先日ヤマハMT-07を試乗させてもらいました。のっけから結論ですが・・・いやぁ、このモデルは良いですね・・・。3回に分けて、MT-07の良さってなんなのか、インプレッションを紹介させていただきます。お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

2015年度、日本で一番売れた401cc以上のモデル。

画像: オートバイ編集部が、二輪車新聞のデータをもとに作った表です。1〜3位が2,000台以上の販売で、ヤマハMTシリーズが独占しています。 scontent.xx.fbcdn.net

オートバイ編集部が、二輪車新聞のデータをもとに作った表です。1〜3位が2,000台以上の販売で、ヤマハMTシリーズが独占しています。

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まずは上の表を見ていただきたいのですが、何とヤマハのMTシリーズの07と09が1~3位を占めています。より排気量の大きいモデルを求める傾向にあるのが、日本のユーザーの傾向なのかな、と思ってましたが、トップ10を見るとリッターオーバーは3台だけ。あまり景気が良くない今ですから、堅実にコスト・パフォーマンスに優れるモデルが好まれているようにも思えますが、日本のユーザーも足るを知る・・・といいますか、大排気量至上主義から解脱しつつあるのかもしれませんね。

ドコドコ感、という呪縛から解放された魅力的なフィーリング。

画像: MT-07の688cc水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジン。クランクシャフトはクランクピンが90度位相で、270-450度の爆発間隔になっております。

MT-07の688cc水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジン。クランクシャフトはクランクピンが90度位相で、270-450度の爆発間隔になっております。

MT-07のエンジンフィーリングは、非常にユニークなものでした。並列2気筒で、90度Vツインと同じ270-450度の爆発間隔にするため、バランサーシャフト付きの270度位相クランクシャフトを持つエンジンは、古くはヤマハ1990年代のTRX850やTDM850(後期型)から採用されてきました。

実は個人的な好みから言うと、並列2気筒は等間隔で爆発する360度ツインが、フィーリング・音ともに私は好きです。180度とか、270度位相の並列2気筒に乗って、「ああ、これはこれでアリかな」と思うことはありますし、ホンダCB72/77、CB250/350、スズキGS400/500系など、私の好きな非360度クランクの並列2気筒にも、好きなモデルはいろいろあります。

でも、やっぱり古典的な英国製並列2気筒に代表される、360度クランクのエンジンが一番私にはしっくりきますね。サウンドの良さ、低回転-高回転までスムーズな回転感覚、リニアなトルクフィールなど、その心地よさは一番だと思うのです。よく「ドコドコ感」という言葉を2気筒車のインプレッションで目にしますけど、360度の並列2気筒にドコドコ感という言葉でインプレッションを語るのは非常に違和感を覚えますね。あれってオノマトペみたいなもので、耳に聞こえる音とか体に伝える振動を音的に表現しているだけに思えます。360度の並列2気筒の場合、擬音・擬態語にするなら「ドコドコ」というより「ブォーン」という感じですか(笑)。ともあれ、スムーズなフィーリングがその魅力だと思うのです。

あえて「ドコドコ感」あるな、と言うなら、狭角Vツインや、90度Vツインの不等間隔で爆発するVツインだな、と思います。ただMT-07の場合は、不等間隔の爆発ではあるのですが、その「ドコドコ」感のようなものはほとんど感じないのです。レッドゾーンの始まる10,000rpmまで、非常にスムーズ。それでいて、不等間隔爆発のエンジンのメリットである、路面をリヤタイヤが掴むような「トラクション感」はしっかりある・・・。これはクロスプレーン・クランクを採用するMT-07以外のスポーツモデルにも共通した感覚で、現代のヤマハならではの「味」になっていると思います。

2気筒の「ドコドコ感」こそ、ツインエンジンの味みたいな意見は多いですが、そんな「ドコドコ感」がなくても、味わい深いツインエンジンが作れることを、MT-07のエンジンは具現化しているといえるでしょう。1-2-3速までレッドゾーンまで引っ張ると、MT-07は素晴らしい加速力と、心地よいフィーリングを乗り手に与えてくれます。ただし、街中でそんな走り方をすると、スピードがノリすぎてヤバイです(笑)。スロットル開度控えめでも、上記のようなMT-07エンジンの魅力はわかりますので、ぜひ安全運転でお楽しみください。

90度位相の並列2気筒は、モダンツインの最適解?

