンジである。

ジャガーの商品攻勢、いよいよ本格化してきた。ブランドへのエントリーとしてXEが登場したことで、XFは上級移行を果たしたとジャガーは謳う。今回は2グレードに乗る長距離テストドライブで、その実力を確かめることができた。

画像: ジャガーXF 25t プレステージ:全長4965mm×全幅1880mm×全高1455mm、ホイールベース2960mm、車両重量1720kg、最小回転半径5.7m、ラゲッジルーム容量540リッター、エンジン 直列4気筒ターボ、エンジン型式 204PT、ボア×ストローク87.5×93.1mm、圧縮比10.0±0.5、最高出力177kW(240ps)/5500rpm、最大トルク340Nm/1750rpm、JC08モード燃費 11.4km/リッター、トランスミッション 8速AT、タイヤサイズ245/45R18、車両価格668.0万円

ジャガーXF 25t プレステージ:全長4965mm×全幅1880mm×全高1455mm、ホイールベース2960mm、車両重量1720kg、最小回転半径5.7m、ラゲッジルーム容量540リッター、エンジン 直列4気筒ターボ、エンジン型式 204PT、ボア×ストローク87.5×93.1mm、圧縮比10.0±0.5、最高出力177kW(240ps)/5500rpm、最大トルク340Nm/1750rpm、JC08モード燃費 11.4km/リッター、トランスミッション 8速AT、タイヤサイズ245/45R18、車両価格668.0万円

最初にキーを受け取ったのは最高出力240psの2Lガソリンターボエンジンを搭載するXFプレステージ。実車を目の前にして、まず感じたのは、スタイリングがとても伸びやかで、格段にスタイリッシュになったということだ。

意外にも4965mmの全長は先代よりも10mm短い。しかしながらホイールベースの50mm延長と、フロントオーバーハングの実に66mmもの短縮、さらには全幅の拡大、全高の低下などが相まって、実に美しいフォルムを描き出しているのである。先代のイメージを継承しながら、すっきりと洗練されたディテールも好印象。個性派ひしめくこのセグメントの中で、きっちりと存在感を発揮している。

軽量ボディがもたらす卓越した走り

画像: 最大190kgの軽量化を達成した。

最大190kgの軽量化を達成した。

見所はデザインだけではない。新しい基本アーキテクチャーを採用したことで、ボディ骨格はついにアルミ化された。正確にはボディ全体の75%をアルミ製とすることで、新型XFのボディは22000Nm/degという驚異的なねじり剛性の獲得と、最大190kgもの軽量化を達成しているのである。

シャシも基本的にXEに倣う。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアが垂直方向のコンプライアンスをソフトに設定しながら高い横剛性の確保を可能にするインテグラルリンク式となる。

画像: スタートボタンは動物のジャガーが休息しているときの鼓動と同じ1分間に72ビートを刻む。センター画面はスマホのような操作が可能だ。

スタートボタンは動物のジャガーが休息しているときの鼓動と同じ1分間に72ビートを刻む。センター画面はスマホのような操作が可能だ。

ホイールベースの延長は室内空間の拡大に効いている。前席スペースはほぼ現状維持だが、後席はレッグルームが15mm広くなった。しかも、クーペのようなルーフラインを踏襲しながら、頭上空間も27mm拡大しているのだから立派と言っていい。

インテリアは先代から続くクルーザーの船室のように乗員をぐるりと取り囲むような造形を踏襲しつつ、ディテールはすっきりとまとめられている。クオリティも上々である。

メーターはもはやアナログ計ではなく、代わりにTFTモニターを採用。地図を含む様々な表示を任意で選択できる。そしてインフォテインメントシステムにはついに10.2インチタッチスクリーンを使い、スマートフォン感覚の操作が可能な「InControl TouchPro(インコントロール タッチプロ)」が導入された。

かなり完成度の高いXFのインジニウム ディーゼル

先進安全/運転支援デバイスも最新のものが揃う。緊急自動ブレーキ、滑りやすい路面で安定したトラクションを確保するASPC(オールサーフェイスプログレスコントロール)は標準装備。レーンキープアシスト、駐車支援のパーキングアシストも用意される。もはや、この点でも不満を述べる余地はない。

