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誰もが「CB1000SF」とは呼ばない。やはり「BIG1」なのである。デカイ、ごつい、重い・・・それだけでデビューした「走る鉄魂」。乗り手が選ぶ基準は、純粋に自らの心に響くかどうか・・・それを見事に実証して見せたのが「BIG1」なのである。元々が「異端児」だった。
そのBIG1史の中でさらに「アウトロー」、そう・・・「番外」だったのが、 「T2」 、お前なのだ。
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The Amble master

750cc空冷直4エンジンを搭載したCB750Fourで、ホンダが世界のスポーツバイクの歴史を大きく転換させたのは60年代末のこと。
そしてそれ以降、大排気量スポーツバイクは高性能を追求しDOHC4バルブ、フルカウル、水冷、アルミフレーム・・・次々と最新テクノロジーを採り入れ進化していく。
その結果、80年代後期にはレーサーさながらのハイスペックにまで発展し、一般ライダーが行動で楽しめるバイクから大きく乖離するモデルも登場しつつあった。

そんな状況にあった91年、ホンダは東京モーターショーで次世代フラッグシップモデルとしてCB1000SFを公開。
「PROJECT BIG 1」と名付けられたコンセプトによるこのモデルは、絶対性能を追求するのではなく 「走る者の心を魅了する感動性能」の実現 がテーマ。
CB750Fourが登場した当時の感動を再現するべく、あえて大きく、堂々としたイメージを前面に出し、これを乗りこなす余裕と誇りをユーザーに味わわせるためのフォルムは圧倒的ですらあった。
エンジンは1000ccの水冷直4で、ストリートバイクが持つべき普遍的な魅力を重視。市販化を望む声に応え、翌92年11月には市販モデルが登場。存在感とステイタス性の高さ、そのダイナミックな走りで、ビッグネイキッド時代を切り開く人気モデルになった。

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そして94年7月には初めてのマイナーチェンジと同時に、バリエーションモデル・CB1000SF T2を追加設定。開発を担当したデザイナーの「もっとワイルドなイメージを」という想いから、T2のデザインはスタートした。
ワイルドなイメージが強いオリジナルデザインをさらに強調。車体全体をブラックアウトして硬派な雰囲気を演出し、さらに高速走行時に威力を発揮するコンパクトなビキニカウルを装着した。
この当時、ビッグネイキッドへのビキニカウル装着については成功例が少なかったが、その精悍なマスクでより躍動感を感じさせる力強いフォルムへと変身させ、新たな魅力を引き出そうとしたのだ。
・・・しかし「T2」は、CB1000SFの後継モデルであるCB1300SFに受け継がれることはなかった。
ベストセラーBIG 1シリーズの中にあっての異端児「T2」。
時は流れ、今改めて目の当たりにすると、その「アウトロー」ぶりに心が震えるのも皮肉な運命と言えるのではないだろうか。

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