先日ホンダから、新型アフリカツインことCRF1000Lが発表されて話題になってますが、このモデルもMT-07同様270度位相クランク+バランサーシャフトの並列2気筒を採用しています。「アフリカツインは昔ながらの位相クランクのVツインでいて欲しかった」という声を何人かから聞きましたが、ある意味で並列2気筒の270度位相ツインは、現代の2気筒の最良の選択かも・・・なんてことを思ったりしました。

画像: ヤマハMT-07のサイドビュー。コンパクトな並列2気筒エンジンが、コンパクトな車体のなかにおさまっているのがわかります。 www.yamaha-motor.co.jp

ヤマハMT-07のサイドビュー。コンパクトな並列2気筒エンジンが、コンパクトな車体のなかにおさまっているのがわかります。

www.yamaha-motor.co.jp

現代の並列2気筒は低振動のため、バランサーシャフトの採用がある意味必須になってますが、振動に対してはバランサーシャフトで対応すると割り切れば、理論上一次振動のない90度Vツインよりもエンジンを計量コンパクトにまとめることができます。

Vツインと違って、シリンダーとシリンダーヘッドは一組でOK。カムシャフトもDOHCなら2本で済む。そして何よりVツインでは難しい3軸(クランクシャフト・メインシャフト・カウンターシャフト)のトライアングル配置や、背面ジェネレーターの採用が並列2気筒では容易です。

コスト的にも、並列2気筒のほうがVツインよりも部品点数は少なく済みますし、吸気・排気系のレイアウトもシンプルにすることができます。コストのことを置いておいても、マスの集中化やクランクセンター位置を大事にする現代のモーターサイクル作りを考えると、2気筒ならば270度位相の並列2気筒がベストな選択になる・・・のではないでしょうか?

画像: トラクションに優れる270度位相の並列2気筒は、パリ・ダカールラリー用のファクトリーマシン、XTZ850TRXにも採用された技術でした。写真は1998年、通算6度目の優勝を飾ったステファン・ペテランセルです。 global.yamaha-motor.com

トラクションに優れる270度位相の並列2気筒は、パリ・ダカールラリー用のファクトリーマシン、XTZ850TRXにも採用された技術でした。写真は1998年、通算6度目の優勝を飾ったステファン・ペテランセルです。

global.yamaha-motor.com

当然、ハーレー・ダビッドソンやドゥカティのVツインのように、伝統を墨守することでブランドイメージを高め、そのブランドならではのスタイリングをキープする・・・ことも大事です。しかし、あまり2気筒の旗艦スーパースポーツモデルを、外国メーカーに比べると社の歴史のなかで長くやってこなかった日本の4メーカーには、そういうある種の「縛り」はありません。そのへん自由にやれるのは、日本のメーカーの強みなのかもしれません? まぁヤマハの場合、初の4ストローク大型スーパースポーツが1970年デビューのXS-1でしたから、ちょっと例外ではありますけどね。

ノートンコマンド961系や、トライアンフの新型ボンネビルなど、ヤマハが始めた270度位相の並列2気筒を採用するエンジンを搭載するモデルは、海外からも登場しています。しかし、私が乗り比べた限りでは、性能・フィーリング的に、やはりヤマハに一日の長があると思います。

そういう意味では、270度位相の並列2気筒というエンジンの良さと、そのフィーリングの面白さは、ヤマハがオリジンとなって築き上げたものに他ならないと思います。そしてMT-07のエンジンは、その最新仕様を楽しめるモノとして、非常に魅力的だと思いました。速くて気持ち良い、本当に良いエンジンです。

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