従来と同じく、キーを持って車内に乗り込むと、スタートボタンが心臓の鼓動のように点滅して、押すことを促してくる。エンジンを始動させるとダッシュボード左右のエアベントの蓋が回転しながら開き、ダイヤル式のシフトセレクターがせり上がってきて、すべての準備が整う。

画像: 75%にアルミニウムを使用した軽量モノコックボディ。

75%にアルミニウムを使用した軽量モノコックボディ。

その走りは、とにかく軽快という言葉に尽きる。操舵すると、軽いロールを伴いながら、ノーズが抵抗感なくインに入っていく。そして出口まで、切り足しの必要を感じさせないまま、すんなり立ち上がっていけるのだ。これには優れた基本性能はもちろん、トルクベクタリング・バイ・ブレーキングなどの電子制御の恩恵も、きっと大きいに違いない。

画像: 2L直4ターボエンジン。他に3Lスーパチャージャー、2Lディーゼルターボが揃う。

2L直4ターボエンジン。他に3Lスーパチャージャー、2Lディーゼルターボが揃う。

画像: 緊急自動ブレーキや車線逸脱警告、360°ビューなど最新の安全装備を採用する。

緊急自動ブレーキや車線逸脱警告、360°ビューなど最新の安全装備を採用する。

画像: プレステージに標準装着するのは8J×18インチのFAN 5スポークアルミホイール。

プレステージに標準装着するのは8J×18インチのFAN 5スポークアルミホイール。

さらにペースを上げ、積極的に荷重移動を意識していくと、本当に欲しい分だけ、わずかにリアがスライドして向きを変えるのを助けてくれる。動きに唐突感はなく、まさに意のまま。全長5mに迫るセダンとは思えないほどの身のこなしには本当に感服してしまった。

エンジンも手応えは上々。全域で段付き感なくトルクがスムーズに出てくるし、パワーの絶対値も十分。吹け上がりも爽快で、しっかりスポーツできた。

溌剌としたXEと上質なXFキャラクター分けは明確である

続いては、XFディーゼル ピュアに試乗した。こちら、最大トルクが430Nmもあるだけに、走り出した瞬間から余裕は桁違い。アイドリング付近でのトルクの落ち込みもなく、ドライバビリティの煮詰めは相当なレベルにある。

騒音、振動の抑えも巧みで、もはやディーゼル云々ということを意識させられることはほとんどない。エンジン自体もそうだし車体側の対策も万全なのだろう。現状、この点では同クラスの中でも秀でているように思う。

しかも、いざ思い切り右足に力を込めれば、トップエンドでは抜けの良い伸び感を満喫することまでできるのだ。新設計のインジニウムディーゼル、完成度は相当に高い。

画像: 12.3インチのTFTインストゥルメントクラスターにはフルスクリーンで3Dマップビューの表示が可能である。

12.3インチのTFTインストゥルメントクラスターにはフルスクリーンで3Dマップビューの表示が可能である。

画像: メーターは4種類のグラフィックテーマから選択が可能となる。中央に速度計は配置され、左は時計モード。

メーターは4種類のグラフィックテーマから選択が可能となる。中央に速度計は配置され、左は時計モード。

画像: Sモードにするとセンターにタコメーター、右にスピードメーターという配置に変化する。左側はロゴモード。

Sモードにするとセンターにタコメーター、右にスピードメーターという配置に変化する。左側はロゴモード。

XFには他にも、最高出力340psを発生する3LV型6気筒直噴スーパーチャージドユニットを積むR-Sport、ポートフォリオ、そしてその380ps版を積む最高峰のXF S が設定される。これらも別の機会に試したのだが、全域でさらに充実したトルクと、マルチシリンダーならではの艶やかな吹け上がりが相まって、しっとり滑らか、しかも力強い走りを楽しめた。

