リスクを恐れず、世間の風当たりにもひるまず、信念をもって前に進む男たち。同時に、ストイックなだけでなく、人生を楽しみ 快活に笑い、欲望や野心を隠さないが爽やかさを失わないイイ男たち。彼らをロレンスMENと呼び、不定期に紹介していく。
画像: 【ロレンスMEN】"医療を想い、社会に貢献する” MRT株式会社 代表取締役社長 CEO馬場稔正

馬場 稔正 (Toshimasa Baba) 代表取締役社長
平成6年4月  日本医療サービス株式会社入社
平成12年10月 ときわ台セブンデイズクリニック 参画
平成14年5月 有限会社メディカルリサーチアンドテクノロジー
(現当社)参画、取締役
平成15年7月  医療法人社団優人会 理事 
平成19年9月  株式会社東京医療研究所 代表取締役社長 
平成20年10月 当社取締役副社長 
平成22年 4月 当社代表取締役社長
MRT株式会社について
東京大学医学部附属病院の医師の互助組織からスタートした医療情報のプラットフォーム。日本最大級のシェアを誇る医師紹介マッチングサイト(1日あたり医師300-400人)。
2014年12月26日、東京証券取引所マザーズ市場(証券コード:6034)に上場

控えめな笑顔に隠された闘志の持ち主

2014年12月にIPO(新規株式上場)を果たした起業家としては、実に柔和で腰が低い。
それが誰もが思うであろう、馬場さんの印象だ。


MRTは医療情報のプラットフォームを提供する企業で、IPO後も株価は堅調、今後も増収増益を目論む優良企業である。創業から上場までに10年近く費やしている。また、また、IPO直前には元社員が顧客情報漏洩事件を起こすなど、幾多の逆境を経験している。
いまどきのスタートアップとは違って、非常にそのトップを務める馬場さんだが、内に秘める闘志はその外見からはうかがい知れない。


端正な顔立ちには常に笑みが浮かんでいる。笑顔の新進企業の社長といえば求人サービスを手がけるリブセンスの村上太一社長を思い起こすが、馬場さんの笑顔は村上氏のような満面の笑みとは少し違って、若干寂しさを湛えた微笑だ。
それは馬場さんが興したMRTが、IPOにたどり着くまでの多くの苦労や苦心がそうさせているのかもしれないし、幼少時から小児喘息で入院するなどの辛い経験が影を見せているのかもしれない。

画像: 控えめな笑顔に隠された闘志の持ち主

仕事に120%集中する日々

馬場さんは自分では多趣味だという。そう言ったあとで「いや、多趣味でした」と訂正した。
なぜなら、大好きだというスノーボードもゴルフも、そして日頃の疲れを癒すための好きな旅行も、ここ数年全く行けていないからだ、という。


「月並みな趣味ですが、大好きなことを我慢して、いままで仕事に集中してきましたね。他には何も考えられなかった」と静かに笑う馬場さん。

画像1: private photo

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逆境をはねのけた原動力

上場準備を進めている頃、馬場さんを大きな災難が襲った。
冒頭にも触れたがなんと元従業員が社内から重要情報を盗み出し、不正競争防止法違反に問われて逮捕されるという事件が起きたのだ。

平成 26 年 10 月 14 日、平成 24 年 1 月から同年 7月まで当社に在籍していた元従業員(システム担当者)が不正競争防止法違反により逮捕されました。警視庁によれば、当該元従業員が当社の営業秘密である医師、看護師の氏名、住所、電話番号、性別、最終学歴などの情報を不正に領得したことが逮捕に係る容疑とのことです。
今回の事件により会員の皆様をはじめとする関係各位に対して大変なご心配とご迷惑をお掛けしましたことについて、深くお詫び申し上げます。
当社と致しましては、現在捜査機関により行われている捜査に真摯に協力することが本件の真相解明のために当社が講じ得る最善の方策であると考え、引き続き捜査機関への協力を第一に本件に当たります。
なお、パスワードの漏えいは確認されておらず、不正ログインなどの発生は確認されておりませんが、セキュリティ強化の為に定期的なIDとパスワードの変更をお願いいたします。
関係各位におかれましては、本件により引き続きご心配とご迷惑をお掛けしますが、ご理解とご協力の程、何卒宜しくお願い申し上げます。

結果的にはMRT自体には法的な問題がなく、パスワードの漏洩もなかったため、実害には至らなかったため、MRTのIPOは予定どおり成功に終わった。
しかし、馬場さんの心には、IPO直前に起きたこのトラブルが深く傷を残した。
その馬場さんの心を癒し、さらに新たな力を与えたのは、ある知人からのアドバイスで一人向かった屋久島での経験だったという。


「どこかに出かける気分ではなかったのですが、どうしても行けと。後悔しないからと言われて」馬場さんは一人で屋久島にでかけた。2014年10月のことだ。


屋久島の目的地は、樹齢7000年とも言われる屋久杉。見ず知らずの旅行客たち男女5-6人のトレッキングパーティの一人として、馬場さんは参加したという。
屋久杉がある山の頂上までは悪路とも言える山道をひたすら歩く。
往復で10-12時間ほどかかる厳しい道のりだ。
やがて目の前に現れた屋久杉を見たとき、言い知れない感動が馬場さんを襲った。

画像: Private photo

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屋久島という場所は「月に35日雨が降る」と言われる。生物が棲息するのに必ずしも快適な環境ではない。その中で想像を超える太さ・大きさにまで育った屋久杉たちは、数千年にわたりゆったりと成長してきた。年輪の細かさをみればそれがわかる。


着実に、力強く成長する。恵まれた環境でなくても、成長する。その原動力は外にあるのではなく、成長を目指す自分自身にある。馬場さんは、逆境にくじけそうになっていた自分の弱さを恥じた。そして、屋久杉の年輪のような着実な成長を目指す、いわば年輪経営をしていこう、と強く心に誓ったそうだ。

画像: Private Photo

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IPOは果たした。大事なのはそこからだ

屋久島で得たことがもうひとつある、と馬場さんは言った。
「登山は、どんなに厳しい道のりでも、上りはまだいいんですよ。目標があるから。ところが、下山、帰り道は違う。つかれていて、みんな無口になる。行きはみんなテンション上がっていて、励ましあって、心も一つだけど、目的を達したあとは、ただ帰るだけ。気持ちバラバラで、ひたすら歩くだけの個人戦になる」


つまり、と馬場さんは笑った。これは経営も同じだと。IPOを目指すことで社員全員の心は一つになるが、それを達成した後は、気持ちが緩むし、目標を失ってただひたすら働くだけになりがちだ。だからこそ、次に何をするのかを考えておくべきだし、リーダーは次の目標をすぐに掲げられるようにしておくべき、だと馬場さんは言った。


「おかげさまでIPOしたあとの経営は順調です」と馬場さんは胸を張った。
「辛い経験のあとで、自分を見直せたことで、強い自分を得た気がします。IPOはいまや単なる通過点。これから屋久杉に負けない成長をしていきます」
馬場さんの笑顔には、もはや影も弱さもなく、タフで頼もしい経営者の凄みが表れていた。

画像: IPOは果たした。大事なのはそこからだ

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