一般的にはフェラーリ・ディノ、という呼び名のほうが通っているだろう。
しかし、この車はフェラーリで売られていながら、フェラーリという名称を戴いていない。
その理由は、ディノが開発されていた1960年代後半、フェラーリはV型12気筒エンジンを搭載したハイパフォーマンスカーしか作っておらず、V型6気筒エンジンを載せたミドルクラスのスポーツカーをフェラーリと呼ぶのをためらったからだ、という。

フェラーリ初のミッドシップの小型スポーツカー

そもそもディノは、フェラーリの創始者エンツォ・フェラーリの長男であり、1956年に若干24歳で早逝したアルフレード・フェラーリが創案した、小型スポーツカーの構想によって生まれたとされている。

アルフレードは、12気筒の大排気量車のみを生産していたフェラーリも、やがては小型のスポーツカーを作るべきだと考え、その小型スポーツカーの心臓部として、V型6気筒エンジンの開発を進めていた。
その志半ばで、アルフレードはこの世を去るのだが、その後数年して生まれた、フェラーリ初の非V型12気筒のスポーツカーに、エンツォ・フェラーリは、ディノと名付けることになる。
ディノとは、愛息アルフレードのニックネームであった。

画像: Dino 246GT ja.wikipedia.org

Dino 246GT

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そもそもエンツォは、大排気量・大パワー車をフェラーリ、それ以外の中型・小型車をディノとして、フェラーリのブランドと分けて生産・販売するプランを持っていたらしい。
しかし、結局その後、V型6気筒の車は生産されることはなかった。

ディノの後継車はV型8気筒を搭載し、以降フェラーリブランドで販売される。おそらく営業部隊や投資家が、フェラーリ以外のブランドで売ることに難色を示したということだろう。結果として、ディノは、フェラーリ史上唯一V型6気筒を搭載した、非フェラーリブランドの希少な車として、知られるようになる。

美しくも儚い、絶妙な曲線を持ったボディに、伝説的なエンジンを積む名車

Dino 246 GT on the road

youtu.be

ディノは現在、非常にタマ数が少なく、大変な高額で取引されているという。その値段は、数千万から1億円以上とされる。ディノは2000ccクラスの206、3000ccクラスの246があり、希少性で言えばさらに生産台数が少ない206のほうが上だが、排気量の大きさや、大人気を博した少年漫画『 サーキットの狼 』での主役級の扱いもあって、日本国内では246GTのほうが一般的には、ディノそのものとして認知されている。


ディノは、その素直な操作性で知られる。十分に使いきれる性能と、運転しやすさ。優美なスタイリングとあいまって、いまだに多くの車ファンが、この車を理想の一台に挙げることも少なくない。
現代のスポーツカーは、フェラーリにしてもランボルギーニにしてもV8エンジンを主力に置いている。環境に配慮したダウンサイジング化の中で、いかにスポーツカーメーカーであっても、無駄に大きく消費効率の悪いエンジンを搭載するわけにはいかなくなっており、その意味でアルフレード・フェラーリの読みは、正しかったといえるだろう。


世界的に工業製品、特に車やバイクにおいてネオクラシックのブームが来ている。1960-80年代のプロダクトのデザイン文法を模して、最新のテクノロジーで安全を確保した新しい製品を作る。そういうブームの中で、ディノは、いまだに古びない存在感を持ち、多くの車ファンが模倣するべき多くの美点を有している。

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