妥協のない英国クラフトマンシップと現代的なデザインの融合した新型XF。

率直に言って4気筒のガソリン、ディーゼルでも動力性能は十分。しかしこれらの6気筒モデルも、価格に見合った価値はちゃんと備わっているなと感じさせたのである。

2台のXFを試したあと、販売が開始されたばかりのディーゼルエンジンを搭載するXEのハンドルを握ることもできた。エンジンスペックはXFと同等で、車重が100kg軽いだけに、その走りは余裕綽々。騒音、振動はXFよりは意識させられるが、力強さが伴っているだけに、すぐに気にならなくなった。

画像: 始動とともにせり上がる「ジャガードライブセレクター」。トランスミッションは8速ATを搭載。

始動とともにせり上がる「ジャガードライブセレクター」。トランスミッションは8速ATを搭載。

画像: 40:20:40分割可倒式リアシートを採用し、トランク容量はVDA値で540ℓを確保する。

40:20:40分割可倒式リアシートを採用し、トランク容量はVDA値で540ℓを確保する。

フットワークは登場当初の記憶よりもわずかに落ち着きが出た感じ。とは言え、きわめて正確性に富んだターンイン、ガチッとした横剛性でそれに応えるリアサスペンションが織りなす俊敏な走りは相変わらず最高の喜びをもたらしてくれた。

XFとのキャラクター分けは明確で、端的に言って溌剌としたXEに対して、上質なXFという印象。しかし、その根っこには同じスポーツマインドが流れているのである。

画像: プレステージにはトーラスレザーシートが標準装備。取材車のカラーとステッチはラテとなる。

プレステージにはトーラスレザーシートが標準装備。取材車のカラーとステッチはラテとなる。

画像: 後席は従来比でニールームを24mm、レッグルームを15mm、ヘッドルームを27mm拡大。

後席は従来比でニールームを24mm、レッグルームを15mm、ヘッドルームを27mm拡大。

ジャガーはゲームチェンジャー

間違いなく言えるのは、プレミアムセグメントにおいて、ジャガーの存在感がようやく再浮上しつつあるということ。これまでも走りやデザインには定評があったが、最新のインフォテインメント、先進安全デバイスといった部分でもアップ トゥデイトなものが用意されたことで、美点の部分がようやく強い訴求力に繋がり始めたという感は強い。

画像: ジャガーXF20d ピュア:全長4965mm×全幅1880mm×全高1455mm、ホイールベース2960mm、車両重量1760kg、最小回転半径5.7m、ラゲッジルーム容量540リッター、エンジン 直列4気筒ディーゼルターボ、エンジン型式 204DT、ボア×ストローク83.0×92.4mm、圧縮比15.5±0.5、最高出力132kW(180ps)/4000rpm、最大トルク430Nm/1750-2500rpm、JC08モード燃費 16.7m/リッター、トランスミッション 8速AT、タイヤサイズ225/55R17、車両価格635.0万円

ジャガーXF20d ピュア:全長4965mm×全幅1880mm×全高1455mm、ホイールベース2960mm、車両重量1760kg、最小回転半径5.7m、ラゲッジルーム容量540リッター、エンジン 直列4気筒ディーゼルターボ、エンジン型式 204DT、ボア×ストローク83.0×92.4mm、圧縮比15.5±0.5、最高出力132kW(180ps)/4000rpm、最大トルク430Nm/1750-2500rpm、JC08モード燃費 16.7m/リッター、トランスミッション 8速AT、タイヤサイズ225/55R17、車両価格635.0万円

ブランドとして興味があったという人、あるいはこれまではノーマークだったという人も、今プレミアムカーを選ぶなら、ジャガーを見ずして決める手はない。XEだけでなくXFも含めて、ジャガーは今、この市場の紛れもない〝ゲームチェンジャー〞なのである。

画像: 2ℓディーゼルターボインジニウムエンジン。先代比で20kg軽量化した。

2ℓディーゼルターボインジニウムエンジン。先代比で20kg軽量化した。

画像: 最大トルク430Nmのディーゼルはピュアとプレステージに用意する。

最大トルク430Nmのディーゼルはピュアとプレステージに用意する。

画像: Cd値=0.28という優秀なエアロフォルム。6ライトウインドウのウエストラインは先代より26mm下がった。

Cd値=0.28という優秀なエアロフォルム。6ライトウインドウのウエストラインは先代より26mm下がった